看護師3年目はようやく仕事にも慣れてきて、周りのことが見えてくる時期です。一方、多くの看護師が転職を考え始める時期でもあります。
先輩の目も離れ始め、任される業務の量や責任も増し、その負担から「もう辞めたい」と悩んでいる人もいるのではないでしょうか。3年目で今の職場を辞め、転職を成功させるには注意すべき点があります。
この記事では看護師3年目で「辞めたい」と感じる理由や、転職を成功させるポイント、おすすめの転職先をご紹介します。
3年目の看護師が辞めたくなる理由
3年目は看護学生が奨学金免除のために指定の病院に勤める「お礼奉公」が終わる時期でもあり、自由に職場を変更できることも転職を考える理由のひとつです。
また、3年間働いて職場の問題点が見えてきたり、自分の将来に不安を感じたりして「今の職場を辞めたい」と考え始める看護師も少なくありません。
ここからは、3年目の看護師が今の職場を辞めたくなる理由を紹介します。
時間外の業務が増えてくる
看護師3年目はプリセプターと呼ばれる新人への指導や委員会活動への参加など、任される業務の量が一気に増える時期です。
今まで行っていた業務もこなさなくてはならず、時間外業務も多くなります。
さらに病院によっては資料の作成や打ち合わせなどを時間外に行うことが通例になっていたり、勉強会のために休日出勤したりすることも珍しくありません。
3年目はそのような時間外業務の多さに疑問を感じ始め、「もっとプライベートを重視できる環境で働きたい」と転職を意識しはじめる時期であるようです。
業務への責任が大きくなる
3年目になると指導してくれた先輩から離れ、一人前の看護師として扱われるようになります。
今まで先輩に頼ることができた場面でも、自分で判断しなければなりません。新人を指導する立場にもなるため、自分の能力に自信をなくし不安を感じてしまう看護師も少なくありません。
今までの業務に慣れてくる一方、責任やプレッシャーが大きくなり「転職して環境を変えたい」と考える看護師も多いのではないでしょうか。
給与面に不満がでてくる
厚生労働省の調査によると、20歳から24歳の看護師の平均給与はおよそ28万円です。この金額から税金や保険料が差し引かれ、約80%の22万円前後が手元に入ります。
これは同世代の平均給与に比べて高い額であるものの、人の命を預かる仕事や、夜勤を含む不規則な生活からくる心身的な辛さに対して、「割りに合わないのではないか」と疑問を抱く人も多くいます。
同じ看護の仕事をするのであればもう少し給料の高い職場で働きたいと思うのも、3年目の看護師が転職を考える理由の一つです。
参考:厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」
勤務先の悪い面が見えてくる
1、2年目と比べ、3年目は余裕が出てきて、周りの状況が客観的に見えてくるようになります。チームの連携が取れていない、教育体制が整っていないなどの問題点にも気がつくようになることから「今の病院にずっといても大丈夫かな」と不安を感じる看護師も多いようです。
また業務をこなす中で、自分の理想とする仕事が見えてきて、先輩や病院のやり方に不満を抱きはじめる看護師もいます。
看護師3年目は今の環境に疑問を感じ、「もっと~~できる職場で働きたい」という思いから、キャリアプランを見直すタイミングでもあります。
3年目で転職する時の注意点
仕事に慣れてきて、将来を考え始めたことから転職を考える意識する人も多い3年目。しかし、看護師3年目で転職する際には以下のような注意点があります。
- 指導の経験がない/少ない
- スキルが限定的になりやすい
看護師3年目はプリセプターとして新人看護師の指導を担当し始める時期です。しかし、3年目で辞めるとなると、プリセプターの担当期間が中途半端になってしまいます。
また3年目では看護師の教育プログラムが終わっていなかったり、経験した診療科が少なかったりするケースもあります。
求人を募集している病院や施設の中には「即戦力が欲しい」「新人看護師を指導できる人材が欲しい」と考えているところも少なくありません。
その場合、より経験がある看護師を優先して採用する可能性が高いため、3年目の看護師が転職を成功させるには、念入りな準備や戦略的な職場選びが必要です。
3年目の転職を成功させるには?
