新型コロナウイルス感染症の流行で全国的に注目されるようになった在宅ワーク。医療機関などで患者さんを相手に仕事をする看護師には関係ない話...と思っている方が多いのではないでしょうか。
実は、在宅ワークをする看護師は増えつつあるのです。すべての仕事を在宅ワークで行うのは難しいですが、部分的に取り入れたり、副業で在宅ワークをしたりすることは可能です。
この記事では看護師の在宅ワークに関する現状や、資格を活かしてできる仕事をはじめとしたおすすめの在宅ワークをご紹介します。
在宅ワークができる看護師は増えている!
IT企業など一部の企業で行われていた在宅ワークやリモートワーク。2020年に始まった新型コロナウイルス感染症の流行以降、多くの企業で導入されるようになりました。その流れは、一部の看護業界でも見られています。
例えば、e-ラーニングによる研修受講や資料作成など、現場でなくてもできる仕事は在宅ワークで行えるよう、シフト体制を変更した医療機関があります。一定のスケジュールで働いた後に在宅ワークのシフトを入れることで心身の休息をとり、感染症対応にあたる職員のメンタルヘルスケアを行うのが狙いでした。
また、在宅で記録ができるシステムを整え、事務所に立ち寄らず直行直帰にするなどの対応をする訪問看護事業所も増えました。現場での仕事は続けながら、副業で在宅ワークを取り入れている方もいます。
看護業務のすべてを在宅ワークでは行えませんが、一部に取り入れることは工夫次第で十分に可能といえるでしょう。
参考:一般社団法人 日本看護協会「看護職がテレワーク!?~緊張からの解放~」
看護師が在宅ワークをするメリット
看護師の在宅ワーク導入には、いくつかのメリットがあります。
時間を有効活用できる
在宅ワークの大きなメリットは、自由に使える時間が増える点です。丸1日在宅ワークができれば、通勤時間は不要となります。訪問看護などの職場で直行直帰できれば、事務所へ移動する時間を削減し、通勤ラッシュを避けて早めに自宅へ戻ることも可能です。
仕事以外に使える時間が増えれば、家事や休息、趣味を楽しむなど、1日のうちにできることも増えます。時間を有効に使えると同時に、生活の充実にもつながるでしょう。
心身の疲労が溜まりにくい
在宅ワークは現場での仕事と比べて、疲労が溜まりにくい点もメリットです。通勤などの移動時間がなくなれば、それだけで心身の負担は減るでしょう。デスクワークがメインで体力が必要な場面もなくなるので、肉体的な疲労も少なくなります。
命を守る医療現場では高い緊張感を維持しなくてはなりませんが、その必要もありません。まわりを気にせずに自分のペースで仕事ができ、精神的にも楽になるでしょう。
知識やスキル、関心の幅が広がる
在宅ワークは、看護以外の仕事に触れて知識やスキルを身につけたり、興味・関心を広げたりする機会にもなりえます。
医療機関や訪問看護など、通常業務の一部を在宅で行うだけではあまり変化がないかもしれません。しかし副業や一般企業への転職等で医療・看護とは違った領域に関わると、大きな刺激を得られるでしょう。求められる知識やスキルが異なるので、新たな能力を身につける機会にもなるかもしれません。
看護以外の仕事に触れることは、良い気分転換にもなります。違う業界で活躍する人との関わりのなかで視野が広がり、改めて看護という仕事の魅力に気付くきっかけにもなるかもしれません。
看護師の資格を活かしてできる在宅ワーク
医療機関や介護事業所など、現場での仕事が必要な職場では難しいですが、企業であれば在宅ワークメインで働ける場合もあります。ここでは、看護師の資格や経験を活かして働ける、在宅ワークが可能な業種を紹介していきます。
治験関連企業
治験とは、薬としての効果が期待される物質の安全性や効果、投与方法などを確認するために行われる臨床試験のことです。治験関連の業務を行う企業は、看護師などの医療資格保有者が多く活躍しています。
治験にもさまざまな職種がありますが、オペレーションや問い合わせ担当など一部の職種については在宅ワークが可能な場合があります。治験コーディネーターなど、医療機関を直接訪問する職種では直行直帰が認められているケースもあるので、移動の負担は軽減されるでしょう。
参考:国立研究開発法人 国立成育医療研究センター「治験ってなあに?」 / 厚生労働省 職業情報提供サイト「治験コーディネーター」
