「介護の仕事はきつい」「介護士は大変」といわれることがありますが、実際のところはどうなのでしょうか。介護士の仕事に興味はあっても、自分にとってやりがいやメリットが感じられるのかも気になるところです。
この記事では、介護士の仕事は本当にきついのか、離職率や大変だと感じるポイントについて解説しています。介護士を続けるメリットややりがいについても紹介するので、介護士の仕事が自分に合っているのか、自分でも働けそうか知りたい際の参考にしてください。
介護士の仕事ってきついの?
初めに、介護士の仕事がきついのかどうか、おもな仕事の内容について見てみましょう。
介護士の仕事内容
介護士は、単独で日常生活を送ることが困難な高齢者や、障害を抱える人の介助をメインとする仕事です。入浴や食事、着替えといった日常生活のサポートに加え、必要に応じて買い物や掃除、洗濯などの生活のサポートも行ないます。
細かい仕事内容は、利用者の障害程度以外に、特別養護老人ホームなどの施設で働くのか、自宅へ出向いてサポートする訪問介護をメインとして働くかによっても異なります。
ご家族や近隣の方とのコミュニケーション、引継ぎや実績報告など、業務にともなう事務作業もあり、施設によってはレクリエーションの企画に携わることもあるでしょう。
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介護士の離職率について
介護労働安定センターが2017年に行なった調査によると、介護士の離職率は年間で16.2%となっています。職場環境が関係している離職理由の割合は、「職場の人間関係に問題があった」が20.0%、「収入が少なかった」が15.0%でした。
上記2点をまとめて「きつい」と感じる理由にすると、合計は35.0%となります。結果として、介護士の仕事を辞めた4割近くの人が、離職理由に介護現場のきつさを挙げているといえそうです。
それでは、介護士の仕事がきついと感じる理由には、どのようなポイントが関係しているのでしょうか。
介護士がきつい・大変だといわれるポイント
介護士の仕事がきついと感じる理由には、以下のようなポイントが関係していると考えられます。
現場の人手不足
国内では高齢者が増加しているため、介護業界は常に人手不足の問題を抱えています。多くの事業所や施設では介護士が不足しており、介護士の求人を日常的に見かける機会は少なくないでしょう。
介護労働安定センターの資料によると、介護士が人手不足となる理由として「採用が困難である」と回答した事業所が88.5%にのぼっていました。さらに、介護士の採用が困難だといえる具体的な理由として「同業他社との人材獲得競争が厳しい」が56.9%、「他産業に比べて、労働条件等が良くない」が55.9%となっており、いずれの理由も全体の半数を超えています。
一方、「離職率が高い」を人手不足の原因と回答したのは、全体の18.4%でした。このことから、介護士の人手不足は現場のきつさや離職率の高さが大きな原因ではなく、単純に求職者と求人のバランスが取れていないために起こっていると考えられそうです。
ただし、慢性的な人手不足のある事業所や施設で利用者の数が増えてきたときには、介護士1人あたりの負担が増えるため、一時的に仕事がきついと感じる場面も多くなるでしょう。
利用者との関わり
介護の仕事は、利用者から感謝されることが多くあります。しかし、なかには病気や生活の不自由さ、痛みなどから、ちょっとしたことが怒りや悲しみにつながりやすかったり、認知症や精神的な問題を抱えていたりする利用者がいるのも事実です。
上記の理由以外にも、人間同士の関わりでは「あの人とは何となく合わない」といったこともあり、相性なども関係してきます。特に世代が異なる高齢者の場合、信頼関係を構築するまで時間がかかる場合もあるでしょう。
こういった要素が関係し、介護の際に生じるコミュニケーションでストレスを感じることもあるかもしれません。利用者との関わりに限らず、事業所内の人間関係などでも、そうしたトラブルや問題が発生する可能性もあるでしょう。
体力仕事が多い
介護士の仕事内容は、立ちっぱなしで行なわれるものがほとんどです。もちろん、接客販売のように、立った姿勢で長時間働く仕事は介護士だけではありません。しかし、入浴や着替え、ベッドでの起床や排せつなどの介助を行なう際に、介護する利用者の身体が大きいと、それだけサポートに体力を必要とします。
最初のうちは体力的にきついと感じても、日々業務にあたっていれば次第に慣れてくるかもしれません。しかし、慣れる前にきついと感じて辞めた場合には、「介護士の仕事はきつい」というイメージを持ってしまうでしょう。
このように、介護業界自体の人手不足や利用者との関わり、体力的な問題などが、介護士の仕事がきついと感じるおもな原因だと考えられます。それでも、業務のきつさを理由に離職する人がそこまで多くないのは、なぜなのでしょうか。
介護士のやりがいは?
