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介護職は給与が増え続けている!介護職員処遇改善加算を解説

  • お金・法律・制度

目次

介護職として働いている人の給与が毎年のようにアップしているのをご存知でしょうか。

介護を必要とする高齢者が増える中、介護人材の不足が大きな課題となっています。2017年時点で介護職員は195万人となっていますが、2025年にはおよそ55万人が不足するとされています。

介護サービスが社会に十分行き届き、どんな人でも自立した尊厳のある生活が送れるようにするために、介護職の存在は欠かせません。やりがいの大きい介護職を就職先としてもっと魅力あるものにするため、国は「介護職員処遇改善加算」という制度を設けています。この制度によって、2009年から2017年までの8年間で介護職員の賃金は月額平均5.7万円も上がっています。

この記事では、これからも介護職の給与アップが期待できる「介護職員処遇改善加算」について解説します!

参考資料:厚生労働省「第7期介護保険事業計画に基づく介護人材の必要数について  別紙4 総合的な介護人材確保対策(主な取組)」
参考資料:内閣官房・全世代型社会保障検討会議「第6回議事録」


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介護職員処遇改善加算はどんな制度?

そもそも加算ってなに?

もともと介護業界は、2000年から始まった介護保険という公的な保険制度のもとでサービス提供を行っています。

介護を受けたい人は、要介護認定などを住んでいる自治体(市町村)へ申請して認定されたのちに、介護サービスを受けることになります。介護を受ける人の自己負担は実費の1割程度。介護サービスを提供した介護事業者は、残り9割を"介護報酬(介護給付)"として市町村へ請求して収入を得ているのです。

こうして日常的に発生している"介護報酬"に対し、一定の条件で"加算"され、通常より多い給付を事業者が受け取るというのが加算の仕組みです。

※「介護職員処遇改善加算」は事業者が市町村へ請求し、国保連が代行して事業者へ支払います。
参考:厚生労働省「介護報酬の仕組みについて」


介護職員処遇改善加算ってなに?

加算について簡単に確認したところで、改めて「介護職員処遇改善加算」は何なのかを解説します。

「介護職員処遇改善加算」とは、介護事業所で働く介護職員の賃金を上げるための加算制度です。全部で5つの区分に分けられていて、各区分ごとに必要な要件が違います。

一番多く加算される「加算Ⅰ」を取得できれば、介護職員一人当たり3万7千円ほど賃金アップとなります。


介護職員処遇改善加算の写真

出典:厚生労働省「『介護職員処遇改善加算』のご案内」


介護職員処遇改善加算で求められる要件は?

「介護職員処遇改善加算」の申請に必要な要件として、大きく2つの要件が設けられています。1つが「キャリアパス要件」で、もう1つが「職場環境等要件」です。


キャリアパス要件とは

「キャリアパス要件」には3種類の要件があります。ざっくり言えば、ある程度の規模の一般的な企業であれば備わっている人事制度を設けましょう、という内容です。

[ キャリアパス要件の3種類の要件 ]

Ⅰ...職位・職責・職務内容に応じた任用要件と賃金体系の整備をすること
Ⅱ...資質向上のための計画を策定して、研修の実施または研修の機会を設けること
Ⅲ...経験もしくは資格などに応じて昇給する仕組み、または一定の基準に基づいて定期に昇給を判定する仕組みを設けること

「キャリアパス要件」が設けられた背景には「どんなスキルや資格を持てば介護職員として働く中でキャリアアップできるのか」ということを介護現場ではっきり示すようにしていこうという考えがあります。

一般的な民間企業のようにキャリアステップが明確だと、働くモチベーションも保ちやすく、外部からの評価も得やすくなるからです。

そのため、職員のキャリアパスをしっかり構築することが事業者に求められています。


職場環境等要件とは

「職場環境等要件」は、賃金アップ以外の待遇改善(職場環境の改善など)をするよう事業所へ働きかけるための要件です。介護職に就く人たちが働きやすくなるようにするために設けられています。

具体的には以下6つの区分から1つ以上の取り組みを行うよう求められています。

[ 職場環境等要件6つの区分 ]
  1. 入職促進に向けた取組...経営理念の明示、職場体験の受け入れなど
  2. 資質の向上やキャリアアップに向けた支援...研修受講支援やキャリアアップ面談の機会確保など
  3. 両立支援・多様な働き方の推進...個別事情に応じた勤務シフトの導入や有給休暇をとりやすい職場環境の整備など
  4. 腰痛を含む心身の健康管理...介護ロボットや介護リフトといった機器の導入など
  5. 生産性の向上のための業務改善の取組...ICT活用など
  6. やりがい・働きがいの醸成を行うこと...ケアの事例共有や感謝の声の共有など

なお2021年度は、6つの区分から3の区分を選択して、それぞれで1つ以上の取り組みを行うように定められています。

参考:厚生労働省「介護職員処遇改善加算及び介護職員等特定処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(2021年3月)」
参考:厚生労働省「『介護職員処遇改善加算』のご案内」


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介護職員処遇改善加算ってちゃんと給与に反映されるの?

