コロナ禍で看護師不足が取り沙汰される2021年。
最近は看護学以外の専攻で大学を卒業した後に看護師を目指したり、社会人として働いた後に看護師を目指したりする人が増えています。
厚生労働省では社会人経験者の受け入れのための指針を2015年に作成し、社会人経験者の看護師の養成に力を入れています。
この記事を最後まで読むことで、社会人から看護師になるために必要なことが分かるだけでなく、疑問や不安の解消もできるようになっています。
今からでも遅くありません!看護師への新しい一歩を踏み出してみませんか?
参考:厚生労働省「看護師養成所における社会人経験者の受け入れ準備・支援のための指針」
看護師は「いつでも」「誰でも」目指せる
看護学校の入学試験や国家試験の受験には年齢制限はありません。いつでも、誰でも看護師を目指すことができます。中には主婦業がひと段落してから、看護学校に通い看護師になった人もいます。
一般社団法人 日本看護学校協議会の調査(2013)によると、看護師養成所における社会人経験者の割合は 23.7% となっています。これは看護学校の生徒のうち4人に1人程度が社会人経験者ということですから、想像以上の数なのではないでしょうか?
つまり、「入学したら社会人経験者は自分1人しかいない」ということはほとんどありませんので、安心してください。
ここからは社会人経験者が看護師になる方法、看護師になるまでに必要な年数、学費について解説していきます。
社会人経験者が看護師になる方法
看護師になるためには専門学校や看護短大、看護大学を卒業し、国家試験に合格する必要があり、そのルートは社会人でも同様です。
しかし、看護学校の中には社会人の受験ハードルを低くするために、「社会人入試制度」を設けている学校があります。この制度は一般受験と比較して、社会人経験者しか受験できない、受験科目が少ないなどの特徴があります。
社会人入試では「看護師になりたい思い」や「社会人としての経験」が大切です。なぜなら社会人入試は合格倍率が高い傾向にあり、その中で合格者を選ぶとなると熱心に学んでくれる人や看護師として活躍してくれそうな人に入学してほしい、というのが学校の気持ちだからです。
ただし、社会人入試の受験資格や試験内容は学校によって異なるため、学校を選ぶ際には注意が必要です。
看護師なるには何年かかる?
看護師になるためには専門学校・短期大学は3年、看護大学は4年間学校に通う必要があります。
しかし、大学卒業資格を持っている場合、3年次学士編入制度を導入している看護大学では、最短2年間で看護師を目指すことができます。
大学を卒業していない方や、看護大学への入学を希望しない方の場合、専門学校または短期大学への進学が最も早く看護師になれるルートです。
看護師になるには大学と専門学校どちらがいいのか知りたい場合には、以下の記事をご覧ください。
看護師になるには大学と専門学校どっちに進学するべき?それぞれの違いやメリットを解説!
いくらくらいお金がかかるの?気になる学費を解説
学費の総額は学校によってそれぞれですが、一般的に卒業までにかかる学費の目安は以下のとおりです。
- 国公立大学:250万円
- 私立大学:450万~700万円
- 専門学校:100~300万円
専門学校は大学よりも1年短く、病院や都道府県・市区町村が運営する学校が多いため、学費が抑えられる傾向にあります。大学では国公立と私立でおよそ3倍もの差があるため、学校選びの際には注意が必要です。
看護師になるための費用に関しては、こちらの記事で詳しく解説しているので参考にしてみてください。
看護師になるための費用はどのくらい?必要な費用と利用できる制度を紹介!
看護師以外の看護の仕事
「看護の仕事をしたいけど、期間的にも費用的にももう少し負担なく始めてみたい」。そんな方もいらっしゃるのではないでしょうか?
ここでは看護師以外の看護の仕事について解説していきます。
働きながら看護師になれる「准看護師」ってなに?
