高齢化が進む日本では、介護士の需要が高まり続けています。一般的に介護職は、あまり給与面が優遇されていないといわれていますが、毎月の給与にプラスして、年に数回のボーナスがもらえるのであれば、仕事への大きな励みとなるでしょう。
では介護士は、ボーナスがもらえるのでしょうか。相場の金額や、ボーナスアップも気になります。
そこで、本記事では介護士のボーナス事情を解説します。
介護士のボーナス平均は57万円!
まずは、介護士のボーナス平均額と支給時期、金額がどのように決まるのかを見ていきましょう。なお、この記事では介護職の人の総称として介護士と記載しています。
ボーナスの支給時期
介護士のボーナスの平均は、約57万円。給与のおよそ2か月分といったところです。国税庁の「令和2年度民間給与実態統計調査」によると、全事業所規模合計の平均賞与額は約64万円でした。比較すると、介護士のほうが7万円程度低くなっています。
ボーナスの支給時期は、一般的に夏と冬の2回の会社が多く、介護士の場合も事業所によって多少の違いはありますが、6月または7月と12月の2回支給されるケースが多い傾向です。
ボーナスの支給時期
ボーナスの金額は、上司による査定で決められる企業もあります。 しかし、介護士の場合は、業務内容からの評価が難しいという事情があるため、おもに基本給を基準として、ボーナスの額を決めるのが一般的です。採用時の募集条件や雇用契約、就業規則などを見ると、「基本給〇か月分」と記載されている場合があります。
ただ、ボーナスは法律で定められた雇用者の義務ではないため、事業所の業績によって支給額が変更となることも珍しくありません。基本的には、年次や勤務期間にしたがって基本給がアップするため、ボーナスも多くなっていく傾向です。
ただし、勤務状態によって、ボーナスの額が左右されることもあります。査定システムはなくても、勤怠がボーナスに影響する可能性がある点は注意しておかなければなりません。欠勤や遅刻は控えるようにしましょう。
ボーナスの金額は年齢によって変わる?
一般企業では、転職で入社した場合に前職での経験や年齢に配慮された金額となります。介護士のボーナスの金額と、経験年数や職種の関係はどのようになっているでしょうか。
経験年数別ボーナス平均
介護士の場合、一般企業のように一つの職場で長く働かないケースもあるため、年齢とボーナス金額に大きな関係が見られない特徴があります。例えば、他の仕事を経験したあとで、介護士になる場合もあり、他業種と比べると介護に従事する人の年齢層もまちまちです。そのため、介護士では年齢よりも経験年数がボーナスの金額と大きく関係してきます。
勤続年数が短いと、その分ボーナスの金額も低くなりますが、長期になるほど上昇率が上がる傾向です。
職種別ボーナス平均
介護職といっても、さまざまな職種があります。職種別に見ても、ボーナスの額は大きく異なります。厚生労働省が公表している「令和2年度賃金構造基本統計調査」によると、2020年の介護関連職種別のボーナス平均額は以下のとおりです。
●ケアマネージャー
男性:約79万1,000円
女性:約63万4,900円
●訪問看護従事者
男性:約41万9,400円
女性:約45万2,100円
●福祉施設介護職員
男性:約64万5,900円
女性:約53万3,400円
ケアマネージャーは、実務年数が問われるだけでなく、専門的に学ぶ時間が必要です。資格取得の難易度が上がるほど、ボーナス金額も高くなる傾向が見られます。
ボーナスの金額は施設形態によって異なる
ボーナスの金額は、基本給が基準となりますが、同じ介護士でも施設形態で基本給に差があるため、ボーナス金額も変わります。
施設形態による基本給の違い
介護施設の分類は、非常に複雑です。厚生労働省の「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、おもな介護関連施設の形態別基本給平均(常勤者)は、以下のとおりです
- 介護老人福祉施設(特養):19万1,530円
- 介護老人保健施設:17万7,670円
- 介護療養型医療施設:16万3,130円
- 訪問介護事業所:18万6,960円
- 通所介護事業:18万540円
- 認知症対応型共同生活介護:17万460円
基本給の差は、施設形態で1万~3万円程度です。ボーナスが年間2.5か月分と仮定した場合は、最大で約7万5,000円の開きが出ます。
ボーナスもしっかり欲しい人は運営母体の大きい施設がおすすめ
先述したように、ボーナスは雇用側の義務ではありません。そのため、支給の有無は事業者の方針によって異なります。公益社団法人介護労働安定センターが公表している「令和2年度介護労働実態調査」によると、無期雇用職員の場合、「定期的に賞与を支給している」と回答した割合は介護職全体で64.2%でした。
一方で有期雇用職員の場合は、「定期的に賞与を支給している」と回答した割合が33.9%と大きく下がります。そのため、無期雇用職員のほうが有期雇用職員よりもボーナスが期待できるでしょう。近年は、介護職全体の給与体系の見直しが図られているため、人材不足解消の観点からもボーナスの支給率は改善してくるかもしれません。しかし、施設によってはボーナス制度を実施していない可能性もあります。
一方で有期雇用職員の場合は、「定期的に賞与を支給している」と回答した割合が33.9%と大きく下がります。そのため、無期雇用職員のほうが有期雇用職員よりもボーナスが期待できるでしょう。近年は、介護職全体の給与体系の見直しが図られているため、人材不足解消の観点からもボーナスの支給率は改善してくるかもしれません。しかし、施設によってはボーナス制度を実施していない可能性もあります。
ボーナス支給が確実なのは、医療法人や大企業などが運営母体となっている資本の大きな施設です。そうした事業所であれば、グループ全体の方針としてボーナス支給をしている可能性が高く、介護士でも規定に沿ったボーナスを受け取ることが期待できます。
ただし、事業運営に不安がある場合は、求人票にボーナス支給の記載があっても、事業状況によっては支給されない可能性がある点は念頭に置いておきましょう。ボーナスを確実に受け取るためには、求人票の内容とともに、経営状態の確認が必要です。
ボーナスアップを狙うには?
