医療現場や福祉関連の施設などで、患者さんの生命と生活を支える看護師。知名度も高く、看護師と名乗れば「安泰だ」「高給取りだ」とうらやましがられた経験がある人も多いのではないでしょうか?
しかし実際には、その業務内容と報酬が見合っておらず「看護師は給料が安い」と、悩む人も少なくありません。
そこでこの記事では、看護師の給料の実態や、安いと感じる理由を解説します。また、給料をアップさせるための方法もご紹介しますので参考にしてください。
看護師の給料は安い?
看護師が担うのは、患者さんの命や生活に関係する責任のある仕事です。そのため、看護師の給料は特別安く設定されているわけではありません。では、実際の看護師の給料はどのくらいなのか、詳しくみていきましょう。
厚生労働省の調査によると、看護師の平均月給は約30万9100円です。一方、全職種の平均月給は30万7700円と、労働者全体と比べてもやや高いことが分かります。
年齢別で見ると以下のとおりです。
年齢 | 看護師の給与 | 全職種の給与 |
---|---|---|
20~24歳 | 25万2100円 | 21万2000円 |
25~29歳 | 27万5400円 | 24万4600円 |
30~34歳 | 28万9700円 | 27万4400円 |
35~39歳 | 30万3000円 | 30万5200円 |
40~44歳 | 31万6200円 | 32万9800円 |
45~49歳 | 33万1300円 | 34万7400円 |
50~54歳 | 34万7100円 | 36万8000円 |
55~59歳 | 35万6200円 | 36万8600円 |
60~64歳 | 32万2400円 | 28万9300円 |
65~69歳 | 29万2900円 | 25万7400円 |
70歳~ | 30万900円 | 24万7900円 |
上記の表の通り、30歳前半までは全職種と比べても看護師の給与が高いことが分かります。しかし、その後の昇給率は低く、60歳まで看護師の給与の方が低いという結果になっています。
看護師には女性が多く、結婚・出産・育児などのライフスタイルに合わせて働き方を変えることが要因として挙げられます。産休や育休の取得、時短勤務などによって給与の伸び率が悪くなっているのかもしれません。
とはいえ、平均給与はあくまでも平均であり、学歴や勤続年数、勤務地、勤務先によっても異なります。
看護師の給料に関してはこちらの記事でも詳しく解説しているので参考にしてください。
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看護師の月給・手取りはいくら?月給を増やすにはどうしたら良い?
看護師1年目の初任給・手取り・ボーナスはいくらもらえる?学歴や病院によって年収はどれくらい違う?
看護師が給料を安いと感じる7つの理由
看護師は、データで見ると他業種と比べても比較的給料の高い職業です。しかし、実際に働いている人のなかには「給料が安い」「割に合わない」と感じている人が少なくありません。
では、なぜ給料が安いと感じるのでしょうか?その理由を7つご紹介します。
理由1:ハードな業務内容
看護師はとてもハードな職業です。採血や点滴などの診療補助はもちろん、患者さんによっては食事や排せつの介助、清拭なども行います。看護師が入浴介助を行うこともあり、1日に10人以上を担当するなどの体力仕事も。
その他、患者さんの看護計画やカルテの作成などの事務仕事もこなすため、とてもハードな業務内容です。また、急患やご家族への対応で、業務が計画通りに進まないことも多く「休む間もなく働いているのにお給料が低い」と感じてしまうようです。
理由2:拘束時間が長い
夜勤がある看護師は拘束時間が長く、2交代制の場合は勤務が17時間を超えるケースもあります。業務に入る前に申し送りがおこなわれることが多く、情報収集のために早めに出勤する看護師も珍しくありません。
また、残業や休日出勤が多いのも看護師の特徴の一つです。突発的な入院や急変の対応に追われ、勤務時間を過ぎてから看護記録の作業に入る日もあり、拘束時間に給料が見合っていないと感じるようです。
理由3:業務時間外の勉強会がある
看護師は、業務時間外の勉強会に参加する機会が多くあります。特に、規模の大きい病院では勉強会や看護研究などが頻繁に行われます。看護リーダーになれば資料作成を任されるため、本来の看護師業務以外の負担が大きくなるでしょう。
もちろん、積極的な参加によってスキルアップを目指せます。看護師として、最新医療の勉強は大切ですが「学生時代より勉強している」「1日中看護のことを考えている」と感じる看護師も多く、報酬が努力に合わないとの声もあります。
理由4:残業代の請求が難しい
先述したように、早く出勤して情報収集や点滴の準備を行うため、始業前の時間外労働である前残業をおこなう看護師は珍しくありません。
また、業務終了後にカルテの記録や勉強会の準備を行うための残業が頻繁にありますが、残業代の請求をためらう看護師が多いのが現状です。職場によっては「時間外手当は請求しない」という暗黙のルールが根付いていることも。
もちろん、看護師には残業代を請求する権利があり、雇用者側には残業代を支払う義務があります。とはいえ、職場の慣例として請求できず「労働時間の割に安月給」と感じてしまう人もいるようです。
理由5:命を預かる責任の重さ
看護師の業務は、患者さんの命を預かるため責任が重いという特徴があります。「患者さんの異変を見逃した」「点滴の量を間違えた」など、一つのミスが患者さんの命に関ります。
担当する患者数が多かったり、激務で疲弊していたりすればミスをする可能性が大きくなるでしょう。そのような重圧は精神的にも苦しく感じます。他職業と比べても、命に直結する仕事を担う人は少なく「もっと給料が高くてもいいのではないか?」と感じても無理はありません。
理由6:危険と隣り合わせ
医療現場での勤務は、常に危険と隣り合わせです。病名が判明していない患者さんへの対応も多く、なんらかの病気に感染するリスクを常に背負っています。
近年でいえば、新型コロナウイルス感染症が例として挙げられます。対応に当たる外来の看護師や、コロナ病棟を担当した看護師は、常に感染の危険と隣り合わせの状態です。
「自分も感染するかもしれない」と不安を抱えながらの勤務は、緊張感があり疲弊するでしょう。新型コロナの流行により、改めて「看護師の使命感だけに頼るのではなく相応の対価が必要だ」と感じた人が多いのではないでしょうか?
