美容師の国家試験には、筆記試験と実技試験があります。実技試験は、衛生実技審査と美容技術審査があり、美容技術審査は第一課題(カット=カッティング)と第二課題(セッティング)の2つです。自信を持って国家試験に挑むためにも、具体的な内容を押さえておきましょう。本記事では、美容師国家試験の実技試験の一つ、第一課題の「カット」にフォーカスして解説します。
美容師国家試験の内容
美容師国家試験は、春と秋で年2回開催されます。試験には筆記試験と実技試験があり、通常は筆記試験、実技試験の順でそれぞれ別の日に行われます。例年、前期は実技試験が2月上旬、筆記試験が3月第1日曜日で、後期は実技試験が8月上旬、筆記試験が9月第1日曜日です。
試験の詳細は5月上旬と11月上旬にホームページで公表されます。美容師国家試験を受ける人は、理容師美容師試験研修センターのホームページを確認しましょう。
美容師実技試験の特徴として、10年程度で課題内容が変更される点があります。例えば、以前はローラーカールセッティングと呼ばれる試験課題がありましたが、2022年1月現在はありません。逆に、以前カットは実技試験にはなく、2001年から加わりました。
しかも、以前のカット課題は「グラデーションボブスタイル」で現在の「レイヤースタイル」ではありませんでした。ワインディングも時代とともに変わっています。以前は、基本的な巻き方のオールパーパス(60本以上)でしたが、現在はCライン(50本以上55本以内)スタイルです。
時代とともに、求められている基礎的技術が変化していることがわかります。
実技試験と筆記試験がある美容師国家試験
美容師国家試験は、美容師としての「知識」と「技術」が備わっているかを審査します。技術の審査がされるのが実技試験です。モデルウィッグを指定されたとおりに、カットやセッティングができるかを審査されます。
美容師としての知識が問われるのが、筆記試験です。美容師に必要な衛生面や法律、文化など幅広い分野の問題が出題されます。筆記試験の問題は、7課目・5分野にわたります。
- 関係法規・制度
- 衛生管理
- 保健
- 香粧品化学
- 文化論
- 理容技術理論(美容技術理論)
- 運営管理
- 関係法規・制度および運営管理:10問
- 衛生管理:15問
- 保健:10問
- 香粧品化学:5問
- 文化論および理(美)容技術理論:15問
実技試験の課題はカットとセッティング
実技試験は、「美容技術審査」と「衛生実技審査」の2つです。美容技術審査は、第一課題「カット」と第二課題「セッティング」の2つがあり、技術力を確認されます。第一課題のカットは、毎年同じですが、第二課題は「ワインディング」と「オールウェーブセッティング」の2種類あり、何が課題となるかは毎回発表される傾向です。課題の内容は美容専門学校でも周知されると思いますが、理容師美容師試験研修センターの公式サイトでも確認ができるため、いち早く知りたい人はチェックしましょう。カットとワインディング、オールウェーブセッティングの3つは、美容技術の基礎となるため、美容専門学校では鍛錬される内容です。
- ワインディング/パーマの基本技術。ロットを20分以内に巻く
- オールウェーブセッティング/ウェーブとカールを25分以内に仕上げる
※カット試験同様、作業を行なう前に使用する用具類も審査。作業終了後に作品の仕上がり度を観察し、基礎的技術が評価される。
注意したいのが「衛生実技審査」です。使用する用具類などの審査があり、カット試験中に、たくさんの項目がチェックされています。カットの技術が完璧でも、衛生実技審査の項目でマイナスポイントを受けては残念な結果となりかねません。
審査項目は特別な技術として練習をするものではなく、衛生面に関する常識的な内容です。事前に準備できるものが多いため、入念に確認しておきましょう。
- モデルウィッグに対する禁止行為(30 点)
- 頭髪の作業適性および衛生状態(10点)
- 手指の清潔保持(10点)
- 爪の清潔保持(10点)
- 作業衣の着用状態(30 点)
- 衣服の作業適性(10点)
- マスクの着用(30点)
- 履物の作業適性(10点)
- 装飾品等の装着(10点)
- 手指消毒(30点)
- 衛生用具類の有無(30点)
- 用具類の表示(20点)
- 用具類の衛生状態(20点)
- 用具類の収納方法(30点)
- 個人特定情報の表示(30点)
- 落下用具類の消毒・使用許可(30点)
- モデルウィッグの取扱い(20点)
- 出血応急処置(30点)
- 用具類の貸借・追加取り出し(30点)
- 迷惑行為(20点)
- 衛生面に配慮した作業姿勢(10点)
- 作業の指示違反(30点)
- 汚物入への収納状況(20点)
- 作業終了後の用具類収納状況(30点)
- 出血事故の処理状況(30点)
<準備時間前に行なわれる審査>
<準備時間中に行なわれる審査>
<用具類の審査>
<課題作成作業時間中に実施する審査>
<作業終了後に実施する審査>
実技試験第一課題のカット
第一課題のカットを詳しく確認していきましょう。カットは、例年同じで、モデルウィッグを基本的なレイヤースタイルに仕上げます。カットする長さは決まっていて、前髪は6センチメートル、もみあげとネープは10センチメートルです。