患者さんからは一見、看護師と准看護師の違いは分からないことが多いでしょう。しかし、実際この2つには明確な違いがあるのです。
看護師と准看護士の違い
保健師助産師看護師法第六条で准看護師は、「医師や看護師から指示をうけ、診療の補助や患者さんの療養上の世話を行う」と定義されています。
業務内容は看護師と大きく変わりませんが、看護師は自ら判断し医療行為やケアを行うことができるのに対し、准看護師は医師・看護師の指示がなければ、医療行為を行うことができません。
准看護士になるには?
准看護師は最短2年間、働きながらであれば3年間の通学で准看護師受験資格を得ることができます。
しかし、公益財団法人日本看護協会は将来的に「准看護師養成の停止」を目指しており、看護師養成所への転換を促進しています。そのような動きもあり、年々准看護師学校の入学生や准看護師学校は年々減少します。
将来的には准看護師学校は無くなってしまうことも考えられるため、進学を希望するのであれば注意が必要です。
准看護士の給料
准看護師は看護師よりも1~2割程度、給与が低い傾向があります。令和2年賃金構造基本統計調査によると看護師の給与は309,100円に対し、准看護師の給与は269,000円でした。
また、大学病院や高度・先進医療を担う病院では、准看護師の採用を行っていない病院も多く、就職先が限られてしまいます。
そのため、現在では准看護師の資格を取ったのち、正看護師を目指すのが一般的です。その場合には累計5年間学校に通う必要があります。
仕事内容、将来性、給与面を考えると、准看護師を目指すよりも初めから看護師を目指すことをおすすめします。
参考:日本看護師協会「准看護師制度について」
資格のいらない看護助手から看護師を目指す
看護助手とは病院で看護師や患者のサポートをする仕事です。看護助手になるための資格は不要で、誰でもなることができます。
看護助手は以下のような方におすすめです。
- 看護師の仕事が自分にできるか心配な方
- 実際の看護師がどのような仕事をするのか気になる方
- 看護学校へ入学前に医療業界を知っておきたい方
- 資格なしで医療の現場で働きたい方
まずは看護助手を経験して「看護師に本当になりたいか?」「看護の仕事が向いていそうか?」を確認してから看護師の学校に進学するのも良いでしょう。
社会人経験者が看護師になるメリット3選
いつでも誰でも看護師になれるとは言っても、いざ学校に行ったり、国家試験を受けたりしなければならないとなると「それを上回るメリットがあるのか?」と迷う方もいるのではないでしょうか?
ここからは、社会人経験者が看護師になるメリットを、ポイントを3つに絞って解説していきます。
高収入
「看護師の給料は高い」という話を一度は耳にしたことがありませんか?実際に社会人から看護師に転職する理由として、「高収入」があげられるくらい看護師の給料は高いと評判です。
実際に、看護師と同年代の女性の平均の給与はどれくらい差があるのでしょうか。
年齢区分 | 看護師の 平均給与 |
女性全体の 平均給与 |
---|---|---|
20~24歳 | 25万円 | 20万円 |
25~29歳 | 28万円 | 23万円 |
30~34歳 | 29万円 | 25万円 |
35~39歳 | 30万円 | 26万円 |
上記のデータには時間外勤務手当や深夜勤務手当などの各種手当が含まれていません。看護師には夜勤や残業があることも少なくないため、実際にはもっと大きな差があると考えることもできるでしょう。
これらの差は毎月およそ5万円、年間では60万円にもなります。データからも看護師は高収入であることが明らかです。
看護師の給与に関する情報は以下の記事からもご確認いただけます。
看護師の年収は高い?平均年収と月給・ボーナス・手当の内訳を解説!
看護師1年目の初任給・手取り・ボーナスはいくらもらえる?学歴や病院によって年収はどれくらい違う?