3年目の看護師が転職をする際、注意すべき点はあるものの、転職は十分可能です。ここでは転職を成功させるために押さえておきたいポイントを4つ解説します。
転職で実現させたいポイントを具体的にする
まずは自分がどうして転職したいと思ったのかを明確にしましょう。「キャリアアップのため」「夜勤がつらい」「給料が安い」「残業が多い」など、今の職場に抱いている不満を全て書き出してみてください。
転職の理由を明確にすると、転職先を選ぶ上での指針になります。
「夜勤がつらい」という理由の場合は、クリニックや訪問看護のような夜勤がない職場を選ぶなど、自分が譲れない条件を明確にして転職先を選んでいきましょう。
キャリアアップを目指す場合は、転職先が求めている条件を募集要項から探し、自分が満たしているか確認しましょう。満たしていなければ今の職場で経験を積むのも一つの方法です。
自分の考えを明確にすることで、本当に今の職場では自分の希望が実現できないのかを考える機会にもなります。
経験が活かせる職場を探す
キャリアアップを理由に転職を考えている看護師は、経験を活かせる職場を探すことをおすすめします。自分が経験したことのある科での転職であれば、即戦力になれる可能性があります。
3年間の勤務の中で、出来るようになったことや大切にしてきた看護観を書き出してみてください。患者さんとのエピソードも合わせて考えて書き出すと、志望動機を準備する際に役立ちます。
「今まで経験してきた分野での仕事が辛い」「未経験の科で仕事がしたい」という場合は転職活動が長引くことを覚悟した上で行動に移すか、同じ病院内での異動が可能か、上司に相談してみるという方法もあります。
ライフステージの変化を踏まえて職場を探す
3年目の看護師は20代半ばに差し掛かり、結婚や出産を意識する時期です。今はまだ予定がなくても、今後どのような変化があるかわかりません。
希望の条件で転職に成功しても、ライフステージが変化して、仕事を続けられなくなるケースも考えられます。
転職活動を行う際には、業務内容や給与といった条件だけでなく、産休や育休の実績があるか、育児をしながら働き続けられそうか、なども確認しましょう。
転職先が決まるまでは今の病院を辞めない
すぐに転職したいと思っていても、転職先が決まるまでは今の病院で働き続けることをおすすめします。なぜなら、安定した収入があれば時間をかけて納得のいく転職先を選ぶことができるからです。
仕事がない状態で、転職活動に時間がかかると焦りを感じ、結果として転職先に求める条件を妥協してしまうことも。目的や理想を見失うと、希望通りの転職が果たせなくなります。
よりよい転職を実現させるためにも、今の病院は辞めないまま転職活動を進めた方が安心です。
3年目の看護師におすすめの転職先
上述した通り、転職先を考える際には、今後どのような看護師になりたいか、働き方をしたいかが重要です。ここからは今後のキャリアプラン・ライフプランに合わせた、おすすめの転職先をご紹介します。
キャリアチェンジを考えている方
キャリアチェンジを考えている方におすすめなのが、美容クリニックや透析クリニックへの転職です。美容クリニックや透析クリニックでは、他の診療科目にはない専門性やスキルが求められます。
美容クリニック
美容クリニックには美容皮膚科と美容外科があります。
- 美容皮膚科:主に医療脱毛やシミ・ほくろなどを消すレーザー治療などを看護師が行う。
- 美容外科:主に美容整形のような外科的な手術を行う。看護師は手術の介助などを担当する。
美容クリニックに来院する方の多くは病気を治療しにくる「患者」ではなく、より美しくなるためのサービスを受ける「お客様」です。そのため、患者に接するときとは異なる、サービス業としての接遇スキルが求められます。
また、自由診療が一般的なこともあり、夜勤や残業が少ないにも関わらず給与水準が高いのも美容クリニックの特徴です。クリニックによっては、ノルマの達成度合いに応じて給料が上乗せされるケースもあるため、努力次第で高収入を目指せます。
ノルマの有無はクリニックによって違うので、ノルマがない職場を望む方は、事前にしっかりと確認しましょう。
