看護師になるには、看護師国家試験に合格しなければなりません。看護師国家試験に合格することは、自身がそれまで看護師学校や看護大学で3~4年かけて学んだことの集大成となります。試験に合格できるよう、ポイントを押さえてしっかりと準備しましょう。
この記事では、看護師国家試験の受験資格や試験内容、難易度や受験手続き、勉強のポイントなどを紹介します。試験を受けるにあたり、ぜひ参考にしてください。
看護師国家試験とは?
看護師国家試験とは、看護師の免許を得るための試験です。「看護師」を名乗るには看護師免許が必要であり、厚生労働省が実施する看護師国家試験に合格しなくてはなりません。
受験資格について
看護師国家試験の受験資格は、文部科学省が指定した看護学校を卒業した者に与えられます。高校を卒業後に看護師免許を取る場合には、以下の2つの選択肢があります。
- 看護大学へ4年間通う(保健師と助産師の受験資格も得られる)
- 看護師学校または短期大学へ3年間通う(得られる受験資格は看護師国家試験のみ)
中学卒業後に看護師免許を取る場合には、高校の5年間一貫コースを卒業すれば、看護師国家試験の受験資格が得られます。
また、すでに准看護師の免許を取得している場合には、最終学歴に応じて以下のような選択肢があります。
- 最終学歴が高卒の場合:2年間の看護師学校(定時制は3年)卒業後、看護師国家試験の受験資格が得られます。
- 最終学歴が中卒の場合:准看護師として3年間実務経験したのち、2年間の看護師学校(定時制は3年)に入学します。卒業後、看護師国家試験の受験資格が得られます。
看護師国家試験の試験内容は?
看護師国家試験の試験内容は、「必修問題」「一般問題」「状況設定問題」の3種類に分かれています。出題の内容は、厚生労働省が定める「看護師国家試験出題基準」(注)に基づいたものです。
必修問題・一般問題・状況設定問題のそれぞれの概略と問題数、配点は下の表のとおりです。
種類 | 概要 | 問題数 | 配点 |
---|---|---|---|
必修問題 | 看護の基本に関する問題。合格するためには8割以上の正答が必要 | 50問 | 1問1点 |
一般問題 | 出題基準のうち11科目については、1問1答形式で出題される | 130問 | 1問1点 |
状況設定問題 | 出題基準のうち7科目については、看護の実際の状況で直面しうる状況を設定し、それに対する判断力を問う | 60問 | 1問2点 |
また、必修問題の試験内容は、以下の目標が設定されています。
- 看護の社会的側面及び倫理的側面について基本的な理解を問う
- 看護の対象者及び看護活動の場について基本的な理解を問う
- 看護に必要な人体の構造と機能及び健康障害と回復について基本的な理解を問う
- 看護技術の基本的な理解を問う
(注)参照:厚生労働省「看護師国家試験出題基準」
試験科目一覧
一般問題および状況設定問題の概要と問題数・状況設定数は以下のとおりです。
科目 | 一般問題 | 状況設定問題 | 概要 |
---|---|---|---|
人体の構造と機能 | 14問 | - | 人体の構造と機能についての基本的な理解 |
疾病の成り立ちと回復の促進 | 10問 | - | 健康から疾病、回復への過程、疾病による身体内部の変化など |
健康支援と社会保障制度 | 19問 | - | 人間の社会的側面、社会福祉の理念と制度、保健活動の進め方など |
基礎看護学 | 17問 | - | 看護の基礎となる概念・技術、看護の果たす役割など |
成人看護学 | 28問 | 5問 | 成人の健康保持や疾病予防、健康問題に応じた看護など |
老年看護学 | 14問 | 3問 | 高齢者と家族の生活と健康、看護の基本など |
小児看護学 | 11問 | 3問 | 小児の成長発達、小児と家族への看護・療養の基本など |
母性看護学 | 4問 | 4問 | 母性看護と性・生殖の概念、女性のライフサイクル各期の看護など |
精神看護学 | 5問 | 3問 | 精神の健康と保持・増進、精神疾患の生物・心理・社会的な側面など |
在宅看護論 | 4問 | 2問 | 在宅看護の特徴、基本 |
看護の統合と実践 | 4問 | 2問 | 看護におけるマネジメント、災害看護、国際社会における看護など |
看護師国家試験の難易度は?
看護師国家試験は、看護師学校や看護大学で3年~4年かけて勉強した内容が試験範囲であり、必要な課程をすべて修了した人だけが受験資格を得られるものです。そのため、看護師国家試験の難易度は、低いとはいえないでしょう。
ただし、看護師国家試験の目的は、受験者をふるい落とすことではありません。「看護師として必要な知識を習得しているか」を最終確認するものです。したがって、看護学校で身に付けた知識を存分に発揮できれば、看護師国家試験に合格できるでしょう。
国家試験の合格率
看護師国家試験の2012年~2021年の10年間の受験者数と合格者数、合格率は、以下の表のとおりです。この表を見ると、毎年9割程度の合格率となっていることがわかります。
合格基準
看護師国家試験の合格基準は「必須問題」と「一般問題+状況設定問題」それぞれに設けられており、いずれも厚生労働省が定めた合格基準点を満たさなければいけません。
まず、必修問題は「8割の正答率」がボーダーラインとされています。出題数は50問で配点は1問1点となり、50問のうち40点以上を正解しなければなりません。
一般問題+状況設定問題のボーダーラインは、年によって140~160点程度まで変動しますが、平均すれば「約6割以上の正答率」となっています。
一般問題は出題数が130問、配点が1問1点で、状況設定問題は出題数が60問で、配当が1問2点です。それぞれ満点の場合は合計250点なります。
なお、他の問題が高得点だとしても、必修問題のボーダーラインをクリアしていないと不合格となるので注意しましょう。
看護師国家試験の日程は?
