福祉関係の仕事はいろいろありますが、その一つに福祉用具専門相談員という資格があるのを知っていますか?介護に携わったことがない人は、あまり聞いたことがない資格かもしれません。しかし、福祉用具専門相談員は、利用者をサポートする大切な資格の一つです。
この記事では、福祉用具専門相談員の資格の取り方や仕事内容について紹介します。介護業界で役に立つ資格を取得したい方は、ぜひ参考にしてください。
福祉用具専門相談員になるには?
福祉用具専門相談員は、介護が必要な方それぞれに合った福祉用具を提案したり器具の調整や確認をしたりする専門職です。この資格は、国家資格ではなく公的な資格に該当します。介護保険の指定を受けて、福祉用具の貸与や販売をする事業所には、福祉用具専門相談員を2名以上配置しなければいけません。
福祉用具専門相談員になるために必要な資格は、これから紹介する2つの方法のいずれかを経て取得できます。
1. 福祉用具専門相談員指定講習を受講し、修了試験に合格
福祉用具専門相談員になるためには、50時間のカリキュラムで構成される福祉用具専門相談員指定講習の受講が必要です。そして受講後に筆記の修了試験を受け、合格することが条件です。
福祉用具専門相談員指定講習は受講するにあたっての条件や制限はないため、誰でも受講できます。しかし、研修機関に通っている場合、到達目標に達していないと受講できないこともあるためご注意ください。
参考:一般社団法人全国福祉用具専門相談協会「福祉用具専門相談員についてのQ&A」
2. 特定の資格を所有する
福祉用具専門相談員指定講習を受講しなくてもよいケースもあります。
すでに看護師や准看護師、保健師、介護福祉士、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、義肢装具士といった福祉用具に関わる知識が必要な国家資格を取得しているケースです。
これらの国家資格保持者は、講習や修了試験を受けなくても、福祉用具の貸与や販売をしている事業所で福祉用具専門相談員として勤務できます。
参考:一般社団法人全国福祉用具専門相談協会「福祉用具専門相談員についてのQ&A」
【注意】資格条件に変更がある
2015年に介護保険制度が改定されました。以前は介護職員基礎研修・介護職員初任者研修修了者やホームヘルパー2級・1級取得者も、福祉用具専門相談員として認められていました。しかし、制度改定にともない対象外となったためご注意ください。
介護職員基礎研修・介護職員初任者研修の修了者やホームヘルパー2級・1級取得者で福祉用具専門相談員の資格を取得したい方は、福祉用具専門相談員指定講習を受講し修了試験に合格するか、上記で紹介した福祉用具に関する国家資格を取得することが必要になります。
参考:厚生労働省「平成十一年厚生省令第三十六号介護保険法施行規則」/内閣府「平成十年政令第四百十二号介護保険法施行令」
福祉用具専門相談員の資格難易度はどのくらい?
福祉用具専門相談員の資格取得は、どのくらい難しいのでしょうか?ここからは、合格率や修了試験の難易度などを紹介します。
福祉用具専門相談員の合格率は非公開
福祉用具専門相談員の資格は、先ほどご紹介した福祉用具専門相談員指定講習受講後に受験できる修了試験に合格することで取得できます。残念ながら、合格率は公表されていません。
しかし、福祉系の専門学校で学んだ人の合格率はほぼ100%ともいわれていることから、難易度はそれほど高くないことがわかります。
修了試験は指定講習を受講すれば合格できる
福祉用具専門相談員になるための修了試験は、落とすための試験ではなく、福祉用具専門相談者指定講習で学んだことが、どのくらい身についているかを確認する主旨があると思われます。
福祉用具専門相談員指定講習に確実に出席し、しっかり内容を理解できれば合格できるでしょう。
就職後に福祉用具専門相談員の資格を取るパターンも
福祉用具専門相談員の求人に応募できるのは、有資格者だけとは限りません。
福祉用具専門相談員の求人情報を見てみると、「未経験可」「介護資格不問」と記載されているものもあります。このような求人の場合は、採用後に働きながら勉強し福祉用具専門相談員の資格を取ることになります。
福祉用具専門相談員の「未経験可」「介護資格不問」の求人は、バイトルPROでも掲載されているので求人を探している方は合わせてご覧ください。
福祉用具専門相談員になるまでの流れ
福祉用具専門相談員を目指して勉強し、実際に勤務するまでにはどのような過程を経るのでしょうか?ここからは福祉用具専門相談員になって勤務をするまでの流れを紹介します。
1. 50時間の指定講習を受講する
福祉用具専門相談員になるには、まず全50時間のカリキュラムで構成された福祉用具専門相談員指定講習の受講から始めます。
この講習は都道府県知事が指定する研修事業者・研修機関によって実施され、費用は4~6万円程度です。受講期間は約1週間なので、働きながらでも受講しやすいでしょう。費用や期間は、受講する地域や研修機関によって前後しますので、受講する際は要項をチェックしてください。講習を実施している研修機関は、都道府県のホームページで確認できます。
カリキュラムは、以下のようになっています。
- 福祉用具と福祉用具専門相談員の役割
