国家資格を取得すれば美容師になることができます。しかし、お客さまの髪をカットできるのはスタイリストになってからです。美容室で、スタイリストとはどのような位置づけなのでしょうか。今回は、美容師のスタイリストの仕事内容やスキル、スタイリストになる方法を紹介します。
美容師のスタイリストって何?
スタイリストといえば、ファッション雑誌や芸能人のコーディネートをする職業です。しかし、美容師のスタイリストは少し違います。はじめに、美容師のスタイリストの基本情報を紹介します。
スタイリストのポジション
理容美容学校を卒業して美容室に就職すると、サポートや見習い的な役割のアシスタントの仕事からはじまります。数年の修行期間を経て一通りの技術をマスターすると、一人のお客さまの施術をすべて担当できる一人前のスタイリストデビューです。スタイリストは、美容室の中核の存在。お客さまへの施術はもちろん、アシスタントの指導や機材・美容剤の管理など、さまざまな業務を任せられます。
スタイリストの仕事内容
具体的なスタイリストの仕事内容には、以下のようなものがあります。
- サロンワーク:接客、カウンセリング、カット、パーマ、カラー、スタイリング、セットアップ、シャンプー、ブローなど
- 営業活動:SNS発信、広告出稿、カットモデルの声かけ、店販など
- イベント:コンテスト、ヘアショーの参加、撮影会、ファッションショーのサポートなど
もちろん、お店の規模によっても異なりますが、スタイリストになるとさまざまな活動に参加し、活躍の場を広げる機会も多くなる傾向にあります。美容室の顔となり、指名をもらいながら固定客を増やして、営業利益に貢献していきます。
スタイリストに求められるスキル
美容師は、スタイリストになってはじめて一人前として認められます。スタイリストとして働いていくためには、どのようなスキルが求められるのでしょうか。
技術力
当然、スタイリストには美容師としてのすべての技術が必要です。スタイリストになると、次第に固定客を持つようになります。お客さまが叶えたいスタイルにできるだけ近づけるため、技術を駆使して完成させなければなりません。
カットやパーマ、カラーリングといった技術についてさまざまな手法やテクニックを熟知し、髪質や頭・顔の形に合わせながら、適切に施術していくことが求められます。
コミュニケーション力
お客さまを満足させる施術を行なうためには、要望をしっかりと聞き取る必要があります。加えて、生活スタイルや、お客さま自身がどれだけ手をかけられるかなど、細かな点まで理解し、自宅でのケアについても配慮したスタイルをつくりあげていかなければなりません。
その際に求められるのは、高いコミュニケーション力です。時には、お客さまが考えるスタイルが「技術的に難しい」と、わかるように説明しなければならないこともあります。髪が傷んでいて、理想的な状態にならないケースもあるでしょう。
そうした場合でも、お客さまに対してできるだけ不快感や失望感を与えないよう、言葉を尽くして伝えるスキルが求められます。現代では、コミュニケーション力の高さは、どのような職業でも必要です。しかし、特に接客を仕事の基本とする美容師には必須の能力といえます。
ブランド力
厚生労働省の「令和元年度衛生報告例」によると、全国の美容室の数は、2019年時点で25万4,422 施設でした。同年末の全国におけるコンビニエンスストアの数は、5万5,620店舗であり、約4.6倍の店舗数です。
この状況のなかで競争力を高めていくためには、ブランド力が必要です。美容室自体のブランド力だけでなく、店舗運営のけん引力となるスタイリスト自身のブランド力も重要となります。
「あのスタイリストにヘアスタイルを任せたい」というお客が増えるほど、お店に貢献できるでしょう。美容師にとってブランド力を持つことは、技術や人柄、センスすべてを統合して認められることでもあります。
参考:厚生労働省「令和元年度衛生報告例」
スタイリストにはどうやったらなれる?
冒頭でも伝えたように、国家試験に合格すれば美容師になることができます。それでは、スタイリストには、どのようにすればなれるのでしょうか。
スタイリストになるまでの期間
新人として入店してアシスタントとなり、スタイリストになるための技術習得を行ないます。一般的に、習得期間は、2〜4年間、平均3年程度です。ただし、店の方針や、実力によってはさらに短くなったり、長期化したりする場合もあります。スタイリストになるために必要な技術に関しては、美容室ごとにカリキュラムが決められている傾向にあります。
そのため、順次OJTや勉強会、講習会を通じて身につけていくことになります。
スタイリスト技術試験
スタイリストになるためには、各技術が決められた水準に達していることを認められなければなりません。多くの美容室では、段階ごとに技術チェックがあり、さらに最終的なスタイリスト技術試験が設けられている傾向にあります。スタイリストデビューを決める技術試験は、時間内にカットやパーマを行うことで、技能の習得状態が判定されます。
スタイリストの収入とキャリア
気になるスタイリストの収入と、将来性について解説します。
スタイリストの年収
総務省が公表している「令和2年度賃金構造基本統計調査」によると、理容・美容師の月収平均は、約26万9,400円、賞与が約65万5,000円でした。年収に換算すると約389万円です。ただし、実際は勤務先の給与体系やボーナスの有無によっても大きく異なります。
なかには指名料や歩合制を設定している場合があるため、腕の良さが認められれば、その分年収も高くなる可能性があるでしょう。有名店で人気のスタイリストになれれば、一般の美容師水準をはるかに上回る収入も期待できます。
スタイリストとして技術力を磨き、実力をつけるほど顧客も増え、自分の収入へと還元される仕事です。
スタイリストのキャリアパス
アシスタントからスタイリストになるまでは、約3年かかりますが、その後のキャリアはどのような道があるのでしょうか。スタイリストのランクや役職については、美容室によって違いがあります。例えば、スタイリストのなかにも、以下のように名称をつけて、ランク分けしているケースもあります。
- ジュニアスタイリスト
- トップスタイリスト
- チーフスタイリスト
- シニアスタイリスト
- エグゼクティブスタイリストなど
一般的に、アシスタントの指導的な立場となり、さらにスタイリストのチーフ的な役割を果たすまでの期間の目安は、約7〜10年です。その後は、美容室全体のマネジメントに関わるようになっていく人もいるかもしれません。総合的なプロデュースを行なう、アートディレクターやディレクターなどの役職を置く美容室もあり、どのようなキャリアになるかは、勤務先の体制によって異なるでしょう。
最終的には、店長やグループ企業の管理者クラスへの昇格もありえます。さらに、独立を目指すキャリアパスの場合、美容室オーナーとして開業したり、面貸しや業務委託によりフリーランスとして働いたりするなどの選択が可能です。スタイリストとしての技術さえしっかりしていれば、どのようなキャリアを描いていくのかは、自分次第です。知識と技術を高めていくことにより、可能性は無限に広げられます。
参考:総務省「令和2年度賃金構造基本統計調査」
スタイリストへの直接インタビューはこちら
美容師のビジョン実現を支える大手サロン Hair&Make EARTH
まとめ
美容師のスタイリストは、「一人前の美容師」の代名詞です。資格を取得しただけではなく、技術者としてトータルで顧客対応ができる位置づけにあります。一方で、スタイリストになってからが本番と言っても過言ではありません。キャリアを積み、技術や接客スキルを磨いていけば、その先にはさまざまな未来があります。スタイリストとは、美容師にとって夢の入り口となるポジションなのかもしれません。
大手サロンHair&Make EARTH (アース)インタビュー 美容師のキャリア形成や独立・転職も支援 | バイトルPROマガジン
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