注目したいのが評価の基準。個人の美的センスが試されるものではなく、あくまでも養成課程修了者として備えるべき美容の基礎的技術の評価です。日頃から、美容師専門学校で学び練習してきた技術が発揮できれば、合格が期待できます。
試験の流れ
カットの試験は、20分間の作業部分に気持ちが入り込みがちですが、忘れてはいけないのが用具類等の規格適合状況のチェックです。審査は、作業を行なう前から始まっているため、気を付けましょう。
モデルウイッグの審査
↓
カットの準備:7分
↓
カットの試験:20分
↓
モデルウィッグの顔面ふき取り:1分
↓
作品の完成度の審査
カットの合格基準
次に、気になるのがカットの合格基準です。試験は、3つのパートに分けられ、8つのポイントがチェックされます。採点は、減点方式でカットの合格ラインは減点が「30 点以下」です。ただし、衛生上の取扱試験と第二課題も合格しなければ、実技試験の合格にはなりません。
減点項目は、実施回によって異なる場合があるため、理容師美容師試験研修センターのホームページにある実施要項を日頃から確認したほうがよいでしょう。
- 衛生上の取扱試験:減点20点以下
- 第一課題カット:減点30点以下
- 第二課題セッティング:減点30点以下
準備時間前の審査
準備時間前には、モデルウィッグに関する2つの審査が行なわれます。それぞれに減点が50点で、1つでもあれば不合格です。しかし、基本の内容となり、自身で事前のチェックができるため、減点は未然に防ぐことができます。
1.モデルウィッグ規格適合状況(50点)
規定の標準仕様適合モデルウィッグが使用されているか、また標準仕様適合シールが添付されているか確認されます。
2.モデルウィッグに対する禁止事項チェック(50点)
モデルウィッグに事前処理作業がされてないか確認されます
■NG例
- 作業の目安となるマーキング
- 毛髪が濡れている
- 化粧品等の塗布
- 毛髪の一部がカット
実技試験で使用可能なモデルウィッグは、理容師美容師試験研修センターのホームページに掲載されています。事前に確認しましょう。
準備時間中の審査
7分間の準備中に行なわれる審査は1つです。自分の使いやすい位置に道具を配置し、7分の間にすべての準備を終わらせます。減点ポイントは、モデルウィッグに関する2つの審査と同じく50点です。
3.カット技術用用具類の有無および規格(50点)
カットで使用する用具の品目や数量、規格適合状況が確認されます。
■減点対象ポイント
- 用具類の不足はありませんか?
- 用具類に規格不適合のものはありませんか?
- 使用不可の用具類はありませんか?
作業終了後の審査
本題の技術力が問われる審査です。審査項目が多く、5つのポイントで完成度が確認されます。
4.仕上がり状態
未完成部分がないか、仕上がりの状態が審査されます。
■減点対象ポイント
- 明白な切り残し(50点)
- 毛髪や水滴が付着(10点)
- ダックカールクリップの除去忘れ(10点)
5.毛髪の長さ(50点)
フロントやもみあげ、ネープの長さが許容範囲内に仕上がっているかの確認です。
■減点対象ポイント
- フロントの長さ:6センチメートルより2センチメートル以上過不足
- もみあげの長さ:10センチメートルより2センチメートル以上過不足
- ネープの長さ:10センチメートルより2センチメートル以上過不足
6.ヘムラインのつながり(20点)
イヤートゥイヤーで分けた顔面側をフロント、また後頭部側をネープとして、いずれかの部分に2センチメートル以上の段差や飛び出た長い毛髪があると減点対象となります。ヘムラインは左右にあるので、それぞれに段差があれば、2ヵ所で減点です。
7.カットラインのつながり
カットラインから出た長い毛髪がないか確認されます。
■減点対象ポイント
- フロントからネープ:2センチメートル以上の段差または飛び出た長い毛髪(30点)
- トップからサイド:2センチメートル以上の段差または飛び出た長い毛髪(20点)
- トップからバックサイド:2センチメートル以上の段差または飛び出た長い毛髪(20点)
8.左右シンメトリー
サイドとバックサイドが左右対称になっているか審査されます。
■マイナスポイント
- サイドが左右非対称(20点)
- バックサイドが左右非対称(20点)
まとめ
本記事で紹介した、試験の流れや審査のポイントを熟知していれば、美容師国家試験に合格することが期待できます。イレギュラーな審査が行なわれることもないため、緊張感によるミスを防げるかもしれません。また、審査ポイントを把握し何度か確認すると、自分の弱点がわかる可能性もあります。
自分の弱点を知ることは、カット試験の対策を練ることができるので、合格への近道です。カットの試験内容を知ると一見大変に感じるかもしれません。しかし、各美容師専門学校では本番に焦点を合わせてカリキュラムが組まれているため、学校の指導に沿って進めていけば技術を身につけることはできます。
模擬試験も行なわれるため、自信を持って試験に挑むことが大切です。美容師専門学校で身につけた技術や知識を活かして、美容師国家試験の「カット試験」に臨みましょう。
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