介護士の仕事を辞めたいと感じるのは、どのようなときが多いのでしょうか。現在、介護士を辞めたいと考えている方はもちろん、これから介護の仕事を始めようとしている方にとっても、介護士の退職理由は気になる部分でしょう。
ここでは、介護士を辞めたいと感じやすい理由や、退職を検討したほうがよい職場の特徴などについて紹介します。退職を決意したときにやるべきことや、退職後のキャリアについても解説するので、退職・転職を検討する際にお役立てください。
介護士を辞めたいと思ってしまう退職理由は?
介護士のおもな退職理由には、以下のようなものが挙げられます。
給料に不満
介護士の仕事は職場や利用者との関わりが深く、身体をサポートしたり、命を守るような場面に立ち会ったりする機会も少なくありません。職場環境によっては、業務量や責任の重さが給料に見合っていないと感じるケースもあるでしょう。
たしかに、看護師や検査技師など、他の医療系専門職と比べると給料が低いと感じられることもあります。しかし、事務系の一般職や販売職よりも、介護士の給料が大きく下回っているということはありません。
近年では、国による処遇改善加算制度や勤務形態の整備なども行なわれています。資格を保有していれば、基本給にさまざまな手当がつくこともよくあるケースです。
人間関係がストレス
介護に関わる仕事とはいえ、介護士も人間です。どうしても合わない同僚が職場にいたり、利用者への対応でストレスが生じてしまったりする場合もゼロではないでしょう。
ちょっとした行き違いがトラブルのもととなることもあれば、些細な態度や言葉が気になるなど、相性の問題であることもあります。
ただ、人間関係のストレスは介護業界に限らず、どこへいっても大なり小なり存在するものです。人とのコミュニケーションが苦手な方や、繊細で気にしやすい方は、本当に今の職場や介護職を離れることで解決する問題なのかどうか、一度考えてみてください。
人員不足のため業務負担が大きい
日本では高齢化が今後も進み、人口に占める高齢者の割合や、介護が必要な方の割合は増え続けると予想されています。介護業界でも慢性的な人員不足を抱えており、1人あたりの業務負担が大きいと感じるケースも少なくないでしょう。
現在負担が大きいからといって、いつまでもその状況が続くかどうかはわかりません。求人で新しく人材が確保できる場合や、現在補助的な業務に関わっている方が有資格者となり、大きな戦力となって戻ってくる場合もあります。
その他にも改善できる点がないか、効率良く業務を進める方法はないかなど、退職を決意する前に上司へ相談してみてもよいでしょう。
体力的にも精神的にもきつい
介護士の仕事は利用者の身体を支え、食事や排せつの介助も行なうため、ある程度の体力を必要とします。病気による痛みや認知症などの問題を抱える利用者と関わることも多く、日常的にちょっとした衝突が起こり続けると、体力的にも精神的にもきついと感じることがあるでしょう。
たしかに、長年勤務していて限界が訪れた場合や、施設へ要望を提案しても改善されない場合には退職も視野に入れるべきです。しかし、まだ働きだして間もない場合は、勤務を続けることで必要な体力が次第につき、苦手な業務にも慣れてくることもあります。
ただ「きつい」と感じてストレスをため続けるのではなく、何がどのようにきついのか、解決する方法はあるかといった点について、一度客観的に整理してみるのがおすすめです。
経営方針のミスマッチ
「もっと利用者に対して丁寧なケアをしたい」「キャリアアップや幅広い業務に関わりたい」などの希望があっても、施設の経営方針とマッチしていないと要望が実現せず、ストレスを抱えることもあるでしょう。
特に、キャリアや待遇面で交渉しても思うように改善されない場合には、前向きに退職を検討したほうがよいかもしれません。
退職を検討したほうが良い介護の現場とは?
