介護士は、普段から仕事が忙しい職業ですが、あまりの忙しさから目標を見失ってしまう人も少なくありません。しかし、目標を立てて仕事をしなければ、スキルアップなどがあと回しになってしまい、「気付けば何年も経っていた」ということも。本記事では、介護士が目標を設定するメリットや、どのような目標を立てたら良いのか、目標を立てる際の注意点などを説明します。
介護士が目標を設定するメリット
ビジネスでは、目標達成のためにPDCAサイクルを回すことが大事といわれます。PDCAとは、以下の4項目の順に繰り返しを行なうことで目標達成に近づくフレームワークです。
- 計画(Plan)
- 実行(Do)
- 改善(Check)
- 行動(Action)
PDCAサイクルは、1950年代にアメリカの統計学者ウィリアム・エドワーズ・デミング博士と、ウォルター・シューハート博士によって提唱された考え方で、もともとは品質管理に関する手法の一つです。
介護士の場合でも、目標を立てることは、施設の目標達成だけではなく、個人にもさまざまなメリットがあります。
仕事のモチベーションが上がる
介護士としての目標を立てることで、そこに向かって仕事を行なうモチベーションを上げることができます。目標がなく、日々の仕事に追われているだけでは、仕事へのやりがいを見つけることができず、水面下の課題を発見したり、課題を改善したりする思考は得られません。
目標達成に向けた行動を起こすことで、新たなスキルを身につけたり、目標達成で仕事への充実感が得られたりします。仕事に対して、受動的な態度から能動的に取り組むことが可能です。
将来像をイメージしやすくなる
目標を設定することで、自分の将来の明確化が可能です。目標を達成するためにするべきことや、目標を達成するうえで障害となっている課題が浮き彫りとなります。漠然と「5年後はチームリーダーになりたい」と思うだけではなく、「チームリーダーになるためには、何をいつまでに達成しておかないといけないのか」を考えることが大切です。これにより、具体的な将来像が浮かんできます。
スキルアップや業務効率化につなげられる
目標の設定にあたって、自分のスキルの棚卸しにも役立ちます。目標達成のためには、「今の自分に足りないスキルは何なのか」「良いサービスを提供するためには何が必要なのか」などを考えることが大切です。必要なスキルが明らかになれば、業務効率化のアイデアが浮かぶでしょう。
また、目標は1つではなく、大きな目標を実現させるためには、どのようなことを達成する必要があるのかといったように細かく目標を立てると、計画的な行動が期待できます。
経験年数別の目標の立て方
個人の目標は、経験年数によって内容やレベルが大きく異なるため、ここでは経験年数に応じた目標の立て方の一例を説明します。
新人介護士の目標の立て方
経験3年以内の新人介護士が立てる目標の一例は、「介護職の基本的知識や技術を習得し、自主的に考えられるようになること」が挙げられます。一見、あたりまえのように感じられますが、なかなかできないものです。
新人のうちは、先輩から指示を受けて作業することが多い傾向ですが、ただ指示されたことをこなすだけでは成長していきません。指示を受けた意図を考えたり、どうすればより良い仕事ができるのか工夫したりするなど、自主的に考える癖をつけましょう。
目標達成したかどうか実感が湧きにくい場合は、スキルアップも兼ねて「介護職員初任者研修」「介護福祉士実務者研修」などの資格を受けることもおすすめです。介護の基礎が体系的に学べ、実践につながる資格のため、将来的に介護職員としてキャリアアップを考える際にも役立つでしょう。
取得の際は、所定の講座や演習を受ける必要があります。場合によっては、勤務時間中に受講もできるため、上司と相談のうえ、資格取得を目指しましょう。
中堅介護士の目標の立て方
経験が3年を超えて中堅レベルになると、基本的な介護業務がこなせるだけではなく、自ら課題を率先して解決したり、後輩の育成を任されたりする立場となります。目標の一例としては、「利用者ごとに合わせたケアを行ない、少しの変化に気付けるようになること」などです。
利用者ごとに合わせたケアを通じて、応用的なスキルが身につき、新人レベルから抜け出せるでしょう。また、「緊急時に物事を冷静に判断し、かつ臨機応変な対応をすること」も、大事な目標です。業務以外の目標としては、マネジメント能力が挙げられます。
現場のリーダーレベルに求められるマネジメント能力はもちろん、さらに責任が重くなる役割を担う場合を想定して、あらかじめ学ぶことが必要です。キャリアアップの資格としては、「介護福祉士」「ケアマネージャー」「サービス提供責任者」「社会福祉士」などがあります。
各資格で想定される役割が異なるため、「自分が将来的にどのようにスキルアップしたいのか」を明確にしたうえで、資格を選びましょう。
ベテラン介護士の目標の立て方
経験が10年を超えるベテラン介護士となると、目標はさらに高度になります。個人やチームレベルを超え、事業所全体のことを考えることが必要です。そのため、「介護サービスの質を向上させるため、業務の改善や新たな取り組みを提案する」などの目標が考えられます。
また、緊急時には臨機応変な対応だけではなく、他の部署の担当者や関係各所との連携を取ることも必要です。スムーズに物事が進むように、普段から他の組織の人たちとコミュニケーションを取っておきましょう。
キャリアアップの資格としては、「認定介護福祉士」「主任介護支援専門員」など、より専門性の高いものが挙げられます。資格によっては、実務経験やリーダーとしての経験が受験条件になることもあるため、ベテランでなければ取得できない資格といえるでしょう。
また、キャリアアップによる転職も視野に入れておくことが大切です。
目標設定の失敗例
目標を立てることは大切です。しかし、自分が今持っているスキルや、想定される成長度合いを大幅に超えるような高い目標を設定してしまうと実現できず、目標を立てた意味を失ってしまいかねません。また、日常業務とあまり関係のない目標を立ててしまうと、目標達成に近づかない可能性もあります。
ここでは、目標設定における失敗例を紹介します。
現実的ではない目標を立ててしまう
個人の目標は、実際に達成できる範囲内で設定しましょう。もちろん、簡単にできてしまう目標を立てても仕方がありません。とはいえ、理想を高く持ちすぎて目標が高すぎてしまうと、結局自分の成長が感じられずに仕事への意欲が低下したり、自信を失ったりすることもあります。
大きな目標を立てたい場合は、ゴールに達するまでの小さな目標をいくつも段階的に設定することが大切です。小さな目標を達成していけば、最終的な目標の達成につながります。
目標があいまい
目標があいまいでは失敗する可能性が高くなります。具体的な内容と、定量的な評価を立てたほうがよいでしょう。期限を決めておかないと、いつまで経ってもゴールに達せず、ずるずると続けてしまう可能性があります。
最終期限を決め、逆算してどのような作業をいつまでに行なうべきかを明確にすることが必要です。また、単に「介護職でがんばる」といったあいまいな目標ではゴールがわかりにくくなります。そのため、例えば以下のような具体的な内容や数字で表せる目標を立てることがおすすめです。
- 〇〇の資格を6月に取得する
- 先輩への日次報告を100%行なう
まとめ
今回は、介護士の目標設定の重要性を説明しました。もちろん、目標設定だけでなく、自分のスキルの棚卸しも大切です。目標設定は、スキルアップにつながり、ひいてはより良い環境の職場への転職も期待できます。まずは、仕事における自分の立ち位置を見つめ直してみましょう。
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