ここまで「介護職員処遇改善加算」の内容を解説してきました。制度はややこしいですが、「とにかく介護職員の賃金を上げなくては!」という危機感のもと、国が本気で制度を整えていることを知っていただければと思います。

ところで「給与が増えそうなのはうれしいけれど、本当に職員の給与が増えるんだろうか」「職場の収益に組み込まれるのでは?」といった不安がよぎる方もいるのではないでしょうか。

心配には及びません。「介護職員処遇改善加算」では、確実に介護職の人たちの給与が上がるような仕組みが設けられています。

介護事業者側が加算請求をするときには「賃金改善の計画書」を作成して職員に内容を周知したうえで、都道府県知事へ提出しなければなりません。

さらに事業年度ごとに、事業者側は職員の「賃金(処遇)改善の実績」を都道府県知事へ提出する必要があります。

「介護報酬に加算されたけど、賃金は上げなくてもいいか...」なんてごまかすことは絶対にできないのです。


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介護職員処遇改善加算ってちゃんと申請してもらえるの?

「介護職員処遇改善加算で職員の賃金がしっかり上がることはわかったけれど、面倒そうな手続きだし、職場が申請してくれないのではないだろうか」と思う方もいるかもしれません。

その心配もほぼ無用です!

そもそも介護事業者側も、深刻な人手不足に悩まされています。

東京や愛知では介護職種の求人倍率が6倍を超えているという報告(2020年)もあります。全業種の求人倍率は1倍を超える程度ですから、いかに人手不足が深刻なのかがわかります。

そのため国だけでなく事業者レベルでも「職場をいかに魅力的にみせるか」は重要な課題です。給与額は就職先を選ぶ大きな判断軸になります。

実際に2020年の調査(注)では、対象となる事業所全体の93.5%が「介護職員処遇改善加算」を申請していると回答しています。

未申請の事業所の中には、事務手続きの煩雑さを申請しない理由に挙げているところもありました。申請する事業所を増やすため、国はさらなる制度の改善を目指しています。

(注)2020年の調査:厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」
参考:介護給付費分科会資料「介護人材の処遇改善について」


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制度がさらなる進化を!介護職員等特定処遇改善加算で最大月額8万円の賃金アップも

ここまでは「介護職員処遇改善加算」について解説してきましたが、2019年秋に「介護職員等特定処遇改善加算(以下、特定処遇改善加算)」が新設されました。

漢字がたくさんあって似たような名前ですが、「特定処遇改善加算」は技能や経験のある介護職員の待遇を特に改善するために、介護報酬をさらに加算する制度です。「経験・技能を持ったリーダー級」の介護職員へ次のいずれかの処遇改善をするように定められています。

[ 介護職員等特定処遇改善加算での処遇改善 ]
※以下のいずれか1つを実施。
  1. 月額8万円以上の処遇改善
  2. 改善後の賃金を年額440万円以上(役職者を除く全産業平均水準)とする

この「特定処遇改善加算」は、スキルのあるリーダークラスの介護人材が、他の業界で同レベルの立場で働く人と同水準の賃金を得られるようにすることが目的の制度なのです。

「スキルアップしても給与が上がらない」「偉くなっても良いことがなさそう」といったキャリアプランの見通しの悪さを払しょくし、介護現場のスキルアップにつなげたいという背景があります。

ところで「経験・技能を持ったリーダー級」の介護職員とは、具体的にどんな人を指すのでしょうか。

この制度の対象となるのは、「介護福祉士で、勤続年数10年以上の方」です。勤続年数は同じ法人でなくても柔軟な運用が可能のようですが、介護福祉士という要件は必須となります。

参考資料:厚生労働省「「介護職員等特定処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」及び「2019 年度介護報酬改定に関する Q&A(Vol.1)(平成 31 年4月 12 日)」の送付について」


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まとめ

ここまで「介護職員処遇改善加算」や「特定処遇改善加算」について解説してきました。

介護人材の不足は年々深刻さを増しています。2025年には245万人、2040年には305万人の介護職員が必要という推計があります。2025年には55万人の介護職員が不足すると言われています。

人材不足が年々深刻になる中、介護職を魅力ある就業先にしようと、国は報酬制度を何度も改定し、介護現場で働く人が不満なく、やりがいを持って働けるように政策を練っています。

経済が縮小しつつある日本で、明確な需要増が見込めて、求人が4倍から6倍もある業界は多くありません。

介護職のプロを目指すのは、展望のある選択といえるのではないでしょうか。


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