看護師は人々の健康、ひいては生命に関わる職種です。責任重大かつ専門性の高い仕事に携わるということもあり、看護師になるための要件はきちんと定められています。
看護師を目指す場合、まずは進学先を決めなければなりません。おもな選択肢は「大学」と「専門学校」ですが、どちらに進学すべきか決めかねている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、看護師国家試験合格までのプロセスを踏まえつつ、看護大学と看護専門学校の違いやメリットを紹介します。
看護師になるには?
看護師になるためには、文部科学大臣が指定している看護大学を卒業、もしくは3年以上の教育を受けたうえで看護師国家試験に合格する必要があります。
「3年以上の教育」とは、いわゆる看護短期大学・看護専門学校・5年一貫制の看護師養成課程校のことです。
現役高校生、もしくは高校を卒業している場合、大学・短期大学・専門学校から進学先を選ぶことになります。
一方、最終学歴が中学校卒業の場合、高卒認定試験に合格してから大学・短期大学・専門学校へ進学、もしくは5年一貫制の看護師養成課程校に通わなければなりません。
なお、看護専門ではない一般大学や専門学校を卒業しても、看護師国家試験の受験資格は得られないので注意しましょう。
都道府県知事発行の准看護師資格を持っている場合(注)、2年課程の短期大学の卒業で看護師国家試験の受験資格が得られます。
(注)最終学歴が中学校卒業の場合は、3年以上の実務経験が必要
看護師国家試験合格までのプロセスを知りたい場合は、以下の記事もご覧ください。
看護師になるために必要な資格とは?資格の種類や取得方法について解説!
看護大学と看護専門学校の違いとは?
看護師を目指すのであれば、文部科学大臣や厚生労働大臣が指定する看護大学や看護短期大学、看護専門学校に通い、必要なスキルを習得したうえで卒業しなければなりません。
それでは看護大学や看護短期大学、看護専門学校の違いはどこにあるのでしょうか。
以下からそれぞれの違いについて解説します。
卒業までの年数
看護大学は4年、看護短期大学や看護専門学校であれば3年で卒業可能です。もちろん、ただ通学するだけで卒業できるわけではありません。教育課程をきちんと履修したうえで、卒業要件として定められている単位を修得する必要があります。
看護短期大学・看護専門学校については2年制のコースも用意されていますが、このコースで目指せるのは看護師(正看護師)ではなく"准看護師"です。
准看護師は正看護師と同じく、診療補助や患者さんのお世話などに携わります。しかし、准看護師は「自らの判断で業務を行なうこと」ができないため、医師や正看護師の指示に沿って仕事を進めなければなりません。
また、准看護師は「国家資格」に該当しないことも知っておきましょう。
学費
看護大学は4年制、看護短期大学や看護専門学校は3年制が基本なので、当然ながら学費も変わってきます。国立・公立・私立の違いもあるため、自分の進学先に合わせて学費を準備しましょう。
学校種別ごとに学費のサンプルケースを紹介するので、こちらも併せてご覧ください。
学校種別 | 入学金 | 年間授業料 | |
---|---|---|---|
大学 | 千葉大学(国立) | 28万2,000円 | 64万2,960円 |
茨城県立医療大学(公立) | 【県内居住】28万2,000円 【県外居住】56万4,000円 |
53万5,800円 | |
帝京大学(私立) | 26万3,000円 | 【1年次】110万3,000円 【2年以降】105万円 |
|
短期大学 | 埼玉医科大学短期大学 | 40万円 | 70万円 |
神奈川歯科大学短期大学部 | 30万円 | 75万円 | |
専門学校 | 東京都立府中看護専門学校(公立) | 1万1,300円 | 26万5,700円 |
江戸川看護専門学校(私立) | 30万円 | 48万円 |
実際は上記以外に、実習費・施設設備費・教科書代などが別途かかるケースもあります。
学費の総額は学校によって変動しますが、国公立大学なら250万円、私立大学なら450~700万円、専門学校なら100~300万円程度が目安です。
このように学費の差が生じる理由としては、通学期間やカリキュラム内容の違いが挙げられます。看護専門学校は大学より1年早く終わるうえに、病院の附属学校として設立されているケースが多いため、学費が安くなっているのです。
また、看護大学は一般教養科目などもカリキュラムに含まれている分、学費が高くなる傾向にあります。
学べる内容・取得できる資格
先述したように看護大学は医療分野に加えて、一般教養なども学べます。また、看護師だけではなく、保健師や助産師といった受験資格も一緒に得られるため、幅広い進路から選択が可能です。
看護短期大学も、医療分野だけでなく一般教養を学べ、看護師の受験資格が得られます。卒業後に看護大学へ編入すれば、保健師や助産師の受験資格も取得可能です。
一方、看護専門学校は「即戦力を育てる」という目的のもと、看護師になるための実践的なスキルを養えるようにカリキュラムが組まれています。実習の授業がたくさん含まれますが、3年制なのでスケジュールはタイトです。
就職後の給料
看護師の初任給は学歴に関わらずほぼ一定であり、高卒と大学院卒でも差は月給1万円程度となっています。看護師は学歴よりも、どの病院に勤めるかによって給料が変わるため、給与面をしっかりチェックして就職先を決めることが大切です。
参照:日本看護協会調査研究報告 2019 年 病院看護実態調査|日本看護協会
看護師の給料については、以下の記事でも詳しく解説しています。
看護師の年収は高い?平均年収と月給・ボーナス・手当の内訳を解説!