きつくない代わりに単調でつまらない仕事よりも、多少のきつさを感じたとしても、それ以上にやりがいのある仕事のほうが、長く続けるモチベーションも保ちやすいでしょう。
介護士の仕事では、以下のようなやりがいを感じられる場面が多くあります。
利用者から感謝してもらえる
自分の生活のケアや身体介護をしてくれる介護士に対して、多くの利用者は感謝の気持ちを持っています。
「いつもありがとう」と本人から声をかけてもらえるだけでなく、ご家族から感謝の気持ちを伝えられる機会もあるでしょう。本来なら自分が面倒を見るべきなのに、さまざまな事情でかなわない家族に代わり、日々サポートをしてくれる介護士に対してありがたく感じる家族も多いのです。
また、特別養護老人ホームなどの施設で勤務する場合には、身の回りの介護だけでなく、イベントの企画や行事ごとに開催するレクリエーションに参加することもあります。
人に感謝されることが好きな方や、どうすれば喜んでもらえるかを考えるのが好きな方にとって、感謝される機会の多い介護士の仕事は大きなやりがいを感じやすいといえるでしょう。
利用者を支援することの達成感
利用者と毎日関わっていれば、自然と個々人の特徴や介護のやり方、スムーズに進められるコツなどを理解していきます。また、利用者がしたいと思っていたことを、サポートした結果できるようになったり、生きる楽しみを見出したりする場面に立ち会える達成感は、介護士にとってかけがえのないものです。
また、自分自身のスキルが上がり成長できるだけではなく、利用者の喜びをともに実感できる点も、やりがいだといえるでしょう。
このように、介護士の仕事には、きつさ以上にやりがいを感じる機会が多くあります。それでは、やりがい以外に介護士として働くとメリットは何があるのでしょうか。
介護士を続けるメリットは?
介護士の仕事を続けることで得られる代表的なメリットには、以下のようなものがあります。
キャリアアップを目指せる
介護士の仕事を続けるメリットの一つとして、ステップアップやキャリアアップを目指しやすい点が挙げられます。
例えば、介護職の実務経験を3年以上積んで実務者研修を受け、国家試験に合格すれば、国家資格である介護福祉士の資格を取得することが可能です。また、介護の計画や指示書を作成するケアマネジャーを目指したり、その他の医療系資格なども取得したりすることで、仕事の幅を広げられます。
事業所によっては、資格取得のサポートを行なっていたり、資格取得にともなう昇給制度が充実していたりするところもあります。
勤務先にもよりますが、ケアマネジャーになれば、現場で介護業務にあたるよりも書類作成やヒアリングの時間がメインとなるでしょう。体力面で心配がある方や、キャリアアップを重視する方は、働きながら資格取得を目指す方法もおすすめです。
職を失うリスクが低い
超高齢社会である日本では、今後も当分は少子高齢化が進む見込みです。介護の必要がある高齢者は増え、面倒を見られる親族はどんどん少なくなるでしょう。介護職は売り手市場となっているため未経験でも採用されやすく、経験者の需要はさらに大きくなると思われます。
景気や情勢に左右される業界も多いなか、介護士は今後も職を失うリスクが低い職業の一つです。また、施設勤務でしっかり稼ぐ、登録制の訪問介護事業所などで空いた時間だけ働くなど、ライフスタイルに合わせて働き方を選べる点も魅力といえます。
国からのバックアップがある
「介護士は収入が低い」といわれることもありますが、実は国からのバックアップを受けられることをご存知でしょうか。少子高齢化を支える人材として、国も介護士の存在を重視しており、介護職員等特定処遇改善加算や介護報酬改定など、一定以上の収入を守る取り組みを続けているのです。
特に訪問介護や夜間訪問、認知症対応といった業務に対する加算率が高めとなっていて、勤続年数の長さも加味されるため、長く働くモチベーションとなりやすいでしょう。
まとめ
「介護士の仕事はきつい」とイメージされやすく、実際に大変な場面は少なくありません。しかし、人に感謝されやすく達成感も大きいため、やりがいを感じやすい職業です。また、国からの収入サポートなども充実していることや求人数の多さから、今後も職を失うリスクが低い業界でもあります。
実務経験を積めば、資格取得やキャリアアップの道も開かれています。人に感謝されることに喜びを感じる方や、ライフスタイルに合わせて働き方を選びたい方には特におすすめの職業といえるでしょう。
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