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介護士の給料が安いのはなぜ?給料アップのコツを解説!

  • お金・法律・制度

目次


介護業界では、慢性的な人手不足が問題となっています。「給料が安いから人材が集まらない」といわれていますが、実際はどうなのでしょうか。肉体面や精神面での負担に比べて、介護士の給料が安いことも社会問題になっており、加速する高齢社会の日本にとって大変重大な課題です。

本記事では、なぜ介護士の給料が安いのか、理由をいくつかご紹介します。また、介護士として活躍しながら給料をアップさせるためのポイントを一緒に見ていきましょう。

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介護士の給料が安い理由


介護士の給料が安い理由の写真

介護士の給料が安い理由を考えるのに先立って、データから介護士の給料の実態を確認しておきましょう。厚生労働省が発表した「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、2020年における介護職員全体の平均給与は月額31万5,850円(常勤者)でした。

参考:厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」

近年、厚生労働省をはじめ介護業界は介護職員の待遇改善を進めています。その結果、2019年の平均給与30万120円に比べて、1万5,730円アップしています。しかし、全産業の給与水準の39万2,717円に比べると、月額8万円程度低いのが現状です。

参考:日本経済団体連合会、日本経済団体連合会「2020 年6月度「定期賃金調査結果」の概要」

介護士の給料事情については以下の記事でも解説しています。合わせて参考にしてください。
介護士の平均給料は?介護職の年収の上げ方について


介護士の専門性を重要視されていないから

介護士は、業務内容によって異なりますが、基本的に資格がなくても仕事ができる職業です。無資格の人でも、介護施設で身体介護をともなわない介護補助や事務作業、施設管理などで活躍している介護士も少なくありません。

一方で、「介護職員初任者研修」と呼ばれるエントリー的な資格や、上位資格の「介護福祉士実務者研修」などの資格取得者は、現場の中心的な役割を果たして活躍しています。介護業界唯一の国家資格は、介護福祉士のみです。

身体介護や生活支援といったメインの介護業務は、介護福祉士でなくても、介護職員初任者研修修了者や介護福祉士実務者研修修了者でカバーできます。そのため、介護業界と関係の深い医師や看護師などの医療分野の国家資格が必要な業界と比べると、専門性を期待されていない一面があります。

医療・保健分野で医療行為を行なうには、医師や看護師などの医療専門職の資格が必要です。その点、資格が必要なく、医療従事者に比べて資格取得の難易度が下がる介護士は、社会のニーズや業務内容の大変さに見合った給料とはいえないでしょう。

介護士の仕事は、「業務が多くて大変」「体力的にハード」などといわれる傾向です。具体的に、介護士の仕事内容は、利用者の体に直接触れたり、体重を支えたりする食事や入浴、排せつなどの身体介助が少なくありません。

そのため、介護現場では、「介護士が全身を使って利用者をおこす」「起き上がりあがりや車イスの移乗をサポートする」といったシーンもあります。また、立ち仕事がメインで、屈んだり座ったりするなど、腰や肩、腕などに負担がかかる場面も多い傾向です。

さらに、要介護者は体調が不安定な場合が多いため、介護業務も神経を使います。体調が急変すれば、冷静かつ的確な判断をして応急手当をしたり、医療機関に連絡したり、緊急時の対応に迫られることも珍しくありません。

さまざまな性格や趣味、認知機能のレベルの利用者に合わせて、信頼関係を築くようにきめ細かな配慮でコミュニケーションを図る必要もあります。なぜなら、認知症患者のなかには、暴言や暴力といった症状が進行して、サポートの大変な利用者も含まれているからです。

このほか、介護業界の人材ニーズに比べて、人材が集まらない結果、介護の現場を支える一人ひとりの介護士の負担が大きくなっていることも問題といえます。このような介護士を取り巻く環境は、給料が安いことも含めて社会での介護士の立場を思うように引き上げるまでには、まだ時間がかかるでしょう。


経営者の内部保留が多いから

介護業界は、「他産業に比べて内部留保が多い」という指摘があることをご存じでしょうか。企業や団体は、経営の安定化を図るため、利益が出た場合、内部留保することもあります。わかりやすくいえば、経営で得た利益を今後の運営のためにプールしておくシステムです。

企業や団体にとっては、業界を取り巻く環境の変化に対応するため、必要な資産といえるでしょう。しかし、あまり内部留保額が大きくなると勤務する介護士などの職員に給与やボーナスとして還元されないため、給料が安いままとなりかねません。

厚生労働省を中心に、これまで国は介護施設の内部留保を議論してきました。2013年(平成25年)5月に厚生労働省の第7回介護事業経営調査委員会で報告された「特別養護老人ホームの内部留保について」によると、以下のような内部留保額でした。

