高齢者の生活全般をサポートする介護士は、業務内容や仕事のやりがいに比べて給料が安いことが社会問題となっています。長年、介護業界が慢性的な人材不足に悩まされていることも、収入面が十分ではなく、将来性を感じられないことに理由があるからかもしれません。
待遇が低い水準のままでは、結婚して家庭を持つ未来像が描きにくいため、結婚をあきらめたり、婚約をきっかけに他の業界に転職したりする介護士もいます。介護士を続ける以上、結婚しにくいといわれるのは本当なのでしょうか。今回は、介護士として働く人の結婚事情について紹介します。
介護士は結婚しにくいといわれる理由
一般的に、介護士の働き方のイメージは肉体的にも精神的にもハードです。特に、介護士は、以下のようなネガティブな印象を持っている人も少なくありません。
- 不規則な働き方をしている
- 深夜勤務が多い
- 業務内容のわりに賃金が低い
- 体に負担が大きい
- 神経を使う
せっかく結婚ができても、不規則な勤務時間のため、夫婦の時間がすれ違いになっては本末転倒です。また、がんばって働いているのに収入面で厳しい生活を強いられるようでは、介護士になることが不安でためらってしまう人がいてもおかしくありません。
「介護が必要な人の手助けをしたい」「誰かのために役立ちたい」「介護を一生の仕事にしたい」など、熱い思いを秘めて介護士になった人もいるでしょう。しかし、なぜ介護士は結婚がうまくいかないといわれるのでしょうか。
まず、介護士が結婚しにくいといわれる理由を2つ解説します。
4人に1人が半年で離職している
2019年12月に、厚生労働省職業安定局がまとめた「医療・介護分野における職業紹介事業 に関するアンケート調査」があります。集計結果によると、離職した介護職員のうち、民間職業紹介事業者を経由した就職者の3ヵ月以内の離職率は28.2%、6ヵ月以内の離職率は38.5%でした。また、民間職業紹介事業者以外を経由した就職者の離職状況は、3ヵ月以内離職率で17.9%、6ヵ月以内の離職率では25.6%。
つまり、介護職員として介護施設や介護事業所に就職をしても、3~6ヵ月以内に4人に1人以上の介護士が勤務先を退職しているのです。
このほか、前職の離職理由には、多い順に以下のようなものがあります。
【前職の離職理由】
- 職場の人間関係の難しさ(上司、同僚等):31.5%
- 休暇が取りづらかった:18.5%
- 勤務時間が長い:16.4%
職場での働き方が人材定着の大きなネックとなっているようです。せっかく、介護士として就職や転職を実現しても、なぜこれほどの介護士が就職先を離れてしまうのでしょうか。理由としては、介護業界の待遇改善が進んでいないことが大きいのではないかと指摘されています。
採用しても定着しなかったり、必要な人材が集まらなかったりする声は、介護業界の経営側から広く聞こえてくる話です。実際に、データで介護業界の離職状況を確認しても、その現状が浮き彫りになっているといえます。
以上のような離職率の高さが、不安定な働き方を続ける介護士を増やしている面も少なくありません。
参考:厚生労働省「医療・介護分野における職業紹介事業 に関するアンケート調査 集計結果 」
収入面に不安がある
介護士と結婚の関係の大きなテーマの一つは、収入面への不安です。厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、「介護職員」の平均給与額は、31万5,850円でした。一方で保有資格がない人の平均月収は27万5,920円となっています。介護職員といっても資格の有無で約3万9,930円の差があることがわかるでしょう。
介護士と結婚の関係の大きなテーマの一つは、収入面への不安です。厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、「介護職員」の平均給与額は、31万5,850円でした。一方で保有資格がない人の平均月収は27万5,920円となっています。介護職員といっても資格の有無で約3万9,930円の差があることがわかるでしょう。
このように、介護士は職場環境や収入面などの待遇の問題が将来設計に大きな影を落としています。介護士自身の今後の生活にプラスして、結婚相手と家庭を持つのにネガティブなイメージを抱いてしまうのは無理もありません。
介護士の平均給与については、以下でも詳しく紹介しているので合わせてご覧ください。
女性介護士はモテる?