介護士として働くのは、多くの喜びと同時に苦労もあります。労働へのモチベーションアップのためにも、働きに見合ったボーナスを獲得したいものです。ボーナスアップを狙うための方法を3つ紹介します。
資格を取得する
ボーナス金額と職種の関係でも見てきたように、資格を取ることでポジションが上がり、ボーナスアップにつながる可能性が大きくなります。介護士でボーナスアップが期待できる資格は、以下のとおりです。
・介護福祉士
介護職に従事するには、決まった資格は必要ありません。しかし、「介護職員初任者研修」「介護福祉士実務者研修」の順に、介護の基本を学ぶのが一般的です。これらは、介護経験がなくても取得できますが、介護福祉士は国家資格のため、仕事の幅も広げることができます。
介護福祉士を受験するためには、さまざまなルートがありますが、実務経験ルートの場合、3年かつ540日以上の実務経験と実務者研修が必要です。そのため、介護経験がない人の場合は、試験資格をすぐに受けることができません
試験勉強にかかる期間は、1日2時間程度の勉強で平均約3か月が目安です。国家試験に合格するだけでなく、受験資格を満たさないと試験が受けられないため、簡単ではありません。しかし、基本給およびボーナスアップが確実に期待できる資格です。
・認定介護福祉士
介護福祉士の上位資格にあたり、実践介護だけでなく、各方面との連携や介護を指導する立場としての役割を担います。養成研修Ⅰ類を受講するためには、介護福祉士として5年以上の実務経験が必要です。比較的新しくつくられた資格のため、知名度は低めですが、超高齢化社会では介護業界のリーダー的なポジションとなることが期待できます。
・ケアマネージャー
直接介護に携わるのではなく、介護保険制度に基づくケアプランの作成を行ない、利用者の介護に関わる役所や施設との調整をする仕事です。受験資格は、5年かつ900日以上の実務経験が必要で、さらに介護保険に関するさまざまな学習をこなさなければ取得できません。しかし、取得後には大きなやりがいと、ボーナスアップの機会が得られるでしょう。
役職につく
介護職にも施設や形態により、多様な働き方があり、キャリアのステップも多彩です。各部門のリーダーや主任、責任者といった役職が置かれ、責任を与えられます。役職につくことで、各役割に応じた役職手当やボーナスアップが期待できるでしょう。現職をしっかりとこなし、働きが認められれば、昇級によるボーナス加算も可能です。
給料の高い施設に転職する
基本給が上がりにくい施設でがんばって働いていても、給料を上げるのは難しいでしょう。先述したように、施設の形態や運営母体によって基本給は異なります。そのため、現在の職場でのボーナスアップが厳しい場合は、思い切って給料の高い施設へ転職することもひとつの案です。
現代は、介護人材の需要が高く、実力と経験次第では大きな収入アップも夢ではありません。転職を考える際には、十分に下調べをして、ボーナスの額に期待ができる施設を探すことが大切です。
まとめ
ボーナスの有無で年収に大きな差がつきます。仕事へのモチベーションを保つためにも、ボーナスは大切です。
これまでは、ボーナスがもらえない介護士もいたかもしれません。 しかし、介護人材獲得を目指す国の方針もあり、介護職の収入は改善傾向にあります。今の職場のボーナス事情に満足できないときには、資格取得や新たな施設への転職も視野に、ボーナスアップを狙ってみてはいかがでしょうか。
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