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美容師が独立すると年収はいくらになる?独立の形態や経費から徹底分析

  • お金・法律・制度

目次

美容師のなかには、「独立をして自分の美容室を持ちたい」と目標を持っている人も多いのではないでしょうか。独立するときに、気になるのが金銭面です。本記事では、美容室をオープンさせたいと独立を検討中の人が参考にできる、オーナー美容師の平均年収にフォーカスして詳しく解説します。


独立前に知っておきたい年収のこと


独立前に知っておきたい年収のことの写真

長くスタイリストを続けていると、頭にちらつくのが「独立」です。なぜ、独立したいと感じるのでしょうか。日本政策金融公庫総合研究所が全職種を対象に行なった「2021年度新規開業実態調査」によると、開業動機のTOP3(複数回答)は以下のとおりでした。

1位:自由に仕事がしたい(54.1%)
2位:仕事の経験・知識や資格を生かしたい(47.3%)
3位:収入を増やしたい(43.4%)

美容師で独立を検討している人のなかにも同じ理由があるかもしれません。同調査では、「開業時と現在で苦労したことは何か?」についての質問もしています。開業前で、最も多かった回答は「資金繰り、資金調達(57.6%)」でした。また、現在(開業後)に苦労したことのトップは「顧客・販路の開拓(47.9%)」で、次いで「資金繰り、資金調達(34.6%)」となっています。

同調査は、幅広い業種のオーナーからの回答結果ですが、美容師も独立時にはまとまった資金が欠かせません。開業前も開業後も資金繰りや資金調達は、苦労する経営者が多いため、本業の知識や技術だけでなく、お金の知識も頭に入れておいたほうがよいでしょう。

例えば、美容師として独立した場合、年収はどのぐらいに設定すれば良いのでしょうか。独立する前に、しっかりと把握しておくことが必要です。


美容師の平均的な年収の話

美容師の平均年収をまず確認しましょう。10人以上を雇用する理容室と美容室に対して行なわれた厚生労働省が公表している「令和2年度賃金構造基本統計調査」によると、2020年の理容・美容師の平均月収は、約26万9,400円で年間ボーナスは、約6万5,500円でした。

年収に換算すると、約329万8,300円です。ただし、調査結果は、あくまでも平均値となっていることを忘れてはいけません。アシスタントレベルも含まれているため、独立を検討しているスタイリストレベルの美容師は平均値よりも多い可能性が高いです。

当然、独立した後の年収は、平均値よりも大幅に高いことが望まれます。

10~99人規模のサロン 100~999人規模のサロン 1000人~規模のサロン
年収:約324万5,500円 年収:約311万6,000円 年収:約336万600円

独立するためにかかる費用

厚生労働省の「平成27年度生活衛生関係営業 経営実態調査報告 美容業」によると、経営主体が個人経営の割合が年々増加傾向でした。多くの美容師は、法人よりも個人事業主として独立していることがうかがえます。

しかし、独立する場合は、美容室開店にともなう資金の準備が必要です。費用は、美容室を開業する場所によっても異なり、店舗の広さや設備でも大幅に変わってきます。開店にかかる費用は、一般的に1,000万〜2000万円とされていますが、どのような費用がかかるのかについて把握しておきましょう。

1.物件取得費用

テナントを借りて美容室を開店する場合にかかる費用です。そのため、自宅を店舗にする場合はかかりません。当然、賃料が高いほど費用はかかります。また、物件取得費用は、商業地と住宅地では差が出てくるでしょう。

【相場】
・敷金(保証金):家賃1〜12ヵ月分
・礼金:家賃1~2ヵ月分
・前家賃:家賃1ヵ月分
・仲介手数料:家賃1ヵ月分

2.内装工事費用

開業資金のうち、40〜50%程度を費やすのが内装工事費用です。内装工事には、天井や床、壁の造作などに加え、給排水や空調などの設備工事も含まれます。居抜きのテナントでの開店ならば、費用を抑えることもできますが、スケルトンなら内装工事費用は高額になる傾向です。また、内装のグレードや店舗の広さによっても費用は抑えることもできます。

