「介護職の給与は安い」。そんなイメージはありませんか?
確かに介護職はその他の職種と比べて、やや給与が安い傾向にあります。しかし、その課題が問題視されていることで、年々給与が上がっているのです。
また介護業界には様々な民間資格・国家資格があり、これらを取得することで給与アップが狙えます。
この記事では介護従事者の職種、保有資格別の給与や厚生労働省が設けている制度「介護職員処遇改善加算」について紹介いたします。
介護士の給与は年々上がっている
先述したとおり、介護士の給与は年々上がっています。以下は2016年から2020年の平均給与額の推移です。
※2019年のデータは未公表のため割愛
参考:厚生労働省「介護従事者処遇状況等調査」
2016年から2020年までで常勤・非常勤それぞれ以下の金額分、給与が上がっています。
- 常勤:315,850-289,780=26,070円アップ
- 非常勤:112,500-96,080=16,420円アップ
ひとりの介護職員が経験を積んで給与が上がったというわけではなく、介護職員というくくりの中で毎年これほど給与が上がっているのは意外な事実ではないでしょうか?
これからも高齢化は進み、介護職のニーズは高まっていきます。それに伴い、給与も今以上に上がっていくと予測できます。
介護士の平均給与に関する詳細はこちらの記事をご覧ください。
介護士の平均給料は?介護職の年収の上げ方について
また、"介護職員"といっても、その職種や持っている資格によって給与が変わってきます。次に職種・保有資格別の給与を紹介していきます。
介護従事者の職種・保有資格別の給与
職種別の給与
介護の現場では介護職員だけでなく様々な職種の人が働いています。職種別の給与は以下の通りです。
職種 | 平均給与額(月額) |
---|---|
介護職員 | 315,850円 |
看護職員 | 379,610円 |
生活相談員・支援相談員 | 343,310円 |
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士又は機能訓練指導員 | 358,560円 |
介護支援専門員(ケアマネジャー) | 357,850円 |
事務職員 | 311,120円 |
調理員 | 267,930円 |
管理栄養士・栄養士 | 319,680円 |
参考:厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」
※介護職員処遇改善加算の届け出を行っていない事業所を除く、常勤の平均給与額
看護職員の給与が最も高く、次いでPT・OT・ST等、ケアマネという結果になっています。
これは資格取得の難易度による差が考えられます。介護職員や事務職員、調理員などは資格が不要だったり、比較的簡単に資格取得できたりする場合もあります。
一方、先述した看護職員、PT・OT・ST、ケアマネジャーになるには、指定の学校を卒業し、国家試験の合格や一定期間の業務経験が必要となるケースが多いです。
これらの要因から職種間で給与の差が付いていると考えられます。
保有資格別の給与
介護職員のなかでも資格を持っているか否かで給与が変わってきます。保有資格別の給与は以下の通りです。
保有資格 | 平均給与額(月額) |
---|---|
全体 | 315,850円 |
介護福祉士 | 329,250円 |
実務者研修 | 303,230円 |
介護職員初任者研修 | 301,210円 |
保有資格なし | 275,920円 |
参考:厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」
※介護職員処遇改善加算の届け出を行っていない事業所を除く、常勤の平均給与額
資格を持っていない職員と、介護福祉士の間では月に約5万円の差があります。 これは年間にすると約60万円にもなりますから、非常に大きな違いと言えるでしょう。
介護資格の中でも一番初めに取得する「介護職員初任者研修」でも、資格がない方との差は2万円以上です。
現在厚生労働省では介護職への入職を後押しするために、就職準備金の制度を設けています。この制度を利用すれば初任者研修を実質無料(注)で取得することが可能です。
また、企業によっては資格取得支援を行っているところもあるので、そちらの利用を検討するのも良いでしょう。
厚生労働省の就職準備金制度についてはこちらの記事をご覧ください。
介護職に新たに就く人へ就職準備金20万円!復職者には40万円の支援|業界ニュース
資格取得支援を行っている企業の求人はこちらからご確認ください。
介護×資格取得支援制度ありの求人を見る
(注)就職準備金の制度には一定の条件があります。また初任者研修の講座は学校や地域によって変わるため、ご注意ください。
勤続年数別の給与
職種・資格だけでなく「経験」や「勤続年数」を重ねることでも、給与は上がります。介護職員の勤続年数別の給与は以下の通りです。
勤続年数 | 平均給与額(月額) |
---|---|
1年 | 283,480円 |
2年 | 287,940円 |
3年 | 291,010円 |
4年 | 296,700円 |
5年~9年 | 307,980円 |
10年以上 | 350,820円 |
参考:厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」
※介護職員処遇改善加算の届け出を行っていない事業所を除く、常勤の平均給与額
やはり経験が浅い間は給与が低い傾向にあります。
介護の仕事は体力を使いますし、時には利用者さんや同僚との人間関係にも悩むことがあると思います。そして1年目、2年目などは給与のことも相まって「やめたい」と思うこともあるのではないでしょうか。
しかし、経験を重ねることで着実に給与が伸びていくことが、このデータからも分かります。
介護職員処遇改善加算でさらに給与アップ
介護職員処遇改善加算とは
介護職員処遇改善加算とは介護職員の賃金の向上を目的に介護報酬を加算する制度です。
加算は5つの区分に分類されていて、一番多い加算だと月額37,000円、少なくとも月額12,000円加算されます。現在全国の事業所の90%以上がこの加算を取得しています。また、75%が加算額の最も多い加算Ⅰを取得しています。
ただし、この制度は「職場の体制や環境」に係るもので、介護職員のスキルによって加算されるものではありません。そこで2019年に介護職員等"特定"処遇改善加算が新設されました。
介護職員等特定処遇改善加算とは
特定処遇改善加算はスキルや経験のある介護職員の待遇を改善するために、介護報酬をさらに加算する制度です。
介護福祉士で勤続年数10年以上の人が基本的な対象となり、全国の事業所の58.6%(注)が取得している状況です。この加算により「月額8万円以上アップ」または「年額の賃金440万円(賃金改善後の見込額)」の処遇改善になります。
介護職員処遇改善加算について、詳しくは以下の記事で解説しておりますので、併せてご覧ください。
介護職は給与が増え続けている!介護職員処遇改善加算を解説
(注)介護職員処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)の届出をしていると回答した事業者(92.6%)のうち、63.3%
参考:厚生労働省「介護人材の処遇改善について」
まとめ
介護業界の給与は年々増加傾向にあります。また、高齢化による人手不足の状況から、少しでも人材確保をするために給与を高めに設定する企業もあります。
介護の仕事は給与が安いという印象があるかもしれません。
しかし資格をとったり、経験を積んだり、きちんと職場選びをすることで着実に収入アップが狙える職業でしょう。
みなさんも、介護の仕事やキャリアアップを目指してみてはいかがでしょうか?
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