高齢社会の日本では、介護士の需要は日に日に高まっています。介護の仕事と聞くと、「大変」「つらい」というイメージを持っている方は多いのではないでしょうか?
たしかに大変なことはありますが、介護士はやりがいの大きい魅力的な仕事です。この記事では、介護士のやりがいや魅力、仕事内容について見ていきましょう。
介護士ってどんな仕事?
介護士は高齢者施設や訪問介護の現場に勤めることが多く、高齢者をはじめとする介助が必要な方に対してのケアを行います。仕事内容は大きく2つに分かれており、生活援助と身体介助があります。
生活援助では、利用者の代わりに生活や食事の準備、買い物を行うなど、利用者の身体には直接触れない日々の暮らしの援助を行います。あくまでも対象は利用者で、利用者の家族などには適用されません。
一方、身体介助は利用者の身体に直接触れながら、利用者のADL(日常生活動作)や意欲の向上を目的として、専門的な知識のもとに行われます。例えば排泄・入浴介助や食事介助、服薬介助などがあります。
実際の仕事内容は非常に幅広く、施設ごとにルールなどもあるため「介護士の仕事」といってもひとくくりにはできません。
介護士の仕事内容などについては、こちらの記事で詳しく説明しているのでぜひ参考にしてみてくださいね。
介護士の仕事内容は?業務スケジュールの例をご紹介
介護士のやりがいって?
仕事をする上でお給料や労働環境などの待遇面が重要なのはもちろんですが、いくら待遇が良くてもやりがいがまったく無ければ長く働き続けるのは難しいでしょう。
介護士は「ハードな仕事」だと言われることが多いですが、実際に介護士はどのような点にやりがいを感じているのでしょうか。
人から感謝される
介護士がやりがいを感じる部分として1番多く挙げていたのは、「人から感謝されるところ」です。
平成27年に実施された東京都高齢者施設福祉協議会による「職員のやり甲斐アンケート報告書」によれば、なんと96%の方が「この仕事をやっていて良かったと思うことがある」と回答しています。
「良かったと思うことがある」と回答した人のうち、37%の方が、「利用者などからの感謝や笑顔があったときにこの仕事をやっていて良かったと感じる」と回答しています。その他にも介護の仕事をすると「人に優しくなれる」「誰かの役に立てる」と感じることがあるようです。
利用者は高齢者が多く、中にはうまく身体が動かせないことなどから、介護士をはじめとする周りの人間に感情をぶつけてしまう方もいます。しかしそのような方の気持ちに寄り添い尊重することで、次第に良い関係性ができてきます。
コミュニケーションのとり方に苦労をしていた利用者から感謝を伝えられた時の喜びはひとしおで、より大きく心を揺さぶられ「これからも頑張ろう」とやりがいを感じる介護士は多いのではないでしょうか。
参考:東京都高齢者施設福祉協議会「職員のやり甲斐アンケート報告書」
利用者の良い変化を1番近くで見守ることができる
介護をしていると「トイレに1人で行けるようになった」「お風呂で自分で身体が洗えるようになった」などの身体機能の改善や心の安定、生活の質の向上などさまざまなポジティブな変化もあります。
私たちからすると一見当たり前のように思えることですが、これまで重度の介護を必要としていた利用者にとっては例え少しの変化でも非常に大きな進歩なのです。
もちろんこの成果は1番に利用者の努力があったからですが、介護士が献身的に介護を行った結果でもあります。そのため利用者の良い変化や、その変化で利用者が嬉しそうにする姿を目の当たりにした時、やりがいを感じる介護士は多いようです。
知見が広がり自己成長につながる
介護士として人生の大先輩である利用者に接して色々な話を聞くことで、得られる学びはとても多いです。利用者は、戦争や震災などこれまで自分が体験したことのない経験や、生きてきた中での教訓を話してくれます。
利用者の様々な話を聞いて多様な価値観に触れることで自身の知見が広がります。地域や人とのつながり、死生観、自分の身内との関係性への波及、介護スキルにいたるまで、さまざまな自己成長につながることも多いです。
人生の大先輩の話を身近に聞いて自己成長につなげられるのは、介護士ならではのやりがいの1つ。1人1人と向き合う中で自分の経験値が増え、聞いた話を誰かに伝えることもできます。
介護士として働く魅力・メリット
介護士の仕事にはやりがいだけでなく、働く上での魅力やメリットも多数存在します。ここでは介護士として働く魅力やメリットは何か、詳しく紹介します。
年齢や性別に関係なくキャリアアップを目指せる
近年は男性も増えつつありますが、介護の現場では女性が多く活躍しています。その理由としては、家事や育児との両立のしやすさなども挙げられるでしょう。
高齢者施設か訪問介護かなど職場によっても異なりますが、どの職場も比較的女性が多いため、性別がキャリアアップの妨げになることは少ないです。そのためキャリアアップを目指したい女性にとっても、介護士はおすすめの仕事です。