再就職・転職しやすい
ニュースなどでも報道されているとおり、現在全国で看護師が不足しています。少子高齢化・医療の高度化・潜在看護師の増加・新型コロナウイルス感染症と理由はさまざまですが、「国内どこに行っても仕事にはこまらない」といわれるくらいに、看護師の求人はたくさんあります。
求人の多さは有効求人倍率でも明らかです。
パートタイムを除く全職種平均の有効求人倍率を見てみると1.06倍となっています。一方、保健師・看護師・助産師の有効求人倍率は2.25倍です。年度末など、看護師の退職が近くなる時期では有効求人倍率が3倍近くになることもあります。
有効求人倍率からも看護師は他業種・職種と比べて、再就職や転職がしやすいことが分かるでしょう。
参考:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和3年6月分)について」
社会人経験を活かせる
看護師になると、これまでの社会人経験が役に立たないと思っていませんか?
実は、社会人経験が役立つスキルがあります。それは、一般常識・パソコンスキル・コミュニケーション能力です。
一般常識は、どのような仕事をするにしても備わっているに越したことはありません。学生時代にはレポートの作成が多く、働き始めると電子カルテの入力作業があるため、ある程度のパソコンスキルがあるとよいでしょう。
さらに、看護師はさまざまな患者さんや関係者と接する機会がある仕事ですから、コミュニケーション能力は必須のスキルです。
ほかにもさまざまな社会人経験を看護師の仕事で活かすことができるでしょう。社会人から看護師になることを不安に思わなくても、絶対に大丈夫です。
社会人経験者が看護師を目指すときの注意点
社会人経験者が看護師を目指すにはメリットばかりではありません。ここからは、注意しておきたいことを3つのポイントに絞って解説していきます。
看護学校の入学試験対策が重要
看護学校の入学試験には筆記試験と面接試験があることが多いです。
面接試験はほとんどの看護学校で行われているため、面接の対策はしっかりおこないましょう。
筆記試験に関して、大学への進学を希望するのであればセンター試験や大学ごとに個別に行われる試験への対策が必要です。
専門学校や短期大学の試験科目は、国語・数学・英語・小論文などであることが多く、概ね大学入試よりも難易度はやさしくなっています。
しかし、先述した社会人入試では、試験内容が小論文と面接のみであることが多いです。一般入試で受験する学生達とは異なる試験を行うので、試験科目の確認と希望する学校に合わせた対策が重要です。
学生時代は収入が激減
学生になると社会人よりも収入が激減します。
看護学生は普段から課題や自己学習も多いので、長時間アルバイトをすることが難しいでしょう。さらに、実際に患者さんのもとで看護を行う"実習期間"はレポート作成や自己学習に時間を割くため、アルバイトとの両立は難しくなります。
実習期間は、在学期間中のうち半年~1年程度。一時的に収入が途絶えても大丈夫なように、学費や生活費のやりくりには注意しましょう。
実習は体力勝負
看護学生の実習は、通常学校で授業を受けているのと同様に7~8時間、週5日で行われます。また、実習期間が長い学校ではそれが1年程度続きます。
実習では患者さんのもとでケアやコミュニケーションを行うだけでなく、レポートを毎日作成する必要があります。当日の振り返り、患者さんの病態の勉強、看護ケア計画、翌日の行動計画など作成する記録が山のようにあり、睡眠時間が削られる日々が続きます。
年齢を重ねると、徹夜や睡眠不足が翌日の実習にも影響しやすくなるでしょう。しかし、社会人経験を活かして、要領よくリサーチやレポート作成ができれば、格段に効率よく作業を進めることができます。
体力面では10代20代の若者には勝てませんが、社会人経験を活かして乗り切っていきたいですね。まとめ
社会人経験者が看護師になるケースが増え、現在は数年前よりも格段に受け入れ体制も整い、安心して看護師を目指せる環境が整っています。
社会人経験があることは、看護学校への入学や、看護師として働くうえでデメリットにはなりません。むしろメリットの方が大きいとも考えられます。
社会人経験や知識を活かして、さまざまな視点や広い視野を持った看護を提供できると期待が高まっています。
看護師を目指そうか迷っている社会人のあなた、動き出すなら今です!
ライター 小田あかり
大学看護学部卒業後、小児科・腎臓内科・循環器の最前線で勤務。現在も看護師として働きながら、ライターとしても精力的に活動中。保健師、呼吸療法認定士、糖尿病療養指導士の資格も持つ。
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