【相場】
・スケルトン物件:坪単価25万〜50万円
・居抜き物件:坪単価12万〜20万円

【見積もり例】
・スケルトン内装工事
・坪単価40万円×8坪=320万円

3.美容機器・漆器・備品費用

スタイリングチェアやシャンプー台、スチーマーなど、施術に使用するものはグレードや設置数によって費用に差が出ます。電話機や掃除機、パソコンなど、施術に関係しないものも別途必要です。施術機器は、中古も多く販売されているため、費用を抑える選択技の一つになります。

【おもな機器の相場】
・スタイリングチェア:2万~20万円
・シャンプー台(シャンプーボウル+ユニット+シャンプーチェア):50万円~1,00万円
・鏡:1万~10万円
・エアーウェーブ:10万~20万円
・ドライヤー:3,000~2万円
・ワゴン:1万円~

4.材料費

パーマやカラー用品などの材料費と消耗品の購入も必要です。多くをそろえるのは、費用がかかりますが、シャンプーやカラー剤などは種類が多いほど、お客様の満足度が高いサービスを提供できます。培った経験やメニューに合わせてそろえておきましょう。

【おもな材料、消耗品シャンプー、トリートメント】
・カラー剤
・タオル
・イヤーキャップ
・クロス
・ケープ

5.広告宣伝費

美容室の開店は、オープン前の宣伝が重要です。以前担当してないお客様の来店が独立後の収入アップにつながります。どのような方法で宣伝するか費用のことも含めしっかり検討しましょう。

【おもな宣伝方法】
・美容室のウェブサイトの作成
・チラシの作成費
・広告掲載費
・チラシのポスティング

6.運転資金

顧客がいて、独立後も売上が見込める人も、運転資金の準備は必要です。運転資金とは、経営するために毎月かかる経費のことを指します。例えば、お客様がクレジットカード支払いをした場合、入金までタイムラグがあるため、売上は計上されても現金が入ってこないこともある点は押さえておきましょう。また、クレジットカード会社によっても入金日が違います。

美容師に限りませんが、上述したように美容院のオーナーが開業後苦労していることの第2位は、資金繰り・資金調達でした。勤務しているときは自分の給料がどれだけ入るかを気にしているだけでよかったですが、独立すると店に関わる多くのことに資金が必要だとわかるでしょう。

思いっきり仕事に打ち込むためにも、運転資金は少なくても6ヵ月〜1年分あると安心です。

【固定費例】
・家賃(テナントを借りる場合)
・水道光熱費
・通信費
・薬剤などの消耗品
・スタッフの給料(雇う場合)
・宣伝広告費
・オーナー生活費


独立後の年収はどう変わる?


独立後の年収はどう変わる?の写真

独立後に期待するのは、年収のアップです。期待通りの年収を目指すためにも、美容室開業の資金計画は重要です。独立するということは、個人事業主であっても経営者となるため、ずさんな計算では資金繰りが追いつかなくなります。見込みもれがないよう、収支を確認し自分の年収をアップさせましょう。


美容室経営にかかる経費と割合

オーナー収入の目安とされているのが、売上に対して20%程度です。当然、美容室の規模によって経費の割合は異なります。例えば、オーナー1人であれば、取り分は55%程度です。また、開店資金で融資を受けている場合は、オーナーの取り分から融資を支払う形となり、取り分は減ることになります。

【美容室の経費内訳】
・賃料:10%
テナントを借りている美容室にかかる費用。テナント代が高いと割合もアップする
・人件費:35~50%
スタッフを多く雇うと割合が高くなる
・材料費:10%
カラーリングやシャンプーなどの購入費用
・販促費:10%
ホットペッパービューティーなどに掲載するための費用
・そのほか:15%程度
水道光熱費や通信費、宣伝費、客単価のアップのために店頭に並べて販売するヘアケア商品を仕入れる費用


独立後の年収シミュレーション

厚生労働省が公表している「令和2年度衛生行政報告例」によると、2020年における全国の美容室数は25万7,890店と年々増加傾向です。都道府県別では、東京が最も多く、次いで大阪、愛知、神奈川となっています。