コールセンター・相談業務
コールセンターや電話相談業務は、在宅ワークでも対応可能な場合があります。コールセンターの仕事にはお客様からの電話を受けるもの(インバウンド)と、こちらから電話をかけるもの(アウトバウンド)と大きく2種類あります。
インバウンドは商品やサービスに関する問い合わせなどに対応します。担当者への取り次ぎまでの担当であれば、高度な知識は必要とされないケースが多いです。
アウトバウンドは、電話で商品やサービスの契約や、商談のアポイントを取ったりする営業電話をかけたり、すでに利用している方に電話をして調査を行ったりします。営業に関しては電話の内容をテンプレート化できるので、電話をかけるのが苦手でなければ、比較的仕事を覚えやすいです。
医療系企業や保険会社などが行う医療相談などでは看護師が活躍していて、正社員を募集していることも少なくありません。アルバイトやパートでも、一般のコールセンター業務より時給が高めに設定されています。
医療系IT・ベンチャー企業
近年は健康に対する意識や関心の社会的な高まりや、医療費の増加といった社会問題などを背景に、多くのIT企業やベンチャー企業が医療業界に参入しています。
なかには、在宅ワークを導入している企業があるので、転職等を検討しているのであれば調べてみると良いでしょう。
現場の課題を解決するさまざまなアイデアや製品・サービスに関われ、知識を広げる機会にもなります。医療機関で働いていた経験や知識を活かせる場面も多いので、看護師の新たなキャリアとして選択するのもおすすめです。
在宅ワークは副業にもおすすめ
在宅ワークはすきま時間を活用できるため、副業として選択するのもおすすめです。ここでは、看護師が副業でできるおすすめの在宅ワークと、副業をする際の注意点についてご紹介します。
副業におすすめの在宅ワーク
忙しい看護師でも、勤務の合間に副業としてできる在宅ワークがあります。おすすめの在宅ワークを3つご紹介しますので、仕事選びの参考にしてください。
テープ起こし・データ入力
テープ起こしやデータ入力は、パソコンさえあれば在宅でできる仕事です。専門的なスキルは必要なく、仕事さえ見つければすぐに始められます。
テープ起こしは会議や講演会、インタビューなどの音源を文字に起こす仕事です。話し言葉を聞きながらパソコンで入力していくので、ある程度の速度でタイピングができないと時間がかかってしまいます。使い慣れている人であれば、すぐに仕事に慣れるでしょう。
データ入力は、顧客情報や売り上げ、アンケートなどさまざまなデータをパソコンで入力していく仕事です。定められたフォーマットにひたすら入力していくので、慣れれば効率よく作業を進められます。
どちらも求人サイトに掲載されているほか、クラウドソーシングなどのマッチングサイトでも募集されていることがあるので、一度探してみると良いでしょう。
ライター・ブロガー
ライターやブロガーは、記事を書いて報酬を得る仕事です。文章を書くことに抵抗がない方、書くことが好きな方に向いています。
ライターは雑誌やWebメディアなどの記事を書きます。インタビューやコラムなどの記事の種類やテーマ、内容は記事を書く媒体によってさまざまです。
仕事は各媒体での募集に応募したり、クラウドソーシングで探したりするケースが多いです。病気や治療にまつわる内容、看護師の働き方や転職に関する内容のような、看護師だからこそかける記事が求められることも少なくありません。
ブロガーの場合は、自分のブログやサイトを立ち上げて記事を書きます。記事の内容は自由に決められて、看護に関する記事を書く方もいれば、看護とはまったく関係のない記事を書く方もいます。主な報酬源はサイトに貼った広告ですが、読者が増えれば、企業から依頼された記事を書いて報酬を得るなど収入源が広がることもあります。
コールセンター
コールセンターの仕事は、夜間など短時間の勤務で募集しているケースがあります。在宅ワークに対応している職場もあるので、副業を探すときはコールセンターの求人もチェックしてみると良いかもしれません。
看護師の副業については以下の記事でも解説していますので、合わせて参考にしてください。
看護師におすすめの副業4選!ダブルワークで時間の有効活用&収入アップ!
