厚生労働省が行った調査では、約80%の看護師が病院や診療所で働いています。しかし、看護師の資格を活かして働ける場所は病院・診療所だけではありません。
介護施設や訪問看護ステーション、看護学校などは病院・診療所以外の勤務先として想像がつくかもしれません。
今回は上記にはない珍しい看護師の仕事にフォーカスして、レア度別に解説していきます。看護師の資格を活かせる仕事にはどのようなものがあるのか気になる方、転職を考えている方は参考にしてみてください。
参考:厚生労働省「平成30年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況就業保健師・助産師・看護師・准看護師(実人員)」
レア度★1 子どものための看護師として働く
小児科の看護師に憧れたことはありませんか?今も昔も、小児科は人気の診療科です。そして、病院外でも子どもの看護を行う仕事の人気はとても高く、求人のレア度も高くなっています。
子どもを対象に働く看護師の仕事にはどのようなものがあるのでしょうか。
保育施設の看護師
女性の社会進出が増え、都市部を中心に保育施設が増加しています。厚生労働省は保育園にはできる限り看護師を配置するように定めています。
また、慢性的な保育士不足の中、保育施設では1名にかぎって看護師を保育士として登録できるため、保育施設看護師の求人は増加しています。
保育施設で働く看護師の主な役割は「子どもの健康」「職員の健康」「保護者・家庭の健康」を守ることです。最近ではアレルギーや病気・障がいを持つ子どもの保育へのニーズも高まっていることも、保育施設看護師の求人増えている理由として挙げられます。
保健室の看護師
保健室の看護師は、小学校・中学校・高校・大学などの各種学校で、子どもの急なケガへの対応、健康管理、保健指導、健康相談活動を行います。
「保健室の先生が悩みをきいてくれる」のは今の時代でも変わりません。不登校や発達障害、精神疾患などさまざまな子どもが継続的に学習できるようなサポートが看護師には求められています。
公立の学校の保健室で働く場合には、養護教諭の資格が必須です。しかし、私立学校や養護学校では、看護師の免許だけで応募できる求人も多くあります。
病児・病後児保育室の看護師
子どもが幼いうちは、どうしても病気にかかりがちなもの。熱が出たり、病気になったりすれば、通常の保育施設に預けることはできません。
そのような時、保護者は仕事を休む必要がありますが、休むことができない場合にお子さんを預かってくれるのが病児・病後児保育室です。
ケアを十分に行うためには看護師の力が必要です。病児・病後児保育室のニーズは高いため、これからも求人がなくなることはないでしょう。
バイトルPROでは保育系施設の看護師求人を掲載しております。
レア度★★2 企業で働く
次にレアな求人は「企業で働く看護師」です。企業といっても、その種類はたくさんあります。種類ごとに仕事内容をご紹介していきます。
企業看護師
従業員数50名以上の事業所では、労働安全衛生規則で産業医の選任が義務となっています。しかし、従業員数が数百人・数千人となると、産業医1人ではすべての従業員の様子を把握することは困難になります。
その時に重宝されるのが企業看護師です。企業看護師は産業医の指示の元で、従業員の健康管理、メンタルヘルス、急病への対応など、健康と予防医療に関する業務をおこないます。
最近では、新型コロナウイルス感染症の感染対策も重要な業務になっています。
医療機器メーカー・MRで看護師経験を活かす
医療機器メーカーとは、医療にかかわる全ての機器・診療材料を扱うメーカーを指しています。シリンジポンプや輸液ポンプ、人工呼吸器などの精密機器から、針1本まで全国に大小さまざまな医療機器メーカーが存在しています。
MRはMedical Representativeの略で、製薬会社で働きます。具体的には、医師や薬剤師にむけて薬に関する情報を伝え、薬を選んでもらえるようにする仕事です。
医療機器メーカーもMRも、看護師の資格がなければ働けないわけではありません。しかし、看護師は医療に関する基礎知識だけでなく医療現場の特殊性にも理解があり、医師や薬剤師、コメディカルとコミュニケーションを取りやすくなるため、企業としては採用してもらえるケースが増えているのです。
医療系ベンチャー企業で看護師経験を活かす
看護師にはあまりなじみのないベンチャー企業。
ベンチャー企業には明確な基準や定義はなく、一般的には独自のアイデアや技術をもとに、新しいサービスやビジネスモデルを展開する企業を指します。将来性があり、発展を期待される企業が多く、厚生労働省も医療系ベンチャーの支援に乗り出しています。
例えば、オンライン診療のシステム化や、ヘルスケアサービス、新しい医療機器の開発、医師が起業した個性的な医療・サービス、病気や障害がある人向けのアパレルなど、その業種・提供するサービスはさまざまです。
ベンチャー企業から求められる看護師スキルは企業によって異なりますが、看護師資格を活かしながら自分が興味を持てる新しい仕事に携われる可能性を秘めています。
参考:厚生労働省「厚生労働省における医療系ベンチャー支援策について」
レア度★★★3 楽しみながら看護師を続ける
病院とはまったく違う環境で働ける看護師の仕事もあります。最後に紹介するのはレア度★★★3、とても珍しい看護師の仕事です。
テーマパーク看護師