理由によっては、退職を検討する前に考えを整理したり、改善を訴えたりしたほうが良いケースもあります。ただし、以下のような状況では、早い段階で退職を検討することをおすすめします。
いじめやハラスメントがある
パワハラやいじめが日常的に横行していて、実際に自分がその対象となっている、もしくはそういった現場を目撃した場合には、躊躇せず転職や退職を検討しましょう。
いじめやハラスメントに耐え続けた結果、健康や精神に不調をきたしてから退職するのでは手遅れです。体調を戻すのに時間がかかると、次の就職先を決める際にも支障が出る可能性があるため、ちょっとした行き違いでは片付けられない行為が行なわれているなら、早く次の職場を探したほうがよいでしょう。
残業や休日出勤が頻繁に起こる
人員不足であるとはいえ、勤務形態やシフトがあまりにもハードである環境も、退職を検討するべき職場であるといえます。
例えば、1ヵ月に10日以上の夜勤がある、法律で定められた勤務時間を大きく逸脱しているといった職場などです。このような状況が一向に改善されない場合、退職して別の施設で働くと、介護職へのキャリアをつなげられるでしょう。
介護士が医療行為をしている
看護師の常駐が必要な介護施設において、看護師が不足しているため、介護士に医療行為を求める現場もなかにはあるようです。
頻繁な夜勤や休日出勤と同じく、介護士が医療行為を行なうことは法律で禁じられています。違法行為に加担することで、自身が懲罰の対象となってしまう可能性も考えられるため、こうした行為を強要される場合も、早めに退職の検討をおすすめします。
介護士を辞めたいと思ったときにすべきこと
介護士を辞めたいと思ったときには、以下の点について一度考えてみましょう。
なぜ辞めたいかを明確に
疲れていたり、問題が起きて感情的になっていたりするときに、勢いで辞めてしまうのはおすすめしません。気持ちが落ち着くのを待ち、「なぜ辞めたいのか」を冷静に考えて整理することが大切です。
辞めたい理由を明確にすれば、現在の職場でも解決できる方法が何か見つかるかもしれません。また、冷静に考えてみて、やはり早期に退職を検討するべき環境であると判断できる場合もあるでしょう。
改善策を考えるにしても、退職を決意するにしても、客観的に考えられる状態で決めるようにしたいものです。
上司へ相談できないか
自分の力ではどうにもならないことでも、信頼できる上司へ相談すれば、大きく改善するケースもあります。
特に真面目な性格の方だと、業務量や負担が大きいにも関わらず、我慢して黙々と働いてしまうこともあるでしょう。この場合は自分から意見を出さない限り、上司や経営者が「今の人数でも現場は回る」と勘違いしてしまいます。
このままでは体力的にも精神的にもきつい状態であること、改善されなければサービスの低下や退職の可能性があることなどを訴えてみましょう。労働環境の改善や人員の増加などについて検討され、現在の職場環境が大きく改善するかもしれません。
転職の検討
「介護士の仕事が嫌だ」と感じている場合でも、実は現在の職場がつらいだけで、働く施設や職場を変えた途端に介護の仕事が楽になる、というケースも多いものです。
せっかく培ったキャリアがあるなら、介護業界自体から離れるのではなく、同業種へ転職して職場を変えることも検討してみましょう。介護職自体を続けても良いと思うなら、同じ業界へ転職したほうが待遇面でも希望がかないやすくなります。
介護士を辞めたあとのキャリアについて
退職して介護士を辞めた場合、次のキャリアとしてどのような転職先を選べばよいのでしょうか。
介護職で考える
一口に介護士といっても、有料老人ホームや特別養護施設、グループホームなど、働く施設やエリアによって、業務の特徴は異なります。
現在の職場が合わないだけで「介護士に向いていない」と考えるのではなく、別の施設でもう一度介護士として働いてみる方法もあるでしょう。
介護士の求人は多く、経験者であれば優遇されるケースも少なくありません。施設の種類やエリアを変えるだけで、当初希望していた自分の働き方とマッチする職場が見つかる可能性は十分にあります。
介護職以外で考える
介護職以外で転職を考える場合、その職種が未経験であれば、採用までのハードルは高くなります。とはいえ、新たなスキルを得るチャンスでもあるため、自分の成長につながると前向きに捉えられるなら、異業種への転職もおすすめです。
介護士の経験を活かせる仕事例
介護士として培った能力を活かせる例として、営業職や接客販売業などが挙げられます。高齢者を対象とした商品の営業や接客であれば、コミュニケーションに慣れている点をアピールできるでしょう。ホスピタリティを大事に考えるホテル業界などでも、介護士としての経験が活かされる場合があります。
また、一般企業向けに介護技術指導の講師として指導する立場になる、介護器具など医療や介護に関わる商品を扱うメーカーへ転職する、といった選択肢もあるでしょう。この他に、介護ドライバーや介護事務など、介護士ではない形で介護業界へ転職するといった方法もおすすめです。
まとめ
介護士を辞めたいと感じる理由には、体力的・精神的なつらさや人間関係、給与の低さなどが挙げられます。
介護士は続けたい場合、施設の種類やエリアを変えて転職することで、状況が改善する場合もあります。反対に未経験の業種へ転職する場合、ハードルが高くなるものの、ホテル業界や営業などコミュニケーション力が活かせる職種であれば、スムーズに転職できる可能性も十分あるでしょう。
なかには、いじめやハラスメント、違法行為が行なわれているなど、早急に退職を検討したほうが良い職場もあります。しかし、辞めることで本当に問題が解決するのか、現在の職場で改善の余地がないかなど、一度冷静になって考えてみてください。
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