副業をするときの注意点
病院など組織に雇われている看護師が副業をする場合、注意すべきポイントがいくつかあります。
就業規則を確認しよう
副業を始める前に、まずは就業規則を確認しましょう。副業禁止となっている場合、副業をしていることが職場にバレると、何らかのペナルティが課されてしまう可能性があります。最悪の場合、解雇となる可能性も否定できません。
副業をするにあたって申請や報告が必要など、何らかの条件付きで認められる場合もあります。職場に黙って副業はせず、定められた手続きを行ったうえで副業を始めるようにしましょう。
確定申告も忘れずに
副業を始めたら、確定申告について気に留めておかなくてはなりません。確定申告とは、税金を適切に納めるために1年間の収入を国に申告するものです。申告期間は毎年2月16日から3月15日で、前年の収入が対象となります。
病院などに勤めている方は職場で年末調整を行いますが、副業をしている場合は年末調整だけでは収入額が把握できないため、確定申告が必要です。
確定申告が必要となるのは、副業での収入が20万円を超えた場合で、副業を複数している方は、すべての収入の合計額が20万円超となったら確定申告の対象となります。アルバイトやパートなど企業に属して働いている場合は収入の全額が、ライターなどフリーランスや個人事業主として働く場合は売り上げから経費を差し引いた額が対象です。
確定申告をしないと、後から税務署に申告漏れを指摘されて、延滞税等を支払わなければならない可能性があります。収入額を正しく把握し、期間内に申告を行うようにしましょう。
副業をする方の確定申告について解説した記事もあります。こちらも合わせて参考にしてみてください。
参考:国税庁「副収入などがある方の確定申告」 / 「No.2024 確定申告を忘れたとき」
給付金等を受給中の副業に注意
給付金等を受給中に副業をすると、賃金や働く条件によって減額されたり受給できなくなったりするため注意してください。
例えば育児休業給付金の場合、働いている日が月に10日(10日を超える場合は80時間)以下であり、その就労が一時的・臨時的であることが支給条件です。これが満たされないと、給付金を得られません。
上記の条件を満たしていても、給付金と育休中に得た賃金の割合によって給付額が変わります。以下がその区分です。
- 育児休業中の賃金が給付金の13%以下⇒減額なし
- 育児休業中の賃金が給付金の13%を超えて80%未満⇒減額支給(給付金×80%と賃金の差額を支給)
- 育児休業中の賃金が給付金の80%以上⇒支給なし
育児休業期間中に就業した場合は申告が必要です。詳しくは以下のリーフレットをご確認ください。
厚生労働省「育児休業期間中に就業した場合の育児休業給付金の支給について」
また、退職して失業手当を受給している間に働いた場合も、支給対象から外れたり減額となったりするケースがあるため注意が必要です。
参考:厚生労働省「育児休業中の就労について」 / 「Q&A~育児休業給付~」 / 「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」
まとめ
看護師が在宅ワークでできる業務は限られていますが、以前より選択肢は広がりました。柔軟な対応をする職場が出てきたり、看護師が活躍できる一般企業が多くなったりと、看護師も働き方を選択するチャンスが生まれてきています。
働く場所を変えなくても、副業で在宅ワークを取り入れる方法もあります。バイトルPROでは副業やWワークOKな求人も多く掲載していますので、副業に関心のある方はチェックしてみてはいかがでしょうか。
ライター 小松亜矢子
地域看護に関心のあるライター。看護師の資格を持ち、地域でコミュニティナースとして活動中。
珍しい看護師の仕事をレア度別に解説!珍しい仕事に就くメリット・デメリットとは?
看護師の勤務先の種類を解説!病院・クリニック以外でも活躍できる看護師の働き方
看護師は病院以外でも働ける?看護師資格が活かせる仕事をご紹介!
看護師の年収は高い?平均年収と月給・ボーナス・手当の内訳を解説!
看護師で年収1000万円を得ることはできる?年収アップのためのポイントを解説
公務員看護師のメリット・デメリットとは?給料や仕事環境、公務員看護師のなりかたを解説
パート看護師の時給はどのくらい?平均時給と収入アップの方法を紹介
看護師の退職金の平均額や相場はいくら?何年勤務したらもらえる?
「看護師」と「看護士」の違いって何?看護職の種類についても紹介!
看護師が覚えておきたい英語の例文・フレーズ集!現場ですぐに使える英会話やスキルアップできる英語の資格について解説
看護師の履歴書の書き方とは?抑えておきたい基本マナーや注意点を解説!
看護師を辞めたい...理由別の対処法と後悔しない転職先の選び方
【30人に聞いた】看護師あるある50選!職業病から休日の過ごし方まで幅広く紹介!