看護師に人気の診療科の一つに「小児科」があります。小児科は子どもとその保護者が対象の診療科です。小児科では、医療・看護・保育などの視点から、療養上の世話と成長発達のサポートが求められます。
小児科の看護師にはどのような特徴があるのでしょうか。小児科看護師が思わず「あるある」といってしまうエピソードを元小児科看護師が解説します。
小児科ってどんな診療科?元小児科看護師が解説
小児科は、新生児から成人までの子どもを主な対象とした診療科です。病気によっては、小児科の対象年齢を超えても一般診療科に移行せずに治療を継続する患者さんもいます。
看護の対象は子どもとその保護者や養育者だけでなく、きょうだい児も含みます。
大人と異なり、小児科は診療科が細かく分かれていない医療機関がほとんどで、受診する子どもの病気は、外科・内科を問いません。さらに急性期・慢性期・終末期まで「子どもの病気すべて」を担当します。
- 子どもたちが元気になっていく
- 成長・発達をみられる
- 子どもがかわいい、癒される
小児科の看護師には、このような他の診療科にはないやりがいがあります。
小児科の看護師あるある
小児科で働く看護師は、どのようなあるあるがあるのでしょうか。元小児科看護師の筆者が実体験をもとに、小児科看護師のあるあるを解説します。
子ども向けのキャラクターに詳しくなる
子供向けキャラクターは、毎年新しいものが増えます。戦隊物のテレビシリーズ、女子向けキャラクターなど、その種類は豊富です。
筆者も、ケアをしながら幼児向け番組を見たり、子どもたちに教えて貰ったりするうちに、どんどん子ども向けキャラクターに詳しくなってしまいました。いつの間にか、子ども向けアニメの主題歌・挿入歌が歌えるくらいになっていたほどです。
キャラクターグッズを身につけがち
小児科あるあるといえば「キャラクターグッズを身につける」だと思います。医師も看護師もベテランから若手まで、一人ひとりがお気に入りのキャラクターグッズをネームプレートや聴診器につけていました。
キャラクターグッズは、子どもの不安や緊張をやわらげたり、興味・関心を引いたりするためにとても重要なアイテムです。筆者もボールペンやメモ帳、電卓、アラーム、ネームプレート......すべて「くまのキャラクターグッズ」で揃えていましたよ。
絵が上手になる
小児科では、治療に対する子どもたちの恐怖心やストレスを軽減するために、点滴や経鼻胃管の固定テープや点滴バッグにかわいいイラストを書く機会があります。担当する患者ごとにイラストを描くため、年齢や性別、季節に合わせたイラストが描けると役立ちます。
固定テープ用のイラストは、500円玉くらいの大きさにカットした医療用テープに描くため、技術だけでなく根気も必要です。
筆者も入職当時はイラストを書いた経験がありませんでした。しかし、子どもたちの喜ぶ顔が見たいと思い、休憩中に固定テープのイラストを練習していました。年数が経つと、リクエストされたイラストを、目の前で描けるくらいに上達していました。
子育てに役立つスキルが身につく
新生児や乳幼児の担当をする日もあり、授乳やおむつ交換、沐浴や寝かしつけなどの子育てに役立つスキルが自然と身につきます。
筆者も夜勤中には寝付けない子どもをおんぶして、あやしながら記録をしていました。子育てスキルが身につくのは、小児科の看護師ならではのあるあるだと思います。
子どもの成長・発達が楽しみ
小児科では、長期間に渡って通院や入院をする子どもたちもいます。例えば小児がんの治療は年単位に及ぶことも。また慢性疾患を持つ子どものなかには、入退院を繰り返すケースも少なくありません。
小児科に通い続けるうちに、赤ちゃんだった子が歩けるようになり、話せるようになり、小学生になり、と成長を見守れるのも、小児科看護師の楽しみの一つです。
中には、入院中に受験勉強に励み夢を叶える子どももいます。一人ひとりの成長・発達を楽しみにできるのも、小児科看護師のあるあるでしょう。
小児科の職場あるある
小児科は「子どもの治療を行う」という特性上、競争率や現場の雰囲気も他の診療科とは異なります。
小児科配属の競争率は高い
小児科は大人の診療科と違い、呼吸器・循環器・整形外科......と細かく分かれていません。分かれていても、小児科と小児外科の2つという医療機関がほとんどです。そのため、他の診療科に比べて必要な看護師の数は少なくなります。そういった事情から配属人数が少ないため、成人の診療科や病棟と比べると競争率が高くなってしまうのです。
また、新卒で配属されなかった看護師のなかには、小児科に配置転換を希望するケースもあります。それも小児科の配属される枠が埋まる一因となり、新卒の小児科配属の競争率は更に高くなります。
また、総合病院だけでなく小児科クリニックも数が少ないため、競争率が高くなる傾向があります。
季節の行事を大切にする
どうしても、季節を感じにくい入院生活。小児科では子どもの成長発達のためにも、季節の行事を重要視します。お正月やハロウィン・クリスマスだけでなく、節分、ひな祭りや端午の節句、夏祭りや運動会も行っていました。
保育士がいる医療機関では保育士が、保育士がいない場合は看護師が、それぞれ主体となってイベントを計画・運営します。
筆者が働いていた小児科は保育士がいなかったため、看護師が主体となってイベントを開催していました。夜勤中や仕事終わりに、みんなで飾り付けをしたのも良い思い出です。
小児科看護師の仕事あるある
看護の対象が「子ども」だと、業務にはどのような特徴が現れるのでしょうか?筆者の経験をもとにした「小児科看護師の仕事あるある」を解説します。
