「介護士」という職業に興味を持ったとき、まず気になるのは介護士の具体的な仕事内容ではないでしょうか。
そこでこの記事では、介護士が携わる業務にはどういったものがあるのか、介護士の一日のスケジュールはどうなっているのかなどを紹介します。実際の仕事内容をイメージして、就職・転職活動に役立ててください。
介護士の一般的な仕事内容
まずは、介護士の仕事として一般的なものを4つ紹介します。
老人ホームや病院での介護、訪問看護など、介護士の働き方はさまざまですが、どのような場所で働く場合でも、介護士には次に挙げるような仕事の遂行が期待されます。
身体介護
「身体介護」とは、介護利用者の身体に直接はたらきかける介護です。
厚生労働省は訪問介護の文脈において、「身体介護」を以下のように定義しています。
- 利用者の身体に直接接触して行う介助サービス(そのために必要となる準備、後かたづけ等の一連の行為を含む)
- 利用者のADL・IADL・QOLや意欲の向上のために利用者と共に行う自立支援・重度化防止のためのサービス
- その他専門的知識・技術(介護を要する状態となった要因である心身の障害や疾病等に伴って必要となる特段の専門的配慮)をもって行う利用者の日常生活上・社会生活上のためのサービス
出典:厚生労働省『「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」の一部改正について』
身体介護に関する具体的な仕事内容は、以下のとおりです。
- 換気や室温、日当たりの調整
- 排せつのサポート
- 食事のサポート
- 衣類の着脱や洗面・入浴のサポート
- 爪・ひげ・髪などの整容
- 移動や体位変換のサポート
- 起床・就寝のサポート
介護士は、これらの行動を常に手取り足取りサポートするわけではありません。利用者本人の意思・意欲を尊重しつつ、安全に生活できるようにそばで見守ったり、声かけをしたりしながら、必要な程度で介助を行なうのが介護士の仕事です。
生活援助
「生活援助」とは、先ほどと同じ文書によれば、厚生労働省は次のように定義しています。
身体介護以外の訪問介護であって、掃除、洗濯、調理などの日常生活の援助(そのために必要な一連の行為を含む)であり、利用者が単身、家族が障害・疾病などのため、本人や家族が家事を行うことが困難な場合に行なわれるもの
出典:厚生労働省『「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」の一部改正について』
生活援助に関する具体的な仕事内容は、以下のとおりです。
- 掃除
- ゴミ出し
- 洗濯・アイロンがけ
- ベッドメイク
- 衣類の整理(衣替えなど)
- 被服の補修(ボタン付けなど)
- 調理・配膳・後かたづけ
- 日用品の買い物
- 薬の受け取り
簡単にいうと、生活援助は「もし介護を要する状態が解消されたならば、利用者が自分自身で行なうこと」を代行する仕事です。
メンタルケア
精神的な充実感も、利用者の生活の質を上げるための重要な要素です。したがって、介護士には、話し相手になったり悩みを聞いたりするようなメンタル面のケアも求められます。
介護に関する相談・助言
日々の生活のサポートだけでなく、介護に関する相談に応じるのも介護士の仕事です。介護を必要とする本人はもちろん、その家族からの相談にも対応し、介護に関する情報を提供します。
介護士の現場別の仕事内容
介護士は、さまざまな場所で活躍できる職業です。老人ホームやデイサービス、訪問介護先のお宅や病院など、働く場所によって介護士の仕事内容は異なります。
ここでは、働く場所ごとに分けて介護士の仕事内容を紹介します。
老人ホーム
「老人ホーム」と一口にいっても、その形態は1つではありません。老人ホームの種類は「特別養護老人ホーム」「介護老人保健施設」「有料老人ホーム」の3つに大きく分けられます。
それぞれの施設における介護士の仕事内容を見てみましょう。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームとは、地方公共団体や社会福祉法人が運営する公的な施設で、「介護老人福祉施設」とも呼ばれます。常に介護が必要で自宅での介護が困難な高齢者が、日常生活を送るための場です。
特別養護老人ホームで介護士に求められるのは、入居者が快適な生活を送るためのサポートです。食事や入浴、排泄などの身体的な介助はもちろん、看護職員や理学療法士などと協力しながら、健康管理や身体機能の維持・回復支援にも携わります。
また、入居者の家族とのコミュニケーションも大切な仕事の一つです。
介護老人保健施設
介護老人保健施設は、介護が必要な高齢者が自立や在宅生活への復帰を目指す公的な施設です。医師による医学的管理のもとで看護・介護が提供され、理学療法士や作業療法士などの専門家によるリハビリ体制が充実しているのが特徴です。原則として3~6ヵ月での退去が前提となっています。
介護老人保健施設における介護士の仕事は、日常生活のサポート、歩行・食事・入浴・排泄などの身体介助が中心です。在宅生活への復帰を目指す施設なので、リハビリのサポートも行ないます。また、リハビリのためのレクリエーションを実施することもあります。
有料老人ホーム
有料老人ホームは民間企業によって運営される施設です。要介護レベルでなくとも入居できるのが、他の施設との違いです。施設によってサービス内容が異なるものの、居室は基本的に個室で、レストランやシアタールームを備えた施設もあります。
