高齢者や障がいがある方など介護を必要とする方が、適切な介護保険サービスを受けられるようにマネジメントするケアマネジャー。高齢化社会が進み、介護保険サービスの需要増加が予想される日本では、重要な仕事の一つです。
そのため、ケアマネジャーを目指そうと考えている方もいるのではないでしょうか。しかし、ケアマネジャーとして働くには、資格を取得しなければなりません。また、資格を取得する試験を受けるには、受験資格が必要です。
この記事ではケアマネジャーになるための受験資格や資格試験の難易度・合格率などを解説します。ケアマネジャーを目指している方や興味がある方は、ぜひご覧ください。
ケアマネジャーになるには5年以上かつ900日以上の勤務実績が必要
ケアマネジャーは、介護を必要とする方が正しい介護サービスを受けることができるようにマネジメントする仕事です。 必要な介護サービスを決めるケアプランを作成したり、利用者様と医療機関・介護事業所の連絡調整をしたりします。
ケアマネジャーは、利用者様の身体状況や生活の悩みなどを聴取して最適な介護保険サービスを提案する必要があることから、専門的な知識や技術が欠かせません。 そのため、ケアマネジャーとして働くためには、受験資格を得て、試験に合格する必要があります。 基本的にケアマネジャーになるには、5年以上かつ900日以上の勤務実績が必要です。
ここでは、ケアマネジャーの受験資格を得られる職種を紹介します。
1. 医療に関わる国家資格職の勤務実績がある
ケアマネジャーの受験資格として認められる勤務実績は、医療に関わる国家資格職で積めます。
医療に関わる国家資格職とは、以下の職種です。
- 医師
- 歯科医師
- 薬剤師
- 保健師
- 助産師
- 看護師
- 准看護師
- 理学療法士
- 作業療法士
- 社会福祉士
- 介護福祉士
- 視能訓練士
- 義肢装具士
- 歯科衛生士
- 言語聴覚士
- あん摩マッサージ指圧師
- はり師、きゅう師
- 柔道整復師
- 栄養士(管理栄養士含む)
- 精神保健福祉士
上記のいずれかの国家資格を取得しており、5年以上かつ900日以上の勤務実績があれば、受験資格があります。 ただし、勤務実績は直接的な対人援助業務を行っている場合でなければなりません。
資格を取得していても、専門機関で教育業務や研究業務、事務などを行っている期間は、勤務実績に含まれないことに注意が必要です。
2. 生活相談員としての勤務実績がある
生活相談員は特別養護老人ホームやデイサービス、病院などで、利用者様やご家族様の相談対応や契約に関する手続きなどの業務を行う仕事です。
ケアマネジャーの受験資格を得るには、以下にあげる施設等で実務を経験する必要があります。
- 地域密着型特定施設入居者生活介護
- 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
- 介護老人福祉施設
- 介護予防特定施設入居者生活介護
3. 支援相談員としての勤務実績がある
支援相談員は介護老人保健施設で、利用者様やご家族様の対応や入所後のサポートを行う仕事です。生活相談員との違いは、支援相談員は介護老人保健施設で働く方を意味します。
そのため、支援相談員としてケアマネジャーの受験資格を得るには、介護老人保健施設で5年以上かつ900日以上の実務を経験した方が対象です。
4. 相談支援専門員としての勤務実績がある
相談支援専門員は知的・身体障がいがある方やご家族様に対して、日常生活上の相談やサポートを行う仕事です。
ケアマネジャーの受験資格を得るには、以下の業務で実務を経験する必要があります。
- 計画相談支援
- 障がい児相談支援
5. 主任相談支援員としての勤務実績がある
主任相談支援員は経済的な理由により、生活が困っている方に最適な社会資源の開拓やマネジメントなどの対応業務を行う仕事です。
ケアマネジャーの受験資格を得るには、生活困窮者自立相談支援事業にて、5年以上かつ900日以上の実務を経験する必要があります。
【注意】2018年よりケアマネジャーの受験資格に変更があります
ケアマネジャーの受験資格は、2018年からより厳しい制度に変更されています。
2017年までは介護等の業務を10年以上経験した方も受験資格が得られていましたが、2018年からは介護等の実務経験では受験資格を得られません。
ケアマネジャーを目指す方は、受験資格が以前と変更されていることに注意してください。
参考:公益財団法人 東京都福祉保健財団「東京都介護支援専門員(ケアマネジャー)令和4年度 東京都介護支援専門員実務研修受講試験」
ケアマネジャー資格の難易度や合格率はどのくらい?
