精神に疾患を持つ方をサポートする「精神保健福祉士」。
資格を取得するには国家試験に合格しなければなりませんが、受験資格や合格難易度について詳しく知らない方もいるでしょう。この記事では、精神保健福祉士の資格を取得する方法を解説します。
その他、精神保健福祉士の資格を取得するメリットや、有資格者が活躍できる職場などもまとめています。精神保健福祉士の資格がどのようなものか知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
精神保健福祉士とはどんな資格?
精神保健福祉士とは、心の病で生きづらさを抱える方たちが社会復帰できるよう、訓練やサポートを行なうための国家資格です。本人だけでなく、家族の相談に乗ったり、医師や作業療法士などのチームを調整したりする役割も持っています。
技術や知識はもちろん、優れたコミュニケーション能力や冷静に状況を判断する力が求められ、資格を取得するには国家試験に合格しなければなりません。
精神保健福祉士の資格を取得するメリット
精神保健福祉士の資格を取得することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。具体的な3つのメリットを紹介します。
メリット1:就職に有利
精神保健福祉士は国家資格のため、持っていると就職・転職の際に有利です。精神保健福祉士の資格を持っている人は多くありません。介護福祉士の有資格者数が約180万人であるのに対し、精神保健福祉士の有資格者数はわずか9万5,000人ほどです(2021年12月末時点)。
そのため、精神保健福祉士を募集している職場に応募すれば、採用される可能性が高いといえるでしょう。
参考:公益財団法人社会福祉振興・試験センター「登録者数の状況」
メリット2:信頼されやすくなる
精神保健福祉士は国家資格のため、信頼されやすいというメリットがあります。
精神保健福祉士は、利用者やその家族と関わることの多い仕事です。信頼が厚ければ、コミュニケーションも取りやすくなり、業務もスムーズに行なえるようになるでしょう。
メリット3:やりがいを感じられる
利用者の社会復帰をサポートするのも、精神保健福祉士の仕事です。利用者の回復までの変化を近くで見られることは、やりがいにもつながります。
また、利用者やその家族と直接関わるため、感謝される機会も多いでしょう。直接感謝の気持ちを伝えられれば、仕事をしていくモチベーションにもなるのではないでしょうか。
精神保健福祉士の資格の取り方
精神保健福祉士は、国家試験に合格することで得られる資格です。ここからは、どのような人が受験できるのか、そして試験の難易度はどの程度なのか解説します。
受験資格
精神保健福祉士の国家試験を受験するには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
- 保健福祉系大学など4年(指定科目履修)
- 保健福祉系短大など3年(指定科目履修)+相談援助実務1年
- 保健福祉系短大など2年(指定科目履修)+相談援助実務2年
- 福祉系大学など4年(基礎科目履修)+短期養成施設など6ヵ月以上
- 福祉系短大など3年(基礎科目履修)+相談援助実務1年+短期養成施設など6ヵ月以上
- 福祉系短大など2年(基礎科目履修)+相談援助実務2年+短期養成施設など6ヵ月以上
- 社会福祉士登録+短期養成施設など6ヵ月以上
- 一般大学など4年+一般養成施設など1年以上
- 一般短大など3年+相談援助実務1年+一般養成施設など1年以上
- 一般短大など2年+相談援助実務2年+一般養成施設など1年以上
- 相談援助実務4年+一般養成施設など1年以上
自分の経歴に合わせた受験資格の取得方法を選択しましょう。
参考:公益財団法人社会福祉振興・試験センター「精神保健福祉士国家試験 受験資格(資格取得ルート図)」
取得に必要なカリキュラム
精神保健福祉士の資格を取るには、養成学校・大学・短大などで「指定科目」と「基礎科目」を学ぶ必要があります。それぞれのカリキュラムは、以下のとおりです。
指定科目
【精神障害者の保健及び福祉に関する科目を定める省令】(平成24年4月入学者からの適用)
- 人体の構造と機能及び疾病、心理学理論と心理的支援、社会理論と社会システムのうち1科目
- 現代社会と福祉
- 地域福祉の理論と方法
- 社会保障
- 低所得者に対する支援と生活保護制度
- 福祉行財政と福祉計画
- 保健医療サービス
- 権利擁護と成年後見制度
- 障害者に対する支援と障害者自立支援制度
- 精神疾患とその治療
- 精神保健の課題と支援