おもな業務は入居者の見守り、食事介助、身体介助、入浴介助です。一人ひとりの入居者によりフィットした、きめ細かいサービスが求められます。イベントの運営や、ホテルのフロント係のようなサービスを介護士が担当する場合もあります。また、夜勤シフトを組まれることが多い傾向です。
その他での活躍の場
介護士の職場として最もイメージしやすいのは、前述した老人ホームかもしれません。しかし、介護士の活躍の場は老人ホームだけではありません。
ここでは、老人ホーム以外の活躍の場として「デイサービス」「訪問介護」「病院」を取り上げます。それぞれの職場における介護士の仕事内容を見てみましょう。
デイサービス
デイサービスとは、普段は自宅で生活している方が施設に通って受ける、日帰りの介護サービス、またはそのサービスを提供する施設のことで、デイケアとも呼ばれています。自宅での介護を担う家族の負担を減らすとともに、利用者の方が日々の楽しみを見つけられるように支援します。
デイサービスの仕事には、車での利用者の送迎、デイサービスセンターへの案内も含まれます。施設内でのおもな仕事は、入浴や食事などの介助に加え、身体機能を維持して気持ちを明るくするレクリエーションの実施、看護師と連携しながらのリハビリテーションなどです。
訪問介護
訪問介護とは、利用者の自宅に訪問して提供される介護サービスで、「住み慣れた家でプロの介護を受けたい」というニーズに応えられるサービスです。介護士は、ケアマネジャーの指示のもと、訪問介護事業所からそれぞれの利用者の自宅にうかがいます。
一日に複数のお宅に訪問して、ケアマネジャー(介護支援専門員)が定めたプランをもとに、生活の介助や身体介助を行ないます。食事や入浴・排泄などの各種身体介助だけでなく、料理や掃除・洗濯などの家事や買い物も代行します。利用者の状況やサポート内容を記録し、ケアマネジャーのサポートを行なうことも大切な仕事です。
病院
入院施設や病棟を備える医療機関で、身体の自由が利かない方の療養生活を支援する介護士もいます。病院で働く介護士のおもな仕事は、入院患者に対する身の回りのお世話や、医師・看護師の補助業務です。
食事や排泄、入浴、移動などの一般的な身体介助に加え、ベッドのシーツ交換や清掃、洗濯、食事の配膳など、さまざまな業務を担当します。カルテの整理、医療器具の管理など、看護師のサポートも介護士の大切な仕事です。
介護士の一日の業務スケジュール例
介護士が担当する仕事は働く場所によってさまざまです。したがって、一日の業務スケジュールも勤務先によって大きく変わります。
ここでは代表例として、有料老人ホーム・デイサービス・訪問介護での一般的な業務スケジュールを紹介します。ぜひ、仕事のイメージに役立ててください。
有料老人ホームの業務スケジュール例
8:30 朝食準備、片付け、部屋の清掃、排せつ介助、バイタルチェック、夜勤スタッフからの申し送り
9:30 入浴介助、排せつ介助、介護記録対応、洗濯、外出介助
11:30 昼食準備、食事介助、外食希望の方の介助、排せつ介助、外出支援、入浴介助
14:00 休憩時間
15:00 排せつ介助、入浴介助、お茶の準備、レクリエーション実施、散歩などの支援・身体測定
17:00 夜勤者への引き継ぎ、介護記録対応
17:30 勤務終了
デイサービスの業務スケジュール例
8:30 利用者のお迎え
9:00 バイタルチェック
10:00 入浴介助、利用者に合わせた機能訓練
11:30 昼食準備、食事介助
13:00 休憩時間
14:00 体操や機能訓練、レクリエーション実施、外出介助
15:00 お茶の準備、おやつタイム
16:00 帰宅準備、トイレ誘導
17:00 お見送り(送迎)
17:30 フロア清掃、翌日の準備、介護記録やミーティング
18:00 勤務終了
訪問介護の業務スケジュール例
8:00 情報確認・準備
8:30 移動
9:00 身体介護や生活援助など
10:00 移動
10:30 身体介護や生活援助など
11:30 移動(帰社)
12:00 昼食
13:00 移動
13:30 身体介護や生活援助など
14:30 移動
15:00 身体介護や生活援助など
16:00 移動(帰社)
16:30 介護記録・引き継ぎなど
17:00 勤務終了
まとめ
介護士の一般的な仕事は、食事、移動、排せつ、衣類の着脱、衛生管理などの「身体介護」、炊事、洗濯、掃除、買い物などの「生活援助」、介護を必要とする方やその家族のメンタルケア、介護に関する相談・助言が挙げられます。
ただし、介護士はさまざまな場所で活躍できる職業であり、具体的な仕事内容は職場によって変わります。介護士としての就職・転職を目指す場合は、自分のイメージする業務に携われるよう、応募先施設の特徴やおもな仕事をよく確認しておきましょう。
職種図鑑・介護職員/ヘルパー
職種図鑑・介護福祉士
介護福祉士の取得方法は?介護業界で役立つ資格をご紹介
介護士の平均給料は?介護職の年収の上げ方について
介護士の年収は男女で差がある?需要や将来性についても解説
介護士の服装選びのポイントは?介護職員の身だしなみについて解説
介護士の仕事ってきつい?やりがいや大変なポイントを解説!
介護士と介護福祉士の違いは?介護福祉士の資格取得の方法について
資格なしでも介護士になれる?無資格でも出来る仕事とは
介護士の夜勤中の仕事は?勤務形態や業務内容について
介護士を辞めたい理由とは?退職前にすべきことや辞めた後のキャリアについて