看護師1年目の初任給・手取り・ボーナスはいくらもらえる?学歴や病院によって年収はどれくらい違う?
看護大学、看護短期大学、看護専門学校それぞれのメリットは?
看護師を目指している人にとって、学校選びは迷いやすいポイントです。ここからは、看護大学と看護短期大学、看護専門学校のメリットをそれぞれ解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
看護大学
看護大学は通学期間が4年と長い分、余裕を持って学習を進められます。看護学をはじめとした学問をしっかりと学べるため、着実に基礎を固めることが可能です。
先ほど述べたように、看護系の科目だけではなく、一般教養科目なども学べるため、看護専門学校より多様な知識を身に付けられるでしょう。
さらに、看護師以外の国家資格を取得できることもメリットといえます。保健師や助産師など学校によって対象の資格は異なるので、事前にしっかりとチェックすることが必要です。
また、若干の差ではありますが、専門学校卒より大卒のほうが看護師の給料が高いケースも多いので、覚えておくとよいでしょう。
看護短期大学
看護短期大学は3年制のため、看護大学に比べると1年早く看護師国家試験の受験資格を得られます。また、大学と同様、卒業すると準学士の称号を得られるほか、卒業後に大学へ編入することで学士の取得も可能です。
ただし、近年、看護短期大学を選ぶ人は減少傾向にあります。
看護の現場は今まで以上に専門的な知識が求められるように変化しており、長く学ぶことができる看護大学に通う人が増えているためです。看護短期大学を検討している人は、近年の傾向を考慮のうえ、慎重に選択しましょう。
看護専門学校
看護専門学校も原則3年制なので、看護大学よりも1年早く看護師国家試験を受けることができます。看護専門学校は、実習授業の割合が多いため、通学期間は短くても実践的なスキルをしっかりと習得できるでしょう。
さらに、大学より学費が安いということも大きなメリットです。経済的に看護大学に通うのは難しいという方でも、看護専門学校なら無理なく進学できる可能性があります。
また、看護専門学校は学校の選択肢が多いこともポイントです。2017年時点で看護大学は全国に255校、対して看護専門学校は1,575校と約6倍の差があるので、自宅近くの学校も見つけやすいでしょう。
看護師になるための学校の選び方
大学や短大、専門学校のどれを選んだとしても、看護師への道は開けます。学校選びで迷っているなら、まず「自分が何を重視するか」ということを考えましょう。
例えば、学費の安さや就職までのスピードを重視する場合、大学より専門学校のほうが適切といえます。ただし、専門学校と一口にいっても学費はそれぞれ異なるため、附属病院の有無といった違いも踏まえつつ、総合的に判断することが大切です。
厚生労働省の発表をまとめた資料によると、2021年2月に実施された「第110回看護師国家試験」の合格率は、全体で90.4%でした。このうち4年制の大学の合格率は95.9%、短大(3年課程)は85.6%、短大(2年課程)は72.8%で、専門学校などの養成所は、3年課程が92.9%、2年課程が90%です。
短大の合格率がやや低いものの、それぞれに大きな差はないといえるでしょう。
下記、厚生労働省「第110回看護師国家試験の学校別合格者状況について」では、学校別に合格者数や合格率を公表しているため、学校選びの参考にしてください。
参考:第110回 看護師 国家試験結果|旺文社 教育情報センター
第110回 看護師国家試験の学校別合格者状況について|厚生労働省
まとめ
看護師になるためには、看護大学や看護専門学校に通って知識・技術を学び、なおかつ卒業しなければなりません。そして、看護師国家試験合格という目標を達成することで、ようやく看護師の免許を発行してもらえるようになるのです。
看護大学と看護専門学校はそれぞれ特徴やメリットが異なるため、どちらの進学先を選ぶべきなのかは人によって変わります。通学期間・学費・カリキュラム内容などをしっかりと比較検討し、自分に合った学校を選びましょう。
【2021年】看護師国家試験の合格率は90.4%|過去10年間の推移や新卒・既卒の合格率についても解説
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