「高齢者や障がい者の日々の生活をサポートしたい」「安心して生活を送れるよう支援したい」との思いで、介護施設での勤務を検討している人は少なくありません。しかし、実際に仕事を選ぶ段階で、介護士とヘルパーという名称にいきあたり、どちらを目指すべきなのか、両者にどのような違いがあるのか悩んでしまうこともあります。
そこで、今回は介護士とヘルパーの違いや介護士と介護福祉士の違いなどをわかりやすく解説します。併せて、ホームヘルパー1〜3級が、現在のどの介護士の資格とつながっているのかも紹介します。
介護士とヘルパーに明確な違いはない
一般的に、日常生活を送るのに支障がある障がい者や高齢者の自宅を訪問し、身の回りの世話をしたり、介護サービスを提供したりする人をヘルパーもしくはホームヘルパーと呼びます。一方、介護士は、介護施設や病院などの医療機関で介護の仕事に就いている人全般を指すことが多い傾向です。
そのため、介護士とヘルパーに明確な違いはありません。そもそも、介護の仕事に従事する人を介護士もしくはヘルパーと呼ぶのも正式な資格名ではないため、介護職に従事していれば誰でも名乗れるのが実状です。
介護士と介護福祉士の違い
たとえ未経験・無資格でも、介護士として勤めることはできます。しかし、無資格の介護士として働く際、携われる業務の幅は狭くなります。例えば、食事や排せつの介助などの身体介護は、無資格で行うことはできません。
一方で、介護福祉士は介護職の国家資格です。未経験・無資格で介護業界で働き始めた場合は、実務経験を積むなかで介護職員初任者研修・介護福祉士実務者研修を順次取得し、介護福祉士の受験資格を得られます。介護福祉士の資格を取得すると、同じ職場でも給与面・待遇面に差が出るのは間違いありません。
多くの介護施設・医療機関では、資格手当を支給しています。さらに、介護福祉士が現場を束ねるリーダーを任されることも多いため、その分の役職手当が加算されることもあるでしょう。無資格の介護士と資格保有者の介護福祉士では、1ヵ月の給与に5万円ほどの差がつくこともあります。
また、対応できる介護業務の幅も増え、身体介護業務に携われることが大きな違いです。 看護職の資格や仕事内容については以下の記事でも解説しているため、あわせて参考にしてください。
資格なしでも介護士になれる?無資格でも出来る仕事とは
介護業界の職種・資格別の給与ってどれくらい?資格やスキルで収入アップを目指そう!
ヘルパーと介護福祉士の違い
介護福祉士とヘルパーの違いは、国家資格を取得しているかどうかです。介護福祉士は、国家試験に合格してからでなければ、名乗ることはできません。一方、ヘルパーは、無資格で名乗ることができます。
ただし、高齢者や障がい者の自宅を訪問し、在宅介護を行う場合は別です。各自治体で実施されている介護職員初任者研修、もしくは介護福祉士実務者研修に参加し、認定を受ける必要があります。介護福祉士の試験を受験するには、実務経験ルートの場合、3年以上の実務経験が必要です。しかし、介護職員初任者研修や介護福祉士実務者研修は、特定の資格や実務経験がなくても受けることができます。
国家資格保有者である介護福祉士と資格を持たないヘルパーの場合、施設によっては実務経験や介護知識・介護技術に差があると見なされ、待遇面で違いが出る可能性があるでしょう。そのため、正社員として働きたい場合は、介護福祉士の資格を持っているほうが有利です。就職先の選択肢も広がります。
ヘルパーの場合はアルバイトやパートなどの求人が多く、資格手当が出ないこともあって、給与面で差があるのが現状です。
参考:全国社会福祉協議会「福祉の資格」
介護福祉士とホームヘルパー1〜3級の違い
ヘルパーの正式名称は、ホームヘルパーです。介護業務に携わる人は、ホームヘルパー1〜3の資格を有していることが実質必須でしたが、2012年度末(2013年3月末)に資格制度が廃止されました。その後、介護職員初任者研修・介護福祉士実務者研修などに引き継がれ、現在にいたります。
ここでは、ホームヘルパーの資格制度がどのように改正されたのか、国家資格となる介護福祉士とどのような違いがあるのかを紹介します。
参考:厚生労働省「今後の介護人材養成の在り方について」
取得する資格に違いがある
介護福祉士は、介護福祉系資格の中で唯一の国家資格です。ルートによってもさまざまですが、例えば実務経験ルートの場合、実務経験を3年以上積み介護福祉士実務者研修などの必要資格を取得し、国家試験を受験して合格すると介護福祉士の資格が取得できます。養成施設ルートの場合、養成施設を卒業して国家試験を受験して合格することで介護福祉士の資格を得ることができます。
一方でホームヘルパーとして働く場合は、ホームヘルパー1〜2級の資格制度がありましたが、上述したように2013年3月末に廃止されました。2013年4月以降、介護知識・技術を客観的にはかるため設けられたのが、介護職員初任者研修と介護福祉士実務者研修です。
