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介護士の職業病「腰痛」の原因と最新の予防対策を徹底解説!

  • 仕事お役立ち情報

目次

「ここ最近背中側が痛い」「腰から足にかけて痛みがある」。介護士のみなさん、このような症状に心当たりはありませんか?

"腰痛は介護士の職業病"ともいわれるくらい、多くの介護士が腰痛を抱えながら働いています。腰痛がひどくなると日常生活にも支障がでてしまい、大変ですよね。では、実際どれくらいの介護士が腰痛に悩まされているのでしょうか。

今回は腰痛になる要因と予防法、腰痛になったらすぐにするべきことを最新の知見をもとにわかりやすく解説していきます。現在腰痛に悩まれている方、予防したい方、是非参考にしてみてくださいね。


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介護士は腰痛になりやすい?

「腰痛」は職業病の中でも、最も発生頻度の高い病気のひとつです。

厚生労働省の令和元年業務上疾病発生状況等調査によると、仕事中の負傷による疾病とそのうち腰痛の発生件数・割合は以下の通りです。

仕事が原因の怪我や病気(全体) 腰痛 腰痛の割合
全業種計 8,310件 5,132件 62%
保健衛生業(介護含む) 1,930件 1,648件 85%
参考:厚生労働省「令和元年業務上疾病発生状況等調査」

全ての業種の合計でも腰痛の割合は62%と多いですが、介護を含めた保健衛生業では85%と腰痛の発生頻度は他の業種より20%以上多くなっています。

さらに別の調査では、働くうえでの悩み・不安・不満についての質問で、「身体的負担が大きい(腰痛や体力に不安がある)」と答えた介護士は約30%にのぼりました。

このような調査からも介護士は腰痛になりやすいと悩んでいる人が多いと言えます。

参考:介護労働安定センター「平成29年度介護労働実態調査」


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介護士が腰痛になりやすい4つの要因

多くの介護士が悩んでいる腰痛。腰痛を引き起こす要因はさまざまですが、介護士が普段何気なく行っているケアや行動が腰に負担をかけています。ここでは介護士の腰痛の要因を解説していきます。


腰に負担のかかりやすい動作

介護士が行う介護業務は腰に負担のかかりやすい動きだと言えるでしょう。具体的な動作は以下のようなものです。

  • 移乗介助で利用者の体を抱え上げる
  • おむつ交換では前かがみでケアをする
  • 入浴介助では背中を反る、腰をひねるなど不自然な姿勢をとる

介護士にはこれらの業務は切っても切れない存在です。同じ体勢で長時間もケアをしたり、腰負担がかかる回数が多かったりすると、より腰を痛めやすくなるでしょう。


介護を行う環境

動作だけでなく介護をする以下のような環境も、腰痛を引き起こす要因となります。

  • 風呂場などの濡れた床や不安定な場所
  • トイレなどの狭い場所

足元が不安定な場所で体が緊張したり、狭い場所で無理な体勢をとったりすることが腰痛の要因となるようです。


年齢・体格などの個人的な要因

介護を行う利用者の体格が大きいほど腰への負担がかかるのはもちろん、介護士本人の年齢や体格も腰痛のなりやすさに繋がります。腰痛に繋がる個人的な要因は以下のとおりです。

  • 年齢や性別
  • 握力・腹筋力・バランス能力
  • 既往症・基礎疾患(椎間板ヘルニア・腰部脊柱管狭窄症・圧迫骨折・血管性疾患・婦人科疾患・泌尿器系疾患など)

人によりそれぞれですが、一般的には年齢を重ねると筋肉量は減り、体への負担が大きくなることが多いです。また女性よりも男性の方が筋肉量が多いことから、男性介護士は重宝されます。

既往症や基礎疾患がある方も注意が必要です。介護業務にはあまり支障がないものもありますが、例にあげている病気の場合、腰痛の要因となりえます。


仕事を行ううえでの心理的な負担

腰痛には身体的な負担だけではなく、心理的な負担も影響します。心理的な負担とは、例えば過度な長時間労働による疲れが挙げられます。それだけでなく介護士としての責任や人間関係などの負担も関係しているのです。

