日本の高齢化率(全人口に対する65歳以上の高齢者の割合)は、令和2年10月時点で28.8%となっています。これは「超高齢社会」に突入していることを示しているので、介護スタッフのニーズも今後さらに高まることは間違いありません。
しかし、ひと口に介護の資格といっても数が多いため、どのようなものがあるのか詳しく知りたい方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、介護の仕事に関する資格19種の概要、その資格を活かせる職場をそれぞれ紹介します。
ケアマネージャー
ケアマネージャー(介護支援専門員)とは、介護保険サービスを必要としている方へのマネジメントを行なう公的資格です。ケアプラン(サービス計画書)の作成や利用者との面談、各サービス事業者との調整など幅広い業務に携わります。
ケアマネージャーの資格を取得するためには、試験に合格したうえで実務研修を修了しなければなりません。また、試験を受けるためには、あらかじめ一定の実務経験を満たす必要があります。
職場は特養老人ホームや介護療養型医療施設、居宅介護支援事業所などが一般的です。
社会福祉士
社会福祉士とは、高齢者や障がい者、生活に困窮されている方を対象に、日常生活に必要なサポートを行なう国家資格です。「ソーシャルワーカー」とも呼ばれており、福祉サービスに関する事務業務や電話相談、各サービス事業者との調整に携わります。
この資格を取得するためには、受験要件を満たしたうえで国家試験に合格しなければなりません。
社会福祉士として働く場合、福祉事務所や児童相談所、地域包括支援センターなどがおもな職場となります。
生活相談員
生活相談員とは、介護施設を利用するための契約手続きや調整、利用者からの相談業務に携わる職業です。ほかの介護スタッフをサポートしたり、窓口業務にも対応したりするなど、マルチプレーヤーとして活躍します。
生活相談員という資格はありませんが、原則として「社会福祉士」「精神保健福祉士」「社会福祉主事任用資格」のいずれかを取得していることが就業要件です。
職場の例としては、デイサービスや特養老人ホームなどが挙げられます。
福祉用具専門相談員
福祉用具専門相談員とは、車椅子や電動ベッドといった福祉用具の専門家としてサポートを行なう公的資格です。利用者の状態や住環境を踏まえながら、適切な福祉用具を選定したり、アドバイスを実施したりする業務がメインとなります。
この資格を取得するためには、指定講習を修了するか、もしくは要件で定められている国家資格(介護福祉士や社会福祉士など)を保有していることが必要です。
おもな職場は福祉用具の販売店やレンタル事務所、介護老人保健施設となります。
ガイドヘルパー
ガイドヘルパーとは、一人で外出することが難しい高齢者や障がい者に同行して、必要なサポートを行なう公的資格です。外出における移動の介助をはじめ、食事・排泄のお世話や手続きの代行などにも携わります。
ガイドヘルパーには以下の3つの資格があり、それぞれ研修を修了することで取得可能です。
- 同行援護従事者養成研修(視覚障害者ガイドヘルパー)
- 全身性障害者ガイドヘルパー養成研修(全身性障害者ガイドヘルパー)
- 行動援護従事者養成研修(知的・精神障害ガイドヘルパー)
一般的に訪問介護事業所で働く方が多いですが、介護施設やグループホームも候補となります。
介護職員初任者研修(ホームヘルパー2級)
介護職員初任者研修(ホームヘルパー2級)とは、介護の基本的なスキルを学んでいることの証明となる入門的な公的資格です。介護業界への就職・転職で有利に働くのはもちろん、給与アップやキャリアアップにもつながります。
この資格を取得するには、10科目の講義・演習を受けたうえで、修了試験に合格しなければなりません。
介護業界全般で活かせる資格なので、デイサービスや特養老人ホーム、訪問介護事業所などさまざまな職場で働けます。
介護福祉士実務者研修(ホームヘルパー1級)
介護福祉士実務者研修(ホームヘルパー1級)とは、より高度で応用的な介護スキルを学んでいることを証明する資格です。医療的ケアを学ぶので仕事の幅が広がるほか、介護福祉士試験の受験要件にもなっているので、さらなるキャリアアップにも役立つでしょう。
資格取得には20科目の講義・演習を受けなければなりませんが、一定の条件を満たせば、一部科目が免除されます。旧ホームヘルパー1級の資格を持っている場合、「医療的ケア」と「介護過程Ⅲ」を受講すれば修了です。
この資格を取得すれば、介護施設のチームリーダーや訪問介護のサービス提供責任者として働けます。
レクリエーション介護士
レクリエーション介護士とは、介護施設などで実施されるレクリエーションの運営・提供に携わる民間資格です。レクリエーションの企画、高齢者のコミュニケーション促進などがおもな業務となります。
この資格は1級・2級に分かれていますが、どちらも指定講座を受講したうえで、試験に合格することが必要です。なお、1級は2級を取得しないと受講・受験できません。
レクリエーション介護士のスキルは、特養老人ホームやデイサービスで活かせます。1級を取得している場合、リーダーや講師としても活躍できるでしょう。
介護事務管理士
介護事務管理士とは、その名のとおり介護事務のスキルを証明する民間資格です。受付や会計といった一般的な事務業務はもちろん、介護報酬請求(レセプト作成)など専門的な業務にも携わります。
この資格を取得するためには、介護事務管理士技能認定試験に合格しなければなりません。受験資格は特に設けられておらず、在宅で受験できるケースもあるので、ハードルは比較的低いといえるでしょう。
介護事務管理士として働く場合、デイサービスや特養老人ホーム、訪問介護事業所などが候補となります。
介護予防運動指導員
介護予防運動指導員とは、高齢者が要介護とならないためのサポートを行なう民間資格です。介護予防のプログラムを作成したり、筋力トレーニングの指導を行なったりします。
