美容師の仕事は、給料が安いといわれています。しかし、実際にどのくらいの給料をもらっているのか知らない人も多いのではないでしょうか。この記事では、美容師の給料事情や給料が安い理由などを解説しつつ、アシスタントやスタイリスト、店長などのランクごとの給料の目安を紹介します。
美容師の給料事情
美容師は、国家資格の一つですが、それに見合う給料を得られているのでしょうか。他の職業の平均給与との差など、まずは美容師の給料事情を紹介します。
理容・美容師の平均月収は約27万円
日本には、さまざまな国家資格があり、美容師も国家資格の一つです。厚生労働省の「令和2年度賃金構造基本統計調査」によると、理容・美容師の平均月収は約26万9,400円でした。ボーナスは約6万5,500円のため、年収は約330万円となります。
国家資格のなかでも、難関国家資格といわれる医師や公認会計士、弁護士などの職業では、年収が1,000万円を超えることも珍しくありません。しかし、美容師は国家資格取得者のなかでは低い傾向にあります。
美容師は日本全体の平均給与を大きく下回る
「令和2年度の賃金構造基本統計調査(厚生労働省)」によると、2020年における美容師・理容師の時給の基準値は938円です。基準値に能力・経験調整指数を乗じた値で見た場合、10年のキャリアで1,417円ですが、これは全産業計での10年の平均値1,942円を踏まえるとかなりの差といっていいでしょう。
時給の差が500円ほどですので、1日8時間の週5日勤務で年収に換算すると、年収で約100万円近くの開きがあることになります。
また、国税庁が公表している「令和2年度民間給与実態統計調査」によると、2020年における給与所得者の平均給与は、約433万円でした。理容・美容師の年収は、上述したように約330万円となるため、大きく下回っていることがわかります。
ランクによって給与に格差
現在、多くの美容室では、アシスタントやスタイリスト、トップスタイリストなどのランク分けがなされており、ランクに応じた給与体系が取り入れられています。ランクによって固定給(基本給)が定められており、一部歩合制の美容室ではここに歩合給が加わるのが一般的です。
なかには、完全歩合制の美容室もありますが、クラスによって給与に大きな差がある点では変わりません。美容室に勤務して2〜3年はアシスタントとして技術を磨きますが、アシスタント時代にもらえる給与の低さが原因で、生活が厳しくなり美容師になるのをあきらめる人も少なくありません。
参考:厚生労働省「令和2年度賃金構造基本統計調査」 /国税庁「令和2年度民間給与実態統計調査」
美容師の給料が安い理由
トップスタイリストとして活躍する人がマスコミに取り上げられ、その華やかな交友関係や生活ぶりが話題になることもあります。しかし、実際の美容師の生活は華やかな人たちばかりではありません。先述したように、平均給与は一般企業と比較してかなりの差があり、美容師として勤務したての場合は生活するのがやっとの人もいます。
では、なぜ美容師の給与は安いのでしょうか。ここでは、美容師の給与が安い理由を紐解きます。
歩合制の美容室が多い
多くの美容室の給与システムに取り入れられているのが、歩合制。これは、人気のスタイリストになり、多くの指名を集めれば集めただけ、給与が上乗せされる仕組みです。固定給に歩合給を合わせたもので、売上の15〜20%が美容師の手取りになるのが一般的ですが、店舗によって歩合制の割合は異なります。
完全歩合制の美容室なら、手取りは売上の30%ほどと考えればいいでしょう。歩合制の割合が高いほど、自分の技術や知識、コミュニケーション能力がそのまま給与にはねかえるわけですが、アシスタントの場合は、そのほとんどが固定給のみです。美容室ごとに設定されている施術試験に合格し、スタイリストに昇格して初めて、歩合給が加算される店舗が多くなっています。
ある程度の年齢での転職が多い
先に、美容師・理容師を10年勤めた際の時給は1,417円であると紹介しました。1日8時間、週5日勤務の場合、月収は24万円程度です。
結婚して子どもを持つ男性美容師の場合、生活費を捻出するには少々無理のある金額です。生活の苦しさから、ある程度の技術を持った男性美容師は美容業界を去っていきます。また、女性美容師の場合は、出産を機に、育児休暇をとることも多くなる傾向にあります。
そのため、固定給のみのアシスタントや若い女性美容師の割合が多くなり、平均給与が低くとどまっていると考えられています。
美容室の固定費・宣伝費が大きい
美容室は、サービス業です。売上が伸びる月もあれば、さほど伸びず下がる月もあります。美容室を維持する以上、家賃や水道光熱費、美容用具のリース代などの固定費や、美容室の存在を知ってもらうための広告宣伝費も発生するでしょう。
売上のなかからこれらを引いた金額が収益となるわけですが、売上が伸び悩んだときの収益率は大きく下がってしまいます。収益率が下がったときにも、家賃などの固定費は変わらないため、人件費がカットされる傾向にあります。固定費が、美容師の給与を圧迫しているといっていいでしょう。
ランクごとの給料事情
多くの美容室に取り入れられているランク制で、どのくらい給与に差が出ているのでしょうか。ここでは、アシスタントやジュニアスタイリスト、スタイリスト、トップスタイリスト、店長・オーナーなどのランクごとに、どのくらい給与をもらえる見込みがあるのかを紹介します。
アシスタント