介護士の腰痛ではこれらの要因が複数関与して発症しています。腰痛になる要因を極力減らし、腰痛を起こしにくい環境を整えていくことが、腰痛予防には必要です。

参考:厚生労働省「介護業務で働く人のための腰痛予防のポイントとエクササイズ」 / 「職場における腰痛予防対策指針及び解説」


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介護士の腰痛予防のポイント

いままでの介護士の教育では「ボディメカニクスの活用が身体的負担を軽減させる」と言われてきました。しかし腰痛を抱えている人は減っておらず、近年はボディメカニクスだけでは身体的負担を軽減できないという風潮にあります。

ここでは現在有効とされている介護士の腰痛予防のポイントを解説していきます。


利用者の残存機能を活用しよう

利用者の残存機能を活かした介護を行っていますか?利用者の力を借りれるところは借りていきましょう。

例えば利用者の上体を起こす際、手や体をつかんで貰うだけでも介護士の体の負担は軽減されます。また利用者と歩くときは、介護士が支えるのではなく、杖や手すりを持ってもらえれば楽になるでしょう。

利用者の残存機能の状態を確認したうえで、介護を行うようにしましょう。


個々の能力に合わせて作業分担をしよう

介護の現場では自分よりも体格の大きな人を介助することも少なくありません。また介護人材の高齢化で年配の方が身体介助をしているケースも多いでしょう。

腰痛のリスクを軽減するには個々に合わせた仕事の分担が大切です。

【 分担の例 】

  • 2人以上で作業をする
  • 利用者の介護度・体重を踏まえて担当を振り分ける
  • 特定の介護士に負荷のかかる仕事を集中させない

このように職場全体の介護士の健康を守っていくために、仕事も分担していけると良いですね。

しかし、厚生労働省では腰痛を防ぐためには「人の力で取り扱う重量は男性で体重の40%以下、女性はその60%以下が適当」としています。つまり体重60kgの方でも持ち上げる重量は24kg以下が適切であるため、作業分担のみでは腰痛予防としては十分ではないのが実情です。

そこで、より身体的負担を軽減できる福祉用具が注目されています。

参考:厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針及び解説」


福祉用具を効果的につかおう

現在、世界の介護現場では人の力で持ちあげない介護(=ノーリフティングケア)が主流になってきており、日本政府も注目している技術です。

ノーリフティングケアでは効果的に福祉用具を活用して、介護士と利用者の両方の負担を軽減することを目的としています。腰痛予防に効果的な福祉用具には以下のような種類があります。

リフト・スライディングボード・スライディングシート・スタンディングマシーン・安全ベルト(持ち手つきベルト)など

これらの福祉用具を適切に使い、腰痛予防に繋げられると良いですね。

またノーリフティングケアを学べる研修もあります。利用者・介護士の双方にメリットがある技術が習得できるため、興味がある方はぜひ受講してみてください。

一般社団法人 日本ノーリフト協会
一般社団法人 全国ノーリフティング推進協会

介護士が腰痛になり、痛みを感じながら仕事をしていると介護の質の低下に繋がります。安全にケアを提供するためにも、きちんと予防に努めましょう。

厚生労働省では介護士の腰痛予防を目的に「介護作業者の腰痛予防対策チェックリスト」を用意しています。介護業務における腰痛のリスクを明らかにするために活用にしてみてください。

参考:厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針及び解説」 / 「介護業務で働く人のための腰痛予防のポイントとエクササイズ」


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介護士が腰痛になったら、すぐにする5つのこと

なかなか予防ができる状況ではない、予防をしているけど腰痛を発症してしまったという方も腰痛を自覚したら、以下のような対処をすぐにとりましょう。

早めの対応が、重症化と慢性化の予防に繋がります。


病院で受診

腰の違和感や身動きの取れない急激な痛み、足に痺れをともなう痛みの場合には、腰だけでなく周辺の神経や筋肉を痛めている可能性があります。

また腰痛が長期間に渡って続く場合には、脊柱管狭窄症や腰のヘルニアを合併している可能性も。たかが腰痛と過信せず、症状がつらいときや長く続くときには受診をしましょう。