ケアマネジャーの資格を取得するには、試験に合格しなければなりません。
では、難易度や合格率はどのくらいなのでしょうか。
ここでは、近年の受験者数や合格率などをもとに詳しく解説します。
2021年の試験は54,290名が受験し、23.3%が合格
2021年に行われたケアマネジャー試験の「 第24回介護支援専門員実務研修受講試験」では、受験者数54,290名のうち、12,662名が合格しました。
合格率にすると、23.3%です。
合格者を職種別にみると、介護福祉士の合格率が60.7%で最も高く、次いで看護師・准看護師が16.8%となっています。
ケアマネジャーの合格率は毎年20%前後
2021年のケアマネジャー試験の合格率が23.3%だったことに対して、合格率が低いように感じる方がいるかもしれません。 しかし、ケアマネジャーの合格率は、毎年20%前後の結果となることが多いです。
以下に、過去10年間のケアマネジャー試験の合格率を掲載します。
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
第15回(2012年) | 146,586人 | 27,905人 | 19.0% |
第16回(2013年) | 144,397人 | 22,331人 | 15.5% |
第17回(2014年) | 174,974人 | 33,539人 | 19.2% |
第18回(2015年) | 134,539人 | 20,924人 | 15.6% |
第19回(2016年) | 12,4585人 | 16,281人 | 13.1% |
第20回(2017年) | 131,560人 | 28,233人 | 21.5% |
第21回(2018年) | 49,332人 | 4,990人 | 10.1% |
第22回(2019年) | 41,049人 | 8,018人 | 19.5% |
第23回(2020年) | 46,415人 | 8,200人 | 17.7% |
第24回(2021年) | 54,290人 | 12,662人 | 23.3% |
ケアマネジャー試験の合格率は年によってばらつきはありますが、過去10年間を平均すると17.45%となります。過去10年間の結果から、ケアマネジャー試験の合格率は決して高いとはいえません。
ケアマネジャーの難易度は高い
ケアマネジャー試験は合格率が20%前後であることから、難易度の高さが想像できるかと思います。
難易度が高い理由は、以下のとおりです。
- 五肢複択方式の出題
- 出題数に対して試験時間が短い
- 合格するために高い正答率が必要
- 学習時間の確保が難しい
それぞれの理由を詳しくみていきましょう。
五肢複択方式の出題
ケアマネジャー試験の出題形式は、五肢複択方式です。五肢複択方式は、5つの選択肢から適切な答えを選択して回答します。
問題によっては5つの選択肢のうち1つを選ぶ問題もあれば、3つの回答を選ばなければならないものもあります。 五肢複択方式の問題はそれぞれの選択肢が正しいのか、間違っているのか判断しなければなりません。 選択した答えのうち、1つが正解であっても、もう1つが不正解であれば、その問題は不正解になってしまいます。
このような正確で深い知識が求められる出題方式により、難易度が高まっている傾向があります。
出題数に対して試験時間が短い
ケアマネジャー試験の問題は、介護支援分野が25問、保健医療福祉サービス分野が35問あり、合計60問となっています。 60問の出題数に対して、試験時間は120分です。 そのため、1問あたり2分で回答していかなければ、時間内にすべての問題を回答できません。
さらにケアマネジャー試験の出題方式は五肢複択方式であるため、すべての選択肢を確認しなければならず、1問あたりに時間がかかります。 出題数に対して試験時間が短いことが、ケアマネジャー試験の難易度を高めている理由の一つです。
合格するために高い正答率が必要
ケアマネジャー試験に合格するには、出題される介護支援分野と保険医療福祉サービス分野でそれぞれ70%の正答率を超える必要があります。 問題の難易度によって正答率は補正されますが、正答率70%は他の介護系の試験と比較して高い正答率です。
例えば、社会福祉士や介護福祉士の試験は、正答率が60%程度で合格となります。 高い正答率が必要になればなるほど、間違えられる問題は少なくなるため、ケアマネジャー試験は難易度が高いわけです。
学習時間の確保が難しい
ケアマネジャー試験を受験するためには、定められた職種で実務経験を積まなければなりません。 試験を受ける多くの方は、働きながら空いた時間でケアマネジャー試験の勉強をしなければならないため、学習時間の確保が難しいでしょう。ただでさえケアマネジャー試験は、専門的な知識が求められる難易度の高い試験です。難しい問題であるにも関わらず、学習時間を確保できなければ、試験の合格はより難しいものとなるでしょう。