資格取得の要件は、指定の養成講座を受講することです。なお、受講要件も定められており、特定の国家資格を保有(卒業・取得見込み含む)しているか、介護職員初任者研修などで2年以上の実務経験が求められます。
総合病院や介護施設のほか、スポーツクラブやフィットネスクラブからのニーズも高い資格です。
社会福祉主事任用資格
社会福祉主事任用資格とは、都道府県や市区町村における福祉業務に携わるとき必要となる資格です。福祉事務所のケースワーカーとして生活保護業務に携わったり、スーパーバイザーとしてケースワーカーの指導・管理を行なったりします。
この任用資格自体に試験はなく、大学や認定講習などで特定の科目を修了すれば取得可能です。ただし、福祉事務所で働く場合、公務員試験に合格する必要があります。
民間の福祉施設で働く場合でも、スキルを証明する資格として役立つでしょう。
生活支援員
生活支援員とは、高齢者や障がい者の日常生活をサポ―トする職業です。食事・入浴・排泄といった身の回りのお世話はもちろん、掃除・洗濯を手伝ったり、農耕や工芸など職業訓練も行なったりするなど、幅広い業務に携わります。
生活指導員という資格はなく、実務経験がなくても就業可能です。ただし、「社会福祉士」や「介護福祉士」といった資格を保有しているほうが、就職や待遇面で有利になりやすいでしょう。
おもな職場としては、グループホームや就労継続支援事業所などが挙げられます。
精神保健福祉士
精神保健福祉士とは、精神的な病気や障がいを抱える方たちの社会復帰をサポートする国家資格です。本人や家族へのアドバイスや社会復帰に向けた訓練、各機関との調整といった業務に携わります。
この資格を取得するためには、大学や短大などで受験要件を満たしたうえで、国家試験に合格しなければなりません。科目数が多いので、入念な準備が必要となります。
精神保健福祉士の職場ですが、心療内科クリニックや保健所、地域生活支援センターなどが代表的です。
認知症ケア専門士
認知症ケア専門士とは、認知症に関する高度な知識やスキルを習得していることを証明する民間資格です。ほかの介護スタッフに認知症の正しいケア方法を指導する、相談窓口に 訪れた方にアドバイスを行なうといった業務に携わります。
一次試験と二次試験に合格すると資格を取得できますが、受験要件として認知症ケアの実務経験が3年以上と定められている点に注意が必要です。
認知症ケア専門士は特養老人ホームやグループホーム、介護付き有料老人ホームなどで活躍しています。
認知症介護基礎研修
認知症介護基礎研修とは、認知症介護で求められる知識やスキルを習得するための研修です。認知症の方を介護するスタッフのうち、無資格の方は2021年4月から受講が義務化されています。3年の経過措置が設けられているため、その期間内に受講すれば大丈夫です。
指定された講義・演習を受講すれば修了となるため、試験などは実施されません。
認知症介護基礎研修を取得した場合、養護老人ホームや訪問介護事業所など、無資格の方に比べて職場の幅が広がります。
認知症介護実践者研修
認知症介護実践者研修とは、より質の高い認知症介護ができる専門職員を養成するための研修です。認知症ケアに関する高度な知識やスキルを学ぶことができるのはもちろん、給与アップやキャリアアップでも有利に働くでしょう。
自治体によって受講要件は異なりますが、だいたい2年以上の実務経験を求められるケースが多く見られます。必要なカリキュラムを修了すれば取得できるため、試験はありません。
有料老人ホームや特養老人ホームなど、高齢者向け介護施設でのニーズが高い資格です。
認知症介護実践リーダー研修
認知症介護実践リーダー研修とは、より効果的な認知症ケアを指導できるチームリーダーを育成するための研修です。認知症ケアに関する知識やスキルをより一層深められるので、さらなる給与アップやキャリアアップを実現できます。
この研修を受講するためには、先述した認知症介護実践者研修を修了しなければなりません。また、5年以上の実務経験も求められる点も要チェックです。
その分、介護業界でのニーズも高く、認知症ケアを行なう介護施設や病院、訪問介護事業所などで働けるようになります。
認定介護福祉士
認定介護福祉士とは、介護福祉士の上位にあたる民間資格です。利用者に対する介護業務はもちろん、介護福祉士のリーダーとして指導を行なったり、看護師やリハビリスタッフとの連携を図ったりするなど、幅広い役割が求められます。
資格取得には介護福祉士として5年以上の実務経験が求められるほか、指定された研修を100時間以上受講する必要があるなど、ハードルはかなり高めです。
認定介護福祉士になれば、特養老人ホームや小規模多機能型居宅介護でのリーダーとして活躍できるでしょう。
喀痰吸引等研修
喀痰吸引等研修とは、医療的ケアである「たんの吸引」や「経管栄養」といったスキルを習得するための研修です。以前は医師や看護師などが行なっていましたが、2012年の法改正により介護スタッフでの対応も可能となりました。
この資格を取得する場合、第1号研修・第2号研修・第3号研修のいずれかを受講する必要があります。それぞれ受講時間や対応範囲が異なっているため、目的に合わせて選択しましょう。
喀痰吸引等研修が役立つ職場は、障碍者福祉施設や介護老人保健施設などが挙げられます。
まとめ
高齢化がますます進行している日本では、介護スタッフの確保が急務となっています。無資格・未経験で採用してくれるケースもありますが、今後のキャリアや待遇面を踏まえると、何らかの資格を取得しておいたほうが有利です。
また、介護の資格はとても数が多く、内容や難易度もそれぞれ異なるので、事前にしっかりチェックする必要があります。自分のやりたい仕事や給与、活かせる経験やスキルなどを考慮しつつ、取得すべき資格を検討してみてください。
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