【社会福祉法人が運営する特別養護老人ホームなどの1施設あたり平均】

  • 発生源内部留保額:約3億1,373万円
  • 実在内部留保額:約1億5,563万5,000円

また、今後の課題としては、以下の内容が指摘されています。

  • 特別養護老人ホームの1割強の施設は、財務諸表を公表していない
  • 公表していても3割程度の施設しか、公式ホームページに掲載していない
  • 低所得者の負担軽減が使命となる社会福祉法人の内部留保額が高く、本来の役割を十分に果たしていないなど

介護業界は、公的施設となる特別養護老人ホームの経営でも、内部留保額の高さが問題となっています。業界全体で内部留保に対する姿勢を見直さない限り、介護士の給料が安い状況は改善されないでしょう。


介護報酬に上限があるから

介護業界の大半は、国の介護保険制度の下で運営されています。介護保険制度では、介護報酬の上限が決まっており、運営側がいくら介護士の給料が安いからといって、介護施設や介護事業所の判断で勝手に昇給やボーナスを出せないシステムです。

介護報酬とは、介護施設や介護事業所が要介護認定を受けた要介護者または要支援者の利用者へ介護サービスを提供したときに支払われる報酬を指します。介護報酬の額は、個々の介護事業所が独自に決められません。なぜなら、介護保険法で厚生労働大臣が介護報酬の基準額を設定しているからです。

利用者が支払う利用代金は、原則1割負担に過ぎません。残りの9割は、介護施設や介護事業所が毎月、保険者となる市町村に介護給付などの請求をして、後日支払われる流れです。

ここまでご紹介したように、介護士は以下のような問題があることから、給料が安いままになっています。

  • 介護士の社会的立場の問題
  • 特別養護老人ホームの内部留保の課題
  • 介護保険制度における介護報酬の仕組みの問題

またこのような状況を踏まえて、国の機関は介護士の処遇や賃金を向上させたい動きを示しています。以下の記事で詳しく解説していますので、合わせて参考にしてください。
介護職は給与が増え続けている!介護職員処遇改善加算を解説
岸田総理「看護師・介護士・保育士の賃金アップ、2022年2月実施へ」具体的な引上げ金額や方針について|業界ニュース

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介護士の給料をアップさせるには?


介護士の給料をアップさせるには?の写真

給料が安い現状を打破するため、介護士はどのような方法で給料アップを実現できるのでしょうか。ここでは、具体的な方法を5つご紹介します。


資格を取得する

介護士は、上位資格を目指すほど、給料に反映されます。施設ごとに金額は異なりますが、種類別に資格手当が支給されるからです。介護職員初任者研修より、介護福祉士実務者研修、さらに国家資格となる介護福祉士のほうが資格手当はアップします。

介護福祉士の平均給与は月額32万9,250円です。保有資格なしの介護士が27万5,920円なのに比べて約10万円、初任者研修30万1,210円、実務者研修30万3,230円と比べても、2万円程度高い給料が期待できます。


役職につく

勤務先で活躍しながら経験を積むと、施設長や管理者などと呼ばれる役職を任される場合があります。役職手当が給料に上乗せされるため、役職につくことで、一般職員の介護士よりも高い給料が期待できるでしょう。

管理職でない介護職員の平均給与は30万8,370円ですが、管理職になると34万3,840円で、約3万5,470円の差が開きます。


夜勤の回数を増やす

24時間体制の常時介護が必要な老人ホームなどでは、まとまった夜勤手当が支給されます。積極的に夜勤のシフトに入れば、大幅に給料アップにつなげることも可能です。


勤続年数を増やす

介護施設の給与体系のうち、年功給と呼ばれる勤続年数に応じて給料が増加する仕組みを取り入れている職場では、長期にわたって働くほど昇給が期待できます。

厚生労働省の発表した「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、介護職員の勤続年数と平均給与の関係は以下のとおりです。

勤続年数 平均給与額
5年(勤続5年~5年11ヵ月) 29万6,930円
10年(勤続10年~10年11ヵ月) 32万6,830円
15年(勤続15年~15年11ヵ月) 34万8,530円
20年以上 39万960円

勤続年数5年の介護士に比べて20年以上の場合、約10万円も給料がアップします。


給料の高い施設に転職する

勤務先の給与体系に不満があったり、思うように努力が評価されない場合、思い切って転職することも方法の一つです。現職での実績や成果をもとに、転職活動を続ければ、今の職場より給料の高い転職先を見つけられる可能性が高くなるでしょう。

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まとめ

介護士の給料が安い理由は、「社会のニーズに比べて待遇の改善が進んでいない」「介護施設の経営の問題」「介護士の給料に大きく関係する介護報酬の仕組みの問題」など、多岐にわたります。今後も、介護士として活躍するためにも、介護士の給料をアップさせるポイントを参考にしてはいかがでしょうか。


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