ケアマネジャーになるためのステップ
ケアマネジャーになるには、試験の合格は欠かせませんが、合格すればケアマネジャーとしてすぐに働けるわけではありません。
ここでは、ケアマネジャーになるためのステップを段階ごとに詳しく紹介します。
1. ケアマネジャーの試験対策・試験に合格する
まず、ケアマネジャーになるには、試験に合格しなければなりません。 受験資格を満たし、試験の手続きを済ませたら、例年10月に実施されるケアマネジャー試験を受けましょう。 試験は1年に1度しか実施されません。 合格するには過去問を解いたり、十分に勉強したりすることなどの試験対策が大切です。
2. 介護支援専門員実務研修を受ける
無事にケアマネジャー試験に合格したら、介護支援専門員実務研修を受けます。
介護支援専門員実務研修は、ケアマネジャーとして必要な知識や技術を学ぶための試験に合格した方を対象に実施される研修です。 研修は87時間の実施が、国のカリキュラムによって定められています。
研修時間は定められていますが、実施内容や日程は開催する自治体によって異なる点があるため、詳しくは受講する自治体でご確認ください。 研修は講義だけではなく、実際に事業所で実務を体験する実務研修もあります。
3. 介護支援専門員資格登録簿へ登録して証明書を交付してもらう
介護支援専門員実務研修を修了したら、それぞれの都道府県で介護支援専門員資格登録簿へ登録申請を行いましょう。 問題がなければ、証明書として介護支援専門員証が交付され、ようやくケアマネジャーとして働くことができます。
4. ケアマネジャー業務に就任する
ケアマネジャーとして働けるようになったら、資格を活用してケアマネジャー業務に就きましょう。
以前まで働いていた職場でケアマネジャーとして働くのもよいでしょうし、ケアマネジャーとして新たな職場を探してみるのも良いかもしれません。
身につけたケアマネジャーの知識や技術を発揮できる職場で働きましょう。
ケアマネジャーに関する知識とFAQ
最後に、ケアマネジャーに関する知識とよくある質問をみていきましょう。
ケアマネジャーの資格は廃止される?
「ケアマネジャーの資格が廃止されるのではないか?」という声もあるようですが、現在のところ廃止される予定はありません。
廃止が懸念された背景には、ケアマネジャー試験の受験資格や事業所の管理者となる条件が厳しくなったことが挙げられます。
受験資格が厳しくなったことで、以前と比較してケアマネジャーとなる方が大幅に減少し、資格の廃止が不安視されたわけです。
また、2021年からは介護保険法の改定によって、居宅介護支援事業所の管理者になるには主任ケアマネジャーでなければならなくなりました。
主任ケアマネジャーになるには、ケアマネジャーとして5年以上従事していることやケアマネジメントリーダー養成研修を修了するなど、特定の条件を満たして、研修を受講しなければなりません。
そのため、すぐに対応できる事業所は少なく、廃業してしまうのでは?と不安が広まったこともケアマネジャー資格の存続が懸念される要因となっています。
しかし、実際はケアマネジャーの仕事は、高齢化が進み、適切な介護サービスを求める方が増加する日本では欠かせない仕事です。
廃止される事実はありませんのでご安心ください。
ケアマネジャーの受験資格に免除はある?
ケアマネジャー試験は、2015年までは国家資格を保有する方が受験する際に、一部の科目の試験が免除される制度がありました。
しかし、現在は免除制度がなくなり、すべての受験者が同じ試験を受けるようになっています。
免除制度が廃止された理由は、ケアマネジャーの質や専門性を向上させるためです。
無資格からケアマネジャーになるには?7〜8年かかる
無資格の方がケアマネジャーを目指す最初のステップとしては、介護福祉士の資格取得を目指すのがおすすめです。
介護福祉士の資格は、介護現場で3年以上の実務経験と実務者研修の修了により取得できます。
資格を取得後、さらに5年以上、介護福祉士として実務を経験すれば、ケアマネジャー試験の受験資格を得ることが可能です。
介護福祉士になるには、専門学校や福祉系の高校を卒業するルートなどもありますが、無資格の社会人の方が目指すのであれば、実務経験を積むルートが実践しやすいでしょう。
まとめ
ケアマネジャーは、介護サービスの需要増加が予想される日本で重要な仕事です。
利用者様に最適な介護サービスを提案するため、専門的な知識や技術が求められます。
資格を取得すれば、ケアマネジャーとして自身のキャリアアップにつながるでしょう。
ケアマネジャーになりたいと考えている方は、この記事を参考にして目指してみてはいかがでしょうか。
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