- 介護保険制度等に関する基礎知識
- 高齢者と介護・医療に関する基礎知識
- 個別の福祉用具に関する知識・技術
- 福祉用具にかかるサービスの仕組みと利用の支援に関する知識
- 福祉用具の利用の支援に関する総合演習
このように福祉用具専門相談員指定講習は、ただ聴講するだけではなく演習もあります。福祉用具のみならず、介護全般の知識を身につけられるカリキュラムになっているのが特徴です。実技を含むため、通信制での実施はありません。
先述した「福祉用具専門相談員になるには?資格の取り方は2種類」で触れましたが、福祉用具に関わる知識を有する国家資格取得者は、この講座や試験を受けなくても業務にあたれます。
また、未経験者、福祉用具に関わる資格未取得者でも、先に事業所などに採用されてから資格を取得し勤務するケースもあります。
参考:一般社団法人全国福祉用具専門相談協会「福祉用具専門相談員指定講習における目的、到達目標及び内容の指針」
2. 指定講習の修了試験を受験し、合格する
指定講習でしっかり学んだら、最後に行なわれる修了試験を受けましょう。合格すれば、福祉用具専門相談員の資格を取得できます。試験は筆記です。
講習の内容をきちんと理解できていれば合格しやすい資格のため、まずは講習をしっかり受講しましょう。
3. 福祉用具専門相談員の求人に応募して、勤務する
修了試験に合格したら、福祉用具専門相談員を募集している求人を探しましょう。福祉用具専門相談員を採用している事業所・施設には、次のようなところがあります。
- 福祉用具貸与・販売事業所
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 福祉用具住宅改修事業所
- ドラッグストア・ホームセンター(福祉用具を取り扱っている場合)
福祉用具専門相談員の勤務先として主流なのは福祉用具貸与・販売事業所ですが、介護施設での募集もあります。また、介護しやすい環境を整えるため住宅をリフォームする家庭も増えていることから、福祉用具住宅改修事業所やドラッグストア・ホームセンターの福祉用具コーナーでの求人も見かけるようになってきました。
無事採用されたら、福祉用具専門相談員としての勤務がスタートします。
福祉用具専門相談員の仕事内容や向いている人は?
冒頭で、福祉用具専門相談員の仕事について簡単に紹介しましたが、現場でどのようなことをするのでしょうか?福祉用具専門相談員の具体的な仕事内容や、年収をチェックしていきましょう。
福祉用具専門相談員の仕事内容
福祉用具専門相談員は、おもに福祉用具の貸与・販売をしている事業所に勤務することになります。
仕事内容は、介護が必要な方やそのご家族に対し、福祉用具・介護用品の選び方および使用方法をアドバイスすることです。さらに利用者に合わせて器具の調整をしたり、不具合があればメンテナンスをしたりすることもあります。
提案する福祉用具には、車椅子、手すり、ポータブルトイレ、介護用ベッドなど大きなものから、食器、日用品など小さいものまで多岐にわたります。
福祉用具は介護・障害の度合いによって種類も多いため、そのときの利用者の状況や住宅環境に合わせてベストなものを提案しなければいけません。福祉用具を利用するには、ケアマネジャー(介護支援専門員)など介護福祉の専門職との連携が必要です。
福祉用具専門相談員の仕事は、利用者がより安全で快適に生活していけるように、利用者や家族、ケアマネジャーらとコミュニケーションを取りながら進めていくことが大切です。
福祉用具専門相談員の給与・年収
福祉用具専門相談員の年収は、介護福祉士などの介護職と同じくらいで平均約300~350万円といわれています。地域や事業形態、雇用形態(パート・アルバイト・正社員)によっても年収が大きく変わってきます。大規模な事業所や株式会社などで働く福祉用具専門相談員の月収は、高い傾向にあるようです。
福祉用具専門相談員に向いている人
どのような性格、スキルを持つ人が福祉用具専門相談員に向いているのでしょうか。
福祉用具専門相談員は介護の現場で活躍する仕事なので、介護・福祉業界に興味がある人や誰かの役に立ちたいと考えている人におすすめです。
また、利用者に福祉用具を提案する際には、利用者や家族・介護スタッフとの連携が大切です。そのため、注意深く利用者の状況を観察する力やコミュニケーション力があると大いに役立ちます。日頃から人を良く観察して、ささいな変化に気付けたり、誰とでも打ち解けられたりする人に向いている仕事といえます。
まとめ
福祉用具専門相談員は、国家資格ではなく公的な資格です。全50時間ある福祉用具専門相談員指定講習を受講後、修了試験に合格すれば資格を取得できます。
誰でも受講でき期間も短いことから、働きながら取得することも十分可能です。また、ほかの介護の資格と併せて取得すれば、介護業界で働く際の大きな武器になるでしょう。
福祉用具は、より安全で便利なものを目指して新しいものが続々誕生しています。利用者一人ひとりの状況に合わせて福祉用具を提案する仕事は、この先欠かせないものになるでしょう。介護に興味がある方は、福祉用具専門相談員の資格取得をぜひご検討ください。
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