岸田政権肝いりの政策として注目されている「看護師・介護士・保育士の賃上げ」ですが、本当に実行されるのだろうか?と不安に思っている方も多いのではないでしょうか。
2022年2月から該当する職種に従事する労働者の賃金を3%程度(9000円)引き上げる予定です。
今回の記事では、この賃上げがどのような形で実施されるのか確認し、さらにこの政策が与える業界への影響についても見ていきます。
賃上げ政策についておさらい
岸田政権の打ち出した「看護師・介護士・保育士の賃上げ政策」がいよいよ始まります。そこで、本題に入る前に2022年初頭の賃上げ政策について確認しましょう。
そもそも賃上げ政策とは?
看護師・介護士・保育士などの職種の賃金が公的に決まるのはご存じでしょうか?
岸田総理はこれらの職種の人の賃金が公的価格にもとづいて決まるにも関わらず、仕事内容に比べて報酬が十分でないと問題視しました。そこで発表されたのが「賃上げ政策」です。
この政策で率先して介護士、看護師、保育士などの賃金を引き上げ、それをきっかけとした民間事業所の賃金引き上げも期待しているようです。
以下の記事で賃上げ政策を詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
岸田総理「看護師・介護士・保育士の賃金アップ、2022年2月実施へ」具体的な引上げ金額や方針について│業界ニュース
参考:自民党 「岸田文雄新総裁記者会見(2021.9.29)」
賃上げの実施スケジュール
この賃上げ政策は、2022年2月から、全職種一斉に適用されます。ただし、補助金の支給を希望する事業所に限ります。
介護士・保育士は収入の3%程度(月額9000円)、看護師は1%程度(月額4000円)の引き上げが行われ、看護師については2022年10月から3%(9000円程度)になると言われています。
対象範囲の拡大や10月以降の対応などに関しては、令和4年度の予算編成過程で検討されます。
参考:首相官邸 「岸田内閣総理大臣記者会見(2021.12.21)」
賃上げが本当に行われているかを二重でチェック
それでは、この賃上げ政策が実際にはどのように行われていくのか確認しましょう。
二重でチェックすることで確実に賃上げを行う
該当する職種の方の中には、「本当に自分の職場でも賃上げされるのだろうか?」と不安に思う人もいるかと思います。
そういった不安をぬぐうべく、政府は原資となる補助金が賃上げに確実に使われるように二重チェックを実施します。
補助金は各事業所に配られるため、しっかりと現場のスタッフの賃金上昇に反映されるのかを自治体が確認し、仮に賃上げに使用されていない場合は事業所に補助金の返還を求めることとなっています。
気になるチェックの手順
実際に行われる二重チェックの手順は以下の通りです。
- 各事業所が「処遇改善計画書」を作成(令和3年度内の賃上げ実施が条件)
- 都道府県に「処遇改善計画書」を提出し、都道府県がそれを確認
- 都道府県が交付を決定し、補助金を事業所に交付
- 事業所は「処遇改善実績報告書」を都道府県に提出
※要件を満たさない場合は、補助金を返還
このように、各事業所に対し、補助金交付の「前後」でそれぞれ書類を提出させることで自治体による二重チェックを行います。
また、賃上げの要件を満たしていないと補助金の返還を求められてしまうという条件から、各事業者には徹底した賃上げの実施が求められます。
参考:厚生労働省 「介護職員処遇改善支援補助金について(報告)」
賃上げ政策が業界を変える!
岸田政権肝いりの政策ですが、果たしてこの賃上げは一時的なもので終わってしまうのでしょうか。ここでは、賃上げ政策が業界に与える影響について紹介していきます。
賃上げは目的ではなく手段
前提として大切になる考え方が、今回の賃上げは目的ではなく、あくまでも手段であるということです。これは、「持続可能な看護・介護・保育業界」を作っていく手段に過ぎません。
目先の賃上げは確かに喜ばしいニュースではありますが、それがしっかりと今後の業界の活性化に繋がっていくのか、事業所単位で見ていく必要があるでしょう。
もしも、自分の所属する事業所が賃上げや働き方の見直しといった流れに沿っていなければ、要注意かもしれません。
懸念される課題点とは
一方で、この賃上げ政策に対して懸念の声もあります。
それは、支給対象が曖昧な点です。同じ事業所の中でも様々な職種の人が働いていたり、同じ職種でも等級が違っていたりと、支給される人とされない人が出てきてしまうのではないかと心配されています。
例えば、同じ事業所内で多職種が在籍する場合、一人当たりの賃金上昇が9000円に満たないのではないか、といった点です。
他にも、二重チェック体制がかえって各事業所の負担になってしまうという点が指摘されています。前述のとおり、各事業所では賃上げ開始月に月額の賃金改善額を記載した計画書を提出し、実際に賃上げが終わった後もその実績報告書を作成する必要があります。
これは、事務処理の負担がかなり大きいため、支給を望まない事業所も出てくるのではないかという懸念もあります。労働者としては、効率よく公正に政策が実施されてほしいところですね。
参考:厚生労働省 「介護職員処遇改善支援補助金について(報告)」
しかし、業界にとっては良い影響も!
もちろん、このような懸念点だけでなく、賃上げ政策がもたらすであろう良い影響も考えられます。
長年、給与の水準が低いことが問題視されてきた介護・看護・保育などのエッセンシャルワーカーに賃上げという形でスポットライトが当たることで、業界の未来が変わる可能性があります。特にこれらの業界にみられる、負の構造が解消されていくことにつながれば、働く環境も変わっていくかもしれません。
負の構造とは、サービスの利用料設計が安価であり、人件費が上げにくく、そのために働き手が見つかりにくいが、サービス料が決まっていることで賃上げができないというものです。このような課題は、個々の事業所で対応できる範疇を超えているので、公的な動きに期待する側面も大きくなりそうです。
また、この政策をきっかけに業界に根強く残る「ムリ、ムダ、ムラ」に目が向けられ、業務の効率化やICT化の促進といった、働く環境の刷新も進むことで生産性が上がり、人件費の向上にもつながるかもしれません。
このように、ひとつの政策がきっかけで業界の働き方や構造が見直され、誰もが働きやすい持続可能な業界に変わっていくと良いですね。
まとめ
低賃金が問題視されている看護・介護業界にとって、この賃上げ政策はひとつの救いになることでしょう。
しっかり二重チェックが機能するのか、自分の職場でも賃上げは起こるのかといったことには十分注意する必要があります。
また、このように業界が注目され、公的な支援が拡充されていくことは将来が明るく未来のある環境の裏返しとも言えます。仕事に対して悲観的にならず、職場をよく理解して、必要に応じて時代の潮流に乗っている場所へ転職するのも良いでしょう。
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