介護士を性別で見ると、女性介護士は仕事柄、相手の気持ちを理解したり、きめ細かなお世話ができたりする人といったイメージが強いため、婚活で有利に働く可能性があります。
モテる女性介護士には次のようなポイントがあると考えられます。
相手の話を聞く力に長けている
病気や障害で心身機能や認知機能が低下した高齢者と数多く接するため、高いコミュニケーション能力を持つ女性介護士は少なくありません。介護の現場では、高齢者には笑顔で気持ちよく接する必要があるため、優しい笑顔の女性介護士を見て気持ちが引かれる男性も多い傾向です。
また、介護士は現場で上司や部下、同僚をはじめ多彩な職種のメンバーとチームワークを組んで仕事をしています。利用者の家族や施設外の関係機関の人と関わる場合もあるなど、日頃からさまざまな人と会話をして仕事を進めなければなりません。
自然に相手の立場に立って話をしたり、言葉から真意をくみ取って振る舞ったりする意識が身につきます。
相手を思いやる気持ちが人一倍強い
要介護者のなかには、自分の思いや体調の変化をうまく他人に伝えられない人もいます。言葉に障害があったり、認知機能が低下したりしている相手と接するため、介護士は相手の立場に寄り添ったサポートをしなければなりません。
そのため、相手の気持ちを推し量る力が身について、思いやりのある態度で接することができます。介護の仕事で相手を思いやる気持ちを養っている女性介護士は、異性としてとても魅力的に見えます。
出会いさえあれば結婚できる
介護士の経験やスキル、資格は全国どこに行っても通用します。近年、共働きで女性も働いて欲しいと望む男性が増えていることもあって、介護士のニーズがある以上、結婚後も働き続けることができます。経済面で安心して結婚生活を送れることもモテる一因です。
「女性介護士=優しい、手に職がある」というイメージは、婚活でも有利に働きます。女性介護士で働いていれば職場恋愛のチャンスもあります。ハードなワークスタイルでなかなか出会いが見つけられない場合、男性職員との出会いをきっかけに結婚へと発展しやすくなります。
このように、仕事を通じて人間的な魅力を磨いている女性介護士は、男性から注目を集める職業です。
介護士には将来性がある
高齢化社会が加速する日本で、介護のニーズはますます高まっています。厚生労働省の「介護分野の最近の動向」(平成28年2月17日)によると、要介護率が高くなる75歳以上の人口は2025年に2,179万人になると予測されています。介護保険制度がスタートした2000年に比べて、2倍以上の伸び率です。
介護士の収入は今後上がっていく見込み
働き方改革がはじまって以来、社会を支える大切な職業となる介護の仕事が脚光を浴びています。団塊の世代が後期高齢者になる2025問題もあり、介護人材のニーズはとどまるところを知りません。
国や介護業界をあげて、介護士の待遇改善進めています。例えば、従来からある処遇改善加算に加えて、2019年10月に新設された介護職員等特定処遇改善加算はその現れです。
国は、経験や技能を持つ介護職員の待遇を改善するため、勤続年数10年以上の介護福祉士の給与で月額平均8万円程度アップを目指しています。
業界全体で大切な介護士の離職を防いで、人材を確保する動きも進んでいて、将来的に介護士の収入は徐々にアップしていく見込みです。
介護職員処遇改善加算については、以下の記事でも詳しく紹介しているので合わせてご覧ください。
参考:厚生労働省「介護分野の最近の動向」/「介護人材の処遇改善について」
働き方を柔軟に選べる魅力がある
介護士の資格は、入門的資格の介護職員初任者研修をはじめ介護福祉士実務者研修、介護福祉士のほか、ケアマネジャーなど多彩な種類があります。特に、介護福祉士や、介護現場で経験を積んで目指せるケアマネジャーは介護士にとって王道のルートです。
介護業界で役立つ資格については以下の記事もご覧ください。
また、介護事業所には24時間体制で常時介護を行なう特別養護老人ホームや介護付有料老人ホームをはじめ、日中勤務のデイサービスやデイリハ、パートも多く活躍している訪問介護など、活躍の場が広がっています。
個人の生き方に合わせた働き方ができるのも、介護士の魅力の一つです。
仕事と子育てを両立しやすい
介護施設には、シフト制で時間の都合が付きやすい職場や正社員から契約社員、パートなど雇用形態を選びやすい事業所も多くあります。
また、女性が多く活躍している介護の現場のなかには、託児所や保育園を設置していたり、育児をしていたりする女性介護士が休みを取りやすい環境を持つ事業所も少なくありません。
子どもが保育園や学校に行っている間だけ、パートで短時間勤務をする女性介護士も多いため、育児をしながら介護の仕事を続けやすい職業です。
まとめ
これまで、介護士は結婚しにくいといわれてきました。しかし、社会の進展とともに収入面の改善や世の中の見る目が変化してきていて、介護士の将来は少しずつ明るい兆しを見せています。
また、女性介護士は仕事のスキルで培ったコミュニケーション能力や仕事に対する責任感で、男性からモテやすい職業です。介護士だからといって結婚をあきらめる時代は終わりに近づいています。
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