透析クリニック
透析クリニックでは人工透析を必要とする患者に対し、透析の準備や穿刺・抜針・止血などの医療行為、生活指導などを行います。
患者は定期的に通院を続けているため、一人ひとりと長期に渡って関わるアセスメントスキルやコミュニケーション能力が求められます。
透析クリニックには残業がほとんどない職場が多く、夜勤やオンコールの勤務も基本的にはありません。
また、透析看護には認定看護師(透析看護師)や慢性腎臓病療養指導看護師といった専門資格があり、専門的な知識やスキルが必要なため、新たな分野でスキルアップもしたいという方におすすめです。
これらの職場では、看護師の経験やスキルを活かしながら新しい分野に挑戦できるので、キャリアチェンジを考えている方は転職先の候補として検討してみてはいかがでしょうか。
プライベートの時間を充実させたい方
病棟勤務の経験を活かしながら、プライベートな時間も大切にしたい方には訪問看護ステーションがおすすめです。
幅広い業務を1人で担当し、主治医やケアマネジャーなどの他職種と連携してケアを提供するため、病棟勤務での経験が活かせます。また、夜勤がなく、勤務時間がきっちり決められている職場が多く、ワークライフバランスを保ちやすいのも特徴です。
しかし、基本的には1人で利用者さんの様子を見て看護を行うため、アセスメント力や決断力が求められます。在宅医療のスキルを習得したい方や病棟勤務の経験を活かしたい方は、訪問看護ステーションへの転職を検討してみてはいかがでしょうか。
スキルを身に付けたい方
今後のキャリアを考え、より看護のスキルを身に付けたいと考えている方には急性期病院がおすすめです。
急性期病院は急性疾患や重症患者、重症外傷の患者の治療を24時間体制で行うため、スピード感が求められる職場です。
患者さんの命に直結する場面が多く、体力的・精神的なタフさが必要である反面、高度な知識やスキルが身につきます。
転職の際には体力や柔軟性がある若手が有利になるケースがあるため、転職先として検討してみてはいかがでしょうか。
患者とのコミュニケーションを重視したい方
コミュニケーションを大事にして、患者さんとじっくりと向き合って看護をしたい方には、慢性期病院がおすすめです。
慢性期病院には、急性期より容態が比較的安定しているものの、自宅に帰るのは難しい方が入院しており、高齢の患者さんが多い傾向にあります。
在宅復帰に向けた看護を行うため、今後の訪問看護師や施設看護師への転職にも経験を活かせます。
落ち着いた雰囲気で働きたい方
バタバタとした雰囲気や、張り詰めた雰囲気の中ではなく、落ち着いた雰囲気の中で働きたい方には療養型病院がおすすめです。
療養型病院には、慢性期の患者さんが長期的な治療を目的として入院しており、寝たきりの方や認知症の方が多い傾向があります。容態の変化をある程度予測できるため、緊急の残業が発生しにくいです。
また、医療行為は少なめで、食事や排泄などの介助といったケア業務が多いため、体力が必要なのも特徴の一つです。
まとめ
看護師3年目は、さまざまな理由から今の職場や看護師という仕事自体を辞めたいと考え、キャリアプランを見直し始める時期。
転職を成功させるには「次の職場で実現したいこと」を明確にすることが大切です。
「今の職場が辛いから辞めたい」という場合も、「夜勤がきつい」「残業が多い」など辛いと感じている理由を明確にしましょう。理由を明確にすると、自分に合った職場を探しやすくなります。
今の職場を辞めても、これまでの経験は決して無駄にはなりません。病院やクリニック、訪問看護など看護師としてのスキルを活かせる職場は数多くあります。
バイトルPROでは給与や勤務時間など、さまざまな条件から求人を探すことが可能です。自分に合った職場を探してみてはいかがでしょうか。
ライター 天野莉瑠
大学で福祉を学び、卒業後はグループホームに勤務。現在はライターとしても活動中。社会福祉士と精神保健福祉士の資格をもつ。
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