スタイリストとして最初から最後まで施術に携われるようになるまでの期間を、アシスタントと呼びます。正式に美容師デビューをしていないため、歩合制の美容室でも、アシスタントは固定給のみです。おもに、任されるのは、シャンプーや受付、スタイリストのサポート、掃除、雑務などで、給与は低めとなります。
地域によっても異なりますが、アシスタントの給与は平均で、13万〜18万円前後です。都心と地方とで比べると、都心の有名サロンほどアシスタントの給与は低いとされています。都心で一人暮らしをしながらアシスタントの給与で食べていくには、生活をかなり切り詰めることが必要です。
ジュニアスタイリスト
ジュニアスタイリストは、アシスタントという見習い期間を終え、美容師になりたてのスタイリストを指す言葉です。美容室によっては、ジュニアスタイリストのランクを設けていないこともあります。ジュニアスタイリストになると、アシスタントより給与は平均3万円ほど高くなる傾向で、目安は16万〜20万円です。アシスタント時代と異なり、カットなども任せてもらえますが、指名料はつかないケースが多いといえます。
スタイリスト
すべてのお客さまの施術を行なえるようになると、スタイリストと呼ばれ歩合給がつくため、平均給与がさらに上がります。一人前の美容師として認められ、期待できる給与は20万〜30万円ほどです。技術を磨けば磨くほど、給与として反映されるため、モチベーションも一気にアップします。生活にもある程度の余裕が生まれ、やりがいを感じることが多くなるでしょう。
トップスタイリスト
スタイリストのなかで、人気・実力ともに認められた人がトップスタイリスト。トップスタイリストとして施術すると、ヘアカット代も上乗せされるため、歩合給はどんどんアップします。トップスタイリストの給与は、30万〜50万円ほどです。美容室の知名度や活躍ぶりにもよりますが、トップスタイリストになると、月収が50万円を超えることも少なくありません。
トップスタイリストになると、雇われの身から独立・開業し、自分で店舗を構える夢が現実味を帯びてきます。
経営者・オーナー
美容師としてのキャリアの到達点が、経営者・オーナーになることです。1店舗から始めて、何店舗も経営するようになれば、年収2,000万円を超えることも夢ではありません。そのためにはもちろん、経営のスキルを磨く必要もあります。トップスタイリストとして腕を磨きつつ、経営の勉強も続けていきましょう。
美容師の給料を上げるには
決して給与が高いとはいえない美容師ですが、自分の努力次第で、ある程度給与を上げることができます。ここでは、美容師の給与を上げるため、ぜひ実践してほしい3つの方法を挙げ、解説しましょう。
歩合の良いサロンに勤める
美容師の年収は、ランクによって大きく異なりますが、どの美容室に勤務するかでも変わります。歩合制の美容室の場合、美容室の売上から何%が歩合給としてもらえる設定か、料金設定はどのようになっているかで、給与が変動します。
美容室のランクが上がれば上がるほど給与が上がるのはもちろんですが、歩合給の割合が高く、美容室の料金設定が高く設定されているほど、年収がアップする仕組みになっています。美容師として勤め始める際は、固定給でいくらもらえるのかに加えて、歩合給の割合なども確認しておきましょう。
役職を目指す
歩合給の高い美容室に勤務しても、アシスタントやジュニアスタイリストのままでは昇給は難しいでしょう。美容師は、働き始めた当初はかなり給与が低いとはいえ、ランクが上がることで数万単位の昇給が見込める職業です。年収を上げたいなら、まずはランクを上げ、役職に就くことを目指しましょう。
店長やオーナーなどの役職者は、年収600万円ほどが目安です。1,000万〜2,000万円ほどの年収を手にしているトップスタイリスト・オーナーも少なくありません。実力をつけ、知識や技術を磨き続ければ、その努力が報われる世界でもあります。店長やオーナーなど、責任のある立場になれば、会社員よりずっと稼ぐことが期待できるでしょう。
美容師のなかでも収入の良い職種を目指す
美容師としての給与に満足できない場合は、ヘアメイク事務所などに所属するヘアメイクアーティストとして働く方法もあります。もちろん、独立したフリーのヘアメイクアーティストになることも可能です。モデルやタレントなどから指名される売れっ子ヘアメイクアーティストになれば、年収1,000万円ほどが望めます。ただし、フリーのヘアメイクアーティストとして働く場合は、収入の不安定さも覚悟しなければなりません。
人気商売のため、指名がない限り、収入が低いケースも想定されます。ある程度のリスクを負っても夢をあきらめたくない人におすすめです。
まとめ
幼い頃から美容師になるのが夢だったけれど、年収が低いと聞いてためらっているという人もいるかもしれません。実際に、美容師になりたてのアシスタント時代は、生活するのもひと苦労な給与しかもらえない可能性が高く、アシスタントからスタイリストになる前に辞めてしまうケースが多数あります。
しかし、アシスタントからスタイリスト、トップスタイリスト、店長・オーナーとキャリアアップするにつれて、給与が上がっていくのが美容師の給与体系です。オーナーとなれば、年収もぐっとアップします。自分の努力やがんばりが給与に反映される業界といってもいいでしょう。
夢を叶えたいなら、生活の苦しいなかでもあきらめず、美容師としての技術を磨き、知識を身につけることに専念するのがおすすめです。
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