一方で女性が多いからといって男性が不利になることもまったくなく、介護の現場は力がいる場面が多いのでむしろ重宝されます。
また介護業界では年齢がハンデになることも少なく、実際に女性の場合、全体の20%ほどの方が60歳以上でも現役介護士として働いています。心身が健康であればシニア世代の登用を行っている施設もあり、長く働き続けられるところも魅力の1つとなっていますよ。
参考:厚生労働省「介護労働の現状」
需要が高く、働き口に困らない
介護は人が住んでいる場所であればどこでも必要なため、都心でも地方でも職探しに困ることはほとんどありません。
加えて高齢社会で介護分野の需要が高まっているため、介護士はまさに売り手市場なのです。仮に今働いている職場がなくなったとしても、次の職場の選択肢が豊富なのは安心ですよね。
特に介護福祉士やケアマネージャーなどの資格を持っている人材はよりニーズが高く、どのような地域でも求人がたくさん見つかります。働き方も様々なので、希望に合わせてワークライフバランスを重視した働き方ができるでしょう。
家事の経験を活かせる
家事の経験を活かせるところに魅力を感じ、介護士になる方も意外と多いです。介護の仕事では身体介助だけでなく、料理や洗濯といった生活の援助が必要になることもあります。
介護福祉士等の資格を取得すると身体介助の仕事が増えますが、はじめて介護士として働く場合は生活援助の場面で家事経験が活かせます。
介護の現場は日常的に家事をしている主婦の方などにとって、これまで培ってきた家事スキルが仕事に活かせる場所になるため、その部分に大きな魅力を感じるようです。
普段家事をやっていても感謝される機会は少ないですが、介護士として働いていれば何気ないことでも感謝されます。その時に自分の経験が誰かの役に立っていることを実感し、同時にやりがいも感じます。
介護士がやりがいを感じられなくなった時の対処法・考え方
介護士として長く働いていると、やはりやりがいを感じられなくなるタイミングもあるでしょう。そのような時にこのまま介護士を続けるか悩むかもしれませんが、「何故やりがいを感じられなくなったか」を考えることで解決できることもあります。
そこでここからは、介護士のやりがいを感じられなくなった時の対処法や考え方をご紹介します。
介護士を志した時の気持ちを思い出す
介護士の仕事に行き詰まり、やりがいが感じられなくなってきたら、介護士を志した時の気持ちや、介護士をやってきて嬉しかったことを思い出してみましょう。
介護士になりたての頃は仕事が難しく、大変だったのではないでしょうか。しかしそのような時期を乗り越えられたのは、利用者からの言葉などにやりがいを感じていたからだと思います。
介護士を続けているとつい忘れてしまいがちですが、すべてのことが当たり前ではないことを思い出せたら、心に余裕が生まれるかもしれません。
業務改善を行い、働きやすい職場にする
やりがいを感じられない原因に職場の環境があるのであれば、自ら業務改善を行い働きやすい職場にするのも1つの手です。
毎日決められた仕事をただこなすだけではやりがいを見つけにくく、モチベーションの低下にも繋がります。小さなことからでも業務改善を行うことで、サービスの質の向上や業務の効率化、残業の削減など働きやすい職場づくりにも繋がりますよ。
資格の取得を目指す
上記の方法を試してもやりがいが感じられない場合は、キャリアアップのために資格の取得を目指すのがおすすめです。
介護福祉士や社会福祉士、ケアマネージャーなどは有名で人気の資格ですが、その他にも介護士が使える資格には認知症ケア専門士やレクリエーション介護士などさまざまなものがあります。
資格を取得すると仕事の幅が広がるだけでなく、資格手当などで給料が上がることもあります。また勉強を通して自分のケアのクセや興味のある分野なども知ることができます。
介護業界で役立つ資格は以下の記事でも紹介しているので、参考にしてみてください。
介護福祉士の取得方法は?介護業界で役立つ資格をご紹介
まとめ
今回は、介護士のやりがいや魅力について詳しく紹介しました。介護士は心身ともに大変なことが多い仕事ですが、一方でやりがいもあるため多くの介護士がそれを糧にして日々頑張っています。
しかし働いていく中で忙しさがつのると、やりがいや初心を忘れてしまうことも少なくありません。そのような時は一度立ち止まり、自分がなぜ介護士を志したのかを考えてみるといいでしょう。
どうしてもやりがいが感じられない場合は職場を変えることで改善できる可能性もあるので、転職を検討してみても良いかもしれません。
ライター kyoko.
病棟を経験後、訪問分野に足を踏み入れた30代看護師。大学卒業後、4年制の看護大学に編入。中国・上海への留学経験を活かし「語学×看護師」の可能性を模索中。
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