看護師国家試験は年に1度、2月の中旬に丸一日をかけて行なわれ、日程は厚生労働省のホームページで発表されます。
厚生労働省「看護師国家試験の施行」
基本的には、「午前の部」と「午後の部」の2部構成で試験が行なわれます。
- 午前の部 9:50~12:30(2時間40分)
- 午後の部 14:20~17:00(2時間40分)
出題数は、午前と午後で120問ずつです。120問を2時間40分(160分)で解答するには、1問あたり約1.3分で解く必要があるため、スピードが求められる試験だといえるでしょう。
看護師国家試験の受験手続きについて
次に、看護師国家試験の受験手続きを見ていきましょう。
受験者全員が必要な書類
看護師国家試験の受験者全員が必要な書類は次の3つです。
受験願書
氏名の記載に際しては、戸籍に記載されている文字を使用します。
写真
出願前6ヵ月以内、脱帽して正面から撮影した縦6cm、横4cmのものを用意し、裏面に撮影年月日と氏名を記載してください。なお、写真の提出にあたっては、卒業・在籍する看護学校などで、その写真が受験者本人に間違いないことの確認を受ける必要があります。
返信用封筒
返信用封筒は縦23.6cm、横12cmのものを用意します。表面に郵便番号・住所・宛名を記載し、529円(定形郵便94円+一般書留435円)の切手を貼り付け、「書留」と表示します。
看護系学校、看護師養成所等を卒業した者・あるいは卒業見込みの者が提出する書類
看護系学校・看護師養成所などを卒業した方や卒業見込みの方は、以下の書類を提出します。
修業証明書、修業判定証明書、修業見込証明書、卒業判定証明書、卒業見込証明書のいずれか
以下のうち、いずれかの書類提出が必要です。
- 看護師になるために必要な学科を修了したことを証明する「修業判定証明書」「修業見込証明書」「卒業証明書」
- 卒業または卒業見込みの看護系学校・看護師養成所などの「修業証明書」
- 卒業できると判定されたことを証明する「卒業判定証明書」「卒業見込証明書」
3年以上勤務している又は高校等を卒業している准看護師が提出する書類
准看護師で3年以上勤務している方や最終学歴が高卒の方は、以下の書類を提出します。
指定学校の修業証明書又は2年以上修業した証明、修業見込証明のいずれか
以下のうち、いずれかの書類提出が必要です。
- 指定学校の「修業証明書」
- 指定学校を2年以上就業したことを証明する「修業判定証明書」「修業見込証明書」
- 指定養成所の「卒業証明書」
- 卒業できることを証明する「卒業判定証明書」「卒業見込証明書」
准看護師免許証の写し
准看護師免許証の写しは、都道府県医務主管課または保健所に免許証を提示し、原本との照合を受ける必要があります。
受験手数料
受験手数料は、5,400円です。
受験願書に5,400円分の収入印紙を貼って納付しますが、収入印紙の消印をしないように注意しましょう。
受験手続きの手順について
受験に必要な書類をそろえたら、指定された期間内に提出します。
提出先は、東京都の看護師国家試験運営本部事務所、もしくは全国9ヵ所に開設されている看護師国家試験運営臨時事務所です。郵送する場合は、看護師国家試験運営本部事務所に提出します。
なお、受験票は後日郵送によって交付されます。
看護師国家試験に合格するためのポイントは?
最後に、看護師国家試験に合格するためのポイントを紹介します。
効果的な勉強方法について
看護師国家試験の勉強を効果的に行なうためには、まず勉強のスケジュールを立てることが大切です。4月~8月は基礎固め、9月~12月は過去問や模試、試験直前の1月~2月は総仕上げといったように、期間ごとに目的を持って計画的に進めましょう。
優先すべきは土台作りですので、まずは基礎となる「人体の構造と機能」の理解を深めることから始めてください。「人体の構造と機能」は、看護師国家試験においてすべての基礎といえるからです。
また、過去問題集をすべて解こうとすると膨大な量になります。「1年分だけ解く」あるいは「解説をチェックする」など、自分なりに可能な範囲で行なうのがよいでしょう。
試験直前の準備について
試験の直前は、以前に間違えた問題をあらためて解いてみるなどして、知識の定着を図りましょう。その一方で、体調管理に気を配ることも重要です。
看護師国家試験は午前中からスタートします。試験の際にしっかりと頭が働くよう、早寝早起きの生活リズムを作っておくことも、試験対策の一つといえるでしょう。
まとめ
看護師国家試験とは、看護師の免許を得るための試験です。看護師になるには、厚生労働省が実施する看護師国家試験に合格しなければいけません。
受験資格は、文部科学省が指定した看護学校を卒業した方だけに与えられます。国家試験の合格率は約9割と高いものの、受験者は看護学校でしっかり学び、すべての科目を修業した方ばかりです。
決してやさしい試験とはいえませんが、この記事で紹介したポイントをしっかりと押さえて準備し、合格を目指しましょう。
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