2019年度における美容師の数は、約54万2,000人です。また、厚生労働省の「平成27年度生活衛生関係営業 経営実態調査報告 美容業」によると、個人経営が88.7%と高く、会社経営は10.6%でした。資料から、少人数で経営している美容室が多いことがうかがえます。

平日の 1 施設あたりの1日平均客数は 5.5 人、休日は1日平均7.3人です。1ヵ月の営業日を22日(週休2日)と仮定すると、平均客数は平日で約121人、休日で約161人と想定されます。ただ、平日の一日平均客数が「0〜4 人」と回答した美容室が 56.7%と多い傾向です。

1日の平均客数が4人で営業日が22日(週休2日)と仮定すると、月の客数は約88人、営業日を26日(週休1日)の場合は約104人となります。独立後の年収は、来客数で大きく変わってくるため、来客見込数の把握は重要ポイントです。これらの数値と自分が設定する予定のメニュー料金を合わせて、あらかじめ年収をシミュレーションしてみましょう。


オーナー1人のみの場合

同調査によると、お客様1人あたりの平均料金は「5,681.3円」です。例えば、年商2,000万円なら利用料金を6,000円、営業日を月25日として計算すると、約11人の来客が必要になります。1日平均来客数が5.5〜7.3人のため、単価が高い縮毛矯正やパーマ、カラーリングなどのお客様が多ければ年商2,000万円も可能な数字でしょう。

算出条件一例
11人(客数)×6,000円(客単価)×25日(営業日数)×12ヵ月×55%=1,089万円
(オーナー見込み年収)


従業員を雇用する場合

従業員を雇っているオーナーの取り分は、売上から経費約80%を除いた約20%と想定されます。上記と同じ計算条件の場合、年収は約396万円です。美容師の平均年収約330万円と比べると、数字的にはアップしていますが、実感はわかないかもしれません。

もし、従業員を雇用して年収1,000万円を目指すなら、大幅に売上をアップする必要があり、目標年商は5,000万円以上の計算になります。1日平均来客数約28人が望まれ、必然的にスタイリストはオーナーを含めて3人以上、加えてアシスタントも必要となるでしょう。

算出条件一例
28人(客数)×6,000円(客単価)×25日(営業日数)×12月×20%=1,008万円
(オーナー見込み年収)


シェアサロンで独立した場合

昨今注目されている独立手段の「シェアサロン」。オーナーとして独立するよりも、フリーランス美容師となり、シェアサロンで活躍するほうが年収アップすると話題になっています。また、開店に関わる費用はほぼ無料で、開店資金が不要と低リスクです。

空いてる席をレンタルする「面貸し」とは異なります。すべての席がシェアできる美容室で、家賃や光熱費などを気にしなくてすむため、初期費用を抑えて低リスクで独立したい人の選択技の一つです。契約条件として設定される報酬は、シェアサロンによって異なりますが、売上の65〜80%程度が目安となります。

そのため、オーナー1人のみの55%とよりも多くの年収が見込めるでしょう。加えて、毎日のスケジュールは美容師の自由で、SNSを活用するなど集客方法も自由な点は魅力的です。シェアサロンは、大都市の商業地に立地しているところが多く、お客様が来店しやすいといったメリットもあります。

ただし、シェアサロンが大都市ではないエリアでは出店が少ない点はデメリットです。だれでもどこでも利用できるとは限りません。


まとめ

キャリアを積んだ美容師の選択肢の一つが独立です。開業資金に不安がある人は、居抜きや中古の備品を使用し、物件取得費用が安いテナントを探せば予算を抑えることができるでしょう。

開店後は、トレンドを押さえた施術の提供を心がけ、お客様の満足度をアップさせることができれば、リピーターが増え安定した集客も見込めます。美容師の独立の選択技は多岐にわたるため、年収アップの期待値も高いです。本記事を参考に独立を目指してみてはいかがでしょうか。

また、独立を支援するサロンに身を置いて独立を目指す手もあります。独立を目指す美容師へインタビューを行った記事がありますので、ぜひ参考にしてください。
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