幅広い病気や治療の知識が身につく
筆者が勤務していた総合病院は、新生児〜20歳頃までの患者さんが入院していました。対象疾患は、感染症から小児がん、心臓病、外傷、時には国内で数例しかいない病気の子どもを担当する日もありました。
ある日は盲腸やヘルニアなど外科手術後の患者さんを担当し、別の日には小児がん患者の化学療法を担当、さらに次の日は新生児や乳幼児の担当......。
毎日さまざまな年齢・病気の子どもを担当するため、幅広い病気や治療の知識が身につきました。
処置や検査、ケアに時間がかかる
小児科では成人を対象とした処置と違い、看護師のタイムマネジメントどおりに処置やケアが進むことは多くはありません。子どもたちは泣いたり、暴れたり、ときには逃げ出してしまうこともあります。
「いまから○○の検査です」と成人は一言で済みますが、子どもの場合は説明だけで数十分かかることも。そのため、処置や検査を行う際には、余裕を持ったタイムスケジュールを組んでいました。
大人の診療科に配置転換した当初、予定どおりに仕事がすすむため、とても驚いたのも印象深い思い出です。
辛いときも子どもに癒される
小さな体で病気と戦う子どもたちの多くは、自分の状態を適切に言葉で表すことができません。小児科は、些細な変化も見逃さない集中力と観察力が必要で、精神的な負担も大きい職場です。
ときには、子どもが嫌がる処置やケアをしなければなりません。泣く姿や、苦しそうな状態を見るのは、何年たっても辛いもの。
しかし「看護師さん大好き」「ありがとう」などの言葉をかけられたり、お手紙を貰ったりと、"子どもに癒された"と感じる場面はたくさんあります。
とくに、自分のプライマリーの子どもや、つらい治療を頑張った子どもの笑顔や言葉は、本当に癒されます。
小児科看護師の大変なこと・辛いことあるある
小児科看護師は、かわいい子供たちと働き、楽しそうに見えるかもしれません。しかし、小児科看護師ならではの大変なこともあります。
自己学習が大変
さまざまな年齢や疾患の子どもを担当できる小児科。しかし、そのためには自己学習が欠かせません。筆者が小児科に入職した当初、一番つらかったのは自己学習とレポートの多さです。
先輩看護師の求めるレベルの自己学習ができず、受け持ちを持たせて貰えなかったこともありました。3年目くらいになれば、一通りの疾患を担当できるようになり、少し楽になります。
若手の小児科看護師で自己学習が大変に感じる方は、あと少し頑張れば、きっと楽になる時期が来るでしょう。
抗生剤や点滴の使用量・投与量の計算が細かい
小児科では「小児用輸液セット」を使用するため、1分間の滴下数も成人とは異なります。
さらに、輸液や抗生剤の投与量を体重1kgあたりで計算する必要があります。成人は、バック製剤でワンプッシュで溶解できる抗生剤が主流です。しかし、小児科ではアンプルやバイアルの全量を一人の子どもに使うことがありません。
子どもの体は小さく、輸液量が多すぎると心臓に負担をかける可能性があります。そのため、輸液管理のために、厳密な計算のもと輸液ポンプやシリンジポンプを使用するケースも多いです。
たとえば、以下のような指示があります。
「抗生剤A 1g1バイアル 使用量300㎎+生理食塩水10ml 30分で投与」
算数や数学の授業のようですよね。一見すると難しそうな計算に、苦手意識を持つ看護師もいるでしょう。小児科に憧れている方は「計算なんて難しくてできない」と、思うかもしれません。
しかし、毎日毎日繰り返し計算を行うため、必ず慣れますので安心してください。計算が苦手だからといって、小児科で働くことをあきらめないでくださいね。
子どもや保護者とのコミュニケーションが難しい
小児科の看護の対象は新生児から高校生までと幅広く、看護師には年齢や発達に合わせたコミュニケーションが求められます。また、子どもたちの年齢や障害・病気によっては、言語でのコミュニケーションが難しい場合もあり、意思をくみ取る観察力が重要です。
さらに、小児科のコミュニケーションの対象には子どもたちの保護者や養育者も含まれます。筆者が新人看護師の頃は、保護者や養育者からの質問や疑問に適切な対処ができないこともありました。
うまくコミュニケーションがとれず自信を失う場面もありましたが、先輩や医師のサポートを受け、少しずつ経験を重ねるうちに、乗り越えられるようになりました。
辛い、大変だと思った時には一人で抱え込まずに、誰かと共有しましょう。
もしかすると同期や先輩の中に、同じように感じている人がいて、対処方法を教えてくれるかもしれません。いつか、経験を生かしたコミュニケーションができる日が来ます。小児科での看護を嫌いにならないでくださいね。
まとめ
今回は、元小児科看護師の筆者の経験をもとにたくさんの小児科看護師あるあるを紹介しました。小児科看護師はさまざまな年齢や疾患の看護を行うため、幅広い知識や経験が求められる専門性の高い診療科です。
かわいい子どもの看護をしたいと人気も高いのですが、辛いことや大変なこともあります。けれども、小児科看護師でなければ経験できなかった事も多く、小児科はとても魅力的な職場です。
バイトルPROでは多くの医療機関の小児科のお仕事を紹介しています。ぜひ、記事を参考に小児科看護師の仕事を探してみてください。
ライター 小田あかり
大学看護学部卒業後、小児科・腎臓内科・循環器の最前線で勤務。現在も看護師として働きながら、ライターとしても精力的に活動中。保健師、呼吸療法認定士、糖尿病療養指導士の資格も持つ。
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