業務内容の調整

腰痛がひどいときには、業務内容の調整も大切です。ただでさえ人手不足の介護現場で、「自分だけ負担の少ない仕事なんて...」と思う介護士も少なくありません。

しかし、腰痛に悩まされているときに対処せず無理して働き続けていると、なかなか腰痛はよくならず、重症化・慢性化する可能性もあります。とくに移乗介助など、利用者を持ち上げる動作を減らすだけでも、かなりの負担軽減に繋がります。

業務内容を調整しあって、スタッフ同士が負担なく働ける環境を作っていけるといいですね。


仕事を休養する

症状によっては仕事を休養したほうがよい腰痛もあります。具体的には以下のような症状です。

  • 急に発症した腰の激痛
  • 足や腰に痺れがある
  • 横になっていても痛みが強い
  • 痛み止めを飲まなければ動くことができない

このような症状があるときには、一般的におこる腰痛だけでなく、他の病気の可能性も潜んでいます。無理をして働くと症状を悪化させたり、長引かせたりする可能性があるため十分な休養が必要です。


労災申請

労災とは「労働災害」の略で通勤・業務中に発生した怪我や病気のことを指します。労災の届出を行い認定されると、治療費の負担(療養補償給付)や休業したときの給与の補償(休業補償給付)を受けることができます。

しかし、仕事中におきた全ての怪我が労災として認められるわけではありません。場合によっては仕事ではなく「日常生活で起こった」と判断される可能性もあるからです。

腰痛は介護の仕事が原因だと証明するのは難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。しかし、介護士の腰痛も労災と認められる可能性が十分にあります。

労災として認められるには、まず医師の診断が必要です。労災として認められるか分からなくても、可能性があれば必ず病院で受診し、治療を受けましょう。

労災申請をすると職場に迷惑がかかると考え、申請をためらう介護士も少なくありません。しかし、労災申請は労働者の権利で、たとえ会社が認めていなくても労働基準監督署に自分で申請できます。

ご自身の腰痛が労災申請できるかわからない時には、担当の医師や労働基準監督署に相談してみることをおすすめします。

参考:厚生労働省「労災補償」


腰痛ベルトの活用

腰痛ベルトで腰を支えることで、痛みが緩和した経験がある人も多いでしょう。腰痛ベルトには、以下のような効果があると言われています。

  • 筋・骨格のゆがみをなおす
  • 背骨を支え、動きを制限する
  • 腰への負担が軽減する

このような効果から、腰痛の症状が良くなることもありますが、腰痛や関連して起こったしびれなどの症状の根本的な改善には繋がらないでしょう。

腰痛がひどい時、痛みを楽にするために腰痛ベルトを使用することはおすすめです。一方、腰痛ベルトで長時間しめつけることで、皮膚のかゆみやかぶれ、吐き気、筋肉痛を起こす可能性もあります。

無理のない範囲で、症状の緩和や予防を目的として腰痛ベルトを使用してみてはいかがでしょうか。

参考:日本整形外科学会・日本腰痛学会「腰痛診療ガイドライン2019」


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まとめ

介護士の職業病ともいえる「腰痛」。腰痛になってしまうと、思うように働けず心身ともにつらいものです。働きながら腰痛を完治させるには、時間もかかります。

介護士の職業柄、腰に負担がかかる作業を避けられない場面もありますが、職場全体で腰痛予防に努めれば、腰痛に悩む人・腰痛が原因で離職する人を減らすこともできます。

これからも無理をせず、腰をいたわりながら介護の仕事を続けていきましょう。


ライター 小田あかり

大学看護学部卒業後、小児科・腎臓内科・循環器の最前線で勤務。現在も看護師として働きながら、ライターとしても精力的に活動中。保健師、呼吸療法認定士、糖尿病療養指導士の資格も持つ。


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