理由7:昇給に期待できない
若いうちこそ高額な看護師ですが、結婚や出産、育児のためにキャリアを中断する看護師も少なくありません。ライフスタイルの変化により夜勤や残業に対応できず、時短勤務や非正規雇用になれば、手当がつかないだけでなく昇給に期待が持てないことも。
その他、病院の規模によっては役職につけるチャンスは少なく「基本給がなかなかアップしない」「手当がつかない」などの不満を持ってしまうのが現状です。
看護師が給料をアップさせるためには
看護師は大変な仕事だからこそ、相応の対価がなければ続けられません。しかし、看護師のなかには激務に見合わない給料に不満を感じて、退職を考えている人も多いでしょう。
給料に悩みを抱える看護師には「今の職場のまま収入アップを目指す」「条件の良い職場に転職する」「副業で収入源を増やす」の、3つの解決方法があります。そこでここからは、それぞれの給料アップ方法を解説します。
今の職場で給料アップを目指す
「今の仕事が楽しい」「人間関係が良好」「給料以外に不満はない」という場合は、今の職場のまま給料アップできる方法を考えるのがおすすめです。給料に大きな影響があるポイントは次の通りです。
夜勤の回数を増やす
看護師の給料のなかでも大きな割合を占めているのが夜勤手当です。日本看護協会の調査によると、三交代制の夜勤で約4~5千円、二交代制で約1万円の手当がつきます。
そのため、今の職場で夜勤の回数を増やせば給料アップにつながるでしょう。同僚のなかには「生活リズムが崩れるから夜勤に入りたくない」と考えている人がいるかもしれません。上司や同僚と相談しながら、無理のない程度でシフトを調整してもらってはいかがでしょうか?
参考:公益社団法人日本看護協会「2020年病院看護実態調査報告書」
資格を取得する
勤務先によっては、資格手当が支給されることもあります。そのため、看護師以外の資格取得によって給料アップが目指せるかもしれません。特に「認定看護師」や「専門看護師」の資格取得がおすすめです。給料アップのためだけでなく、スキルアップにも役立つでしょう。
参考:公益社団法人日本看護協会「専門看護師」/「認定看護師」
管理職を目指す
看護師長や看護部長など、管理職になれば基本給のアップや役職手当が期待できます。勤務先によって管理職に昇進する基準は異なりますが、興味のある人は人事課に問い合わせてみてはいかがでしょうか?
条件の良い職場に転職する
今の職場では給料アップが見込めない場合は、思い切って転職を考えるのも良いでしょう。転職を検討する際は、給料や昇給率の高い職場選びを意識することが大切です。
給料が高い職場を選ぶ
「給料アップのために転職したのに待遇が変わらない」となると、転職したことを後悔しかねません。転職時は、給料の高い職場選びを意識しましょう。
看護師の給料は、勤務する都道府県や病院の規模、種類、診療科によって給料が異なります。規模の大きい病院や、自由診療をおこなうクリニックを選ぶと給料アップが期待できるでしょう。給料が高い職場選びの詳細は、次の記事でも紹介していますので参考にしてください。
【関連記事】
看護師の給料が高い職場はどこ?好待遇な職場の特徴を解説!
昇給率の良い職場を選ぶ
転職先を選ぶ際は、基本給や手当の額だけでなく昇給率にも注目しましょう。昇給率は、長い目で見たときの給料アップに影響します。
職場によって昇給率は異なりますが、国公立病院であれば公務員として年齢に応じて給料が高くなる仕組みになっています。一方、小さなクリニックなどは経営状況に左右される可能性があるでしょう。過去の求人を見比べながら、昇給率が安定しているかなどのチェックが大切です。
また、結婚や妊娠によるキャリアの中断によって昇給率が低下するケースも考えられます。子育てをしながらでもキャリアを継続できるような福利厚生があるかどうかも重要なポイントです。
副業で収入源を増やす
「今の職場で給料アップが見込めない」「人間関係が良好で転職は考えていない」などの場合は、看護師としての収入の他に、副業で収入源を増やす方法があります。
他の病院でのアルバイトも可能ですが、どのような副業でも看護師との両立は大変なため、体力や忍耐力が必要不可欠です。
就業規則により副業が禁止されている職場もあるため、検討する際は事前に確認しておきましょう。看護師の副業については次の記事でも紹介しています。
【関連記事】
看護師におすすめの副業4選!ダブルワークで時間の有効活用&収入アップ!
まとめ
看護師の給料は、他の職種と比べて安すぎるわけではありません。しかし、その業務内容や責任の重さから「給料が安い」と感じてしまうことが多いようです。
また、看護師の給料は勤務先や勤続年数によっても大きく異なります。現状に不満を感じている人は「このまま10年続けたら給料はいくらになるか」「管理職になればどのくらい給料が上がるか」など、これからのライフプランを見直してみてはいかがでしょうか?
希望通りの給与アップが見込めない場合は、転職を考えるのも一つの選択肢です。バイトルPROでは、自身の希望する給与の求人を探せるだけでなく、副業OKの仕事もご紹介しています。
ライター 山本あやか
元保育士で現在はライターとして活動中。保育士歴は10年で2児の母。幼稚園教諭一種免許と保育士資格を持つ。
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