遊園地やテーマパークでは、来場者のけがや急病に対応するために、救護室が設置されています。そこで働くのがテーマパーク看護師です。
テーマパーク看護師には看護師のスキルだけではなく、接客スキルや語学力も求められます。また、働き方としては単発のアルバイトより常勤で勤務することがほとんどで、特にゴールデンウイークや夏休みなどの長期休暇期間が忙しくなります。
イベント看護師
大規模イベントでけがや急病への対応をするのがイベント看護師の仕事です。単発のアルバイトや派遣されるナースがほとんどで、常勤で行っていることは少ないでしょう。イベントごとにその特徴を紹介していきます。
スポーツイベント
大型スポーツイベントでは、来場者や出場者への応急救護を行います。内科系だけでなく、外科・整形外科の対応も求められるため、幅広い看護の知識が必要です。
スポーツイベントでは開催団体や競技会が募集していることが多く、一度参加すると継続的に仕事を紹介してもらえるという特徴もあります。
修学旅行などの宿泊系
私立学校や特殊学校では修学旅行に看護師が同行することが増えています。子どもたちの体調管理やケガの対応、内服の管理を行います。特に初夏から秋にかけて求人が多くなる傾向にあります。
展示会やフェス・コンサートなどの単発イベント系
単発イベントでも救護所が設置され、応急救護にあたる看護師が求められています。
全国ツアーを行うようなアーティストの場合、リハーサルから最終日までツアーに帯同し全国を回ることもあります。求人は少ないですが、イベンターや事務所単位で看護師を募集しているのも特徴です。
トラベルナース
海外旅行や国内旅行が好きな看護師におすすめなのがトラベルナースです。
健康な人だけでなく、なんらかの病気や障がいがある人も旅行に行きたいという思いをサポートするために、医師や看護師が同行します。旅行代理店が計画し、参加者は病気を持つ人とその介助者というケースが多いです。
その中でも有名なのは透析患者さんが参加する海外ツアー。旅行計画の中に血液透析をするスケジュールが組み込まれています。参加者が旅行先でも体調を崩さないように、日常的な健康チェック・薬や注射など必要な医療処置を行います。
フリーランス看護師
フリーランス看護師は、どこにも所属しない看護師のことです。自分でスケジュールや賃金・契約管理のすべてを行い、自由に活動するフリーランス看護師が増えています。
訪問看護ステーションや病院で個人契約の看護師として働いたり、ワクチン接種会場やコロナ関連施設で働いたりします。複数の職場を掛け持ちしていることも多く、その働き方はさまざまです。
珍しい仕事に就くメリットとデメリット
ここまでは、どのような珍しい看護師の仕事があるのか、どうやって仕事を探したらいいのかをご紹介してきました。では実際に珍しい仕事に就くと、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
メリット
珍しい看護師の仕事の多くは夜勤がありません。残業や休日出勤もなく、病院で働いていた頃よりも生活リズムも整えやすいといえます。例えば企業では土日祝はお休み・お盆や年末年始に長期休暇が取れ、プライベートと仕事の両立もしやすく柔軟に働けることが多いです。
更に、雇用形態や契約先によっては夜勤をしていた看護師時代よりも給料が多くなるということもあるでしょう。
また、単発や短期契約のお仕事も多いことから、病院勤務でありがちな人間関係の問題にも左右されにくいと言えます。
デメリット
デメリットは同じ職場や仕事を経験した看護師が少ないことです。
そのため仕事自体に興味があっても、先輩の経験談を聞いたり、複数の企業の働き方や給与を比較・検討したりするのは難しいでしょう。
働き始めてからも看護師の同僚や指導するスタッフがいないケースもあり、自分で学び、判断することが求められる職場も少なくありません。
ほかにもイベント系看護師は単発のことも多く、収入が減る可能性があります。長期的に安定して働きたい方は、きちんと計画を立ててから実行するようにしましょう。
フリーランスや非常勤では1つの契約先の1週間当たりの勤務時間・日数が短くなり、社会保険への加入条件を満たさないことがあります。その場合は、自分で国民保険に加入し保険料を納付する必要があります。
フリーランスでは、確定申告や納税など、病院で勤務していた頃には職場が代行してくれていた各種手続きを自分で行う必要があるのも、デメリットといえるかもしれません。
まとめ
今回は、珍しい看護師の求人をレア度別に紹介しました。仕事を探していても、このような求人を目にすることは本当に少ないので、珍しい看護師の求人に出会うのは難しく感じるかもしれません。
求人数は少ないものの人気は高いので、あっという間に募集が埋まってしまいます。企業によっては求人サイトの非公開求人となっていたり、自社のサイトのみで募集をしたりすることも増えています。求人サイトへの早めの登録、希望する企業のこまめなチェックをおすすめします。
あなたらしく働けることを目指して、珍しい看護師の仕事も視野に入れてみてはいかがでしょうか?
ライター 小田あかり
大学看護学部卒業後、小児科・腎臓内科・循環器の最前線で勤務。現在も看護師として働きながら、ライターとしても精力的に活動中。保健師、呼吸療法認定士、糖尿病療養指導士の資格も持つ。
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