それぞれに介護職員初任者研修がホームヘルパー2級、介護職員実務者研修がホームヘルパー1 級に代わる研修制度として登場しました。前者は130時間のカリキュラムを修了し、筆記試験に合格すれば資格を取得できます。後者は、無資格の人は450時間、介護職員初任者研修を終えた人は320時間のカリキュラムを経て得られる資格です。
ホームヘルパー資格制度との違いは、「介護技術により重点が置かれた」「筆記試験が加わった」ことの2点です。また、介護福祉士実務者研修には、医療的ケアの研修が加わり、ホームヘルパー1級の資格を取得している場合でも、実務者研修の受講が必要になりました。
参考:社会福祉振興・試験センター「介護福祉士国家試験」
給与にも違いがある
介護福祉士の仕事は、利用者の身体に直接触れて行う身体介助や、生活援助、利用者やその家族へのアドバイス・指導などです。現場の責任者として、介護職員に対する指導も行うこともあります。責任を持つ立場の職種のため、「活躍の幅が広い」「仕事の選択肢が豊富」といった点も介護福祉士の特徴です。
正社員としての募集も多く、資格手当なども支給されるため、給与面で優遇されています。介護福祉士の経験を積んでケアマネジャーを目指す道もあり、キャリアアップも夢ではありません。一方、ホームヘルパーは、身体介助や生活援助がおもな仕事です。勤務先は、訪問介護事業所(ヘルパーステーション)がメインで、介護福祉士の指示のもとで仕事を行ないます。
実務が中心で、就職先の選択肢は介護福祉士より狭まってしまいます。また、アルバイトもしくはパートの求人が多く、給与面ではさほど恵まれていないのが実際です。多くの介護施設・企業が時給制を採用していて、賞与の支給がないケースもあります。
介護職員実務者研修(ホームヘルパー1級)はどんな資格?取り方や取得後の仕事内容を解説
介護職員初任者研修(ホームヘルパー2級)はどんな資格?取り方や取得後の仕事内容を解説
介護福祉士とホームヘルパー1〜3級の将来性
国家資格の介護福祉士と、ホームヘルパー1〜3級の将来性はどのようなものでしょうか。所有している資格によって、仕事の領域や幅が異なるため、採用する介護施設の待遇も変わってきます。ここでは、それぞれの仕事の幅や現場での実用性、キャリアプランなどを確かめていきます。
介護福祉士の将来性
日本の人口は、2008年をピークに減少していますが、75歳以上の高齢者は年々増加しています。超高齢化社会へと急進する中で、介護サービスの需要も増えてきました。介護業界は、成長産業として注目されていて、その中でも介護福祉士には大きな注目が集まっています。
介護福祉士は、介護に関する唯一の国家資格であり、社会的にも高く評価されています。施設の運営上、指導的な立場の人材として介護施設には欠かせません。今後の介護業界で介護福祉士の資格は、一生使えるものとして認識されるでしょう。
業界のニーズが増えていることもあり、出産や育児などで一時的に現場を離れても復帰しやすいはずです。将来性のある職種といって過言ではありません。
ホームヘルパー1〜3級の将来性
無資格でも勤務できる介護職ですが、専門的な知識を必要とする場面もたくさんあります。その中で、旧ホームヘルパー1〜3級の資格を取得していれば、専門的な知識を学ぶ姿勢をアピールできるはずです。旧ホームヘルパー1級に相当する介護福祉士実務者研修を取得すると、介護に関する、より専門的な知識を得ることができ、介護福祉士への道が広がります。
介護福祉士になるためには、ルートによっては介護福祉士実務者研修の取得が必須です。計450時間におよぶカリキュラムを修了すれば、介護の現場で役立つ知識を一通り身につけることができます。
たんの吸引や経管栄養などの医療的ケア・福祉用具の使用法も学べるため、介護業務を幅広く行える人材として、採用で有利になるでしょう。場合によっては、訪問介護事業所のマネジメントを行うサービス提供責任者として活躍できるかもしれません。責任のある役職に就けば、昇給も見込めるでしょう。
介護士ができる医療行為については、次の記事で詳しく解説しています。ぜひあわせて参考にしてください。
介護士でも経管栄養ができる!違法にならないために必要な研修とは
喀痰吸引等研修とはどんな資格?取り方や取得後の仕事内容を解説
まとめ
慢性的に人材不足である介護業界では、高齢者や障がい者の直接的な支援を行なっている介護福祉士とホームヘルパーの需要は高いといえます 。とはいえ、介護福祉士とホームヘルパーとでは、資格の有無や携われる業務などに差があり、勤務先や給与面でも違いがあります。長く介護職に就きたいと考えている人は、介護職の唯一の国家資格となる介護福祉士を目指し、キャリアアップを目指すのがおすすめです。
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