- 精神保健福祉相談援助の基盤(基礎)
- 精神保健福祉相談援助の基盤(専門)
- 精神保健福祉の理論と相談援助の展開
- 精神保健福祉に関する制度とサービス
- 精神障害者の生活支援システム
- 精神保健福祉援助演習(基礎)
- 精神保健福祉援助演習(専門)
- 精神保健福祉援助実習指導
- 精神保健福祉援助実習
参考:公益財団法人社会福祉振興・試験センター「精神保健福祉士国家試験」
基礎科目
【精神障害者の保健及び福祉に関する科目を定める省令】(平成24年4月入学者からの適用)
- 人体の構造と機能及び疾病、心理学理論と心理的支援、社会理論と社会システム のうち1科目
- 現代社会と福祉
- 地域福祉の理論と方法
- 社会保障
- 低所得者に対する支援と生活保護制度
- 福祉行財政と福祉計画
- 保健医療サービス
- 権利擁護と成年後見制度
- 障害者に対する支援と障害者自立支援制度
- 精神保健福祉相談援助の基盤(基礎)
- 精神保健福祉援助演習(基礎)
参考:公益財団法人社会福祉振興・試験センター「精神保健福祉士国家試験」
取得の難易度
精神保健福祉士国家試験の難易度は、他の国家資格と比べそれほど高くないといえます。直近の第23回精神保健福祉士国家試験では、受験者数6,165人のうち3,955人が合格し、合格率は64.2%でした。
合格基準は、以下の両方を満たすことです。
- 問題の総得点の約60%以上得点(各問題の難易度ごとに得点は補正される)
- 上記を満たした者で、試験科目16科目群すべてにおいて得点
つまり、総得点が高かったとしても、0点の科目が1つでもある場合は合格できないため、すべての科目をまんべんなく勉強する必要があります。
参考:公益財団法人社会福祉振興・試験センター「第23回精神保健福祉士国家試験の合格発表について」
精神保健福祉士の資格を取得後の働き方
精神保健福祉士は、さまざまな場所で活躍できる資格です。ここでは、精神保健福祉士が働ける代表的な場所を3つ紹介します。
医療現場
精神保健福祉士の多くが、精神科病院や心療内科クリニック、訪問看護ステーションなどの医療現場で働いており、有資格者の約32%が医療関係の仕事に就いています。
医療現場における精神保健福祉士は、基本的に精神障害者の生活サポートを行ないます。利用者の医療機関の受診や入退院の調整をしたり、医療現場と自治体の間に立ったりするのがおもな仕事です。その他、医師や看護師などの医療従事者とチームを組んで仕事をすることもあります。
参考:公益財団法人社会福祉振興・試験センター「平成27年度精神保健福祉士就労状況調査結果」
保健所や自治体
保健所では精神に関する悩み相談も行ない、アドバイスや指導、社会復帰のサポートをします。
自治体では、「精神障害者保健福祉手帳」や「自立支援医療」などの窓口申請業務を行なうのも、精神保健福祉士の仕事です。各関係者と連携し、利用者の社会復帰をサポートします。
地域生活支援センター・社会復帰施設
地域生活支援センターとは、障害者のサポートを行なう社会復帰施設の一つです。利用者からの相談に乗ったり、社会適応訓練やリハビリテーションを行なったりなど、仕事内容は多岐にわたります。
社会復帰施設には、「生活訓練施設」、「福祉工場」、「小規模作業所」などがあります。他の職場と同じく、相談対応やリハビリテーションを行なうのがおもな仕事です。
まとめ
精神保健福祉士の資格を取得するには、規定の受験資格を満たしたうえで、国家資格に合格する必要があります。国家資格を受験するために必要なカリキュラムを学ぶ方法は、自分の経歴に合わせて選択しましょう。
精神保健福祉士の合格率は比較的高めですが、各科目まんべんなく得点しなければ合格できません。国家試験に挑む際には、十分に勉強しておきましょう。
精神保健福祉士は信頼も厚く、やりがいのある仕事です。資格を持っていると活躍できる職場も多いため、今後も必要とされる仕事といえるでしょう。
バイトルPROは精神保健福祉士さんを応援しています!
介護士と介護福祉士の違いは?介護福祉士の資格取得の方法について
介護福祉士の取得方法は?介護業界で役立つ資格をご紹介
介護業界の職種・資格別の給与ってどれくらい?資格やスキルで収入アップを目指そう!
介護士の平均給料は?介護職の年収の上げ方について
【介護系の志望動機】福祉用具専門相談員の面接・履歴書に使える例文を紹介
介護士の仕事内容は?業務スケジュールの例をご紹介
資格なしでも介護士になれる?無資格でも出来る仕事とは
介護予防運動指導員とはどのような資格?取り方や取得後の仕事内容を解説
介護士の年収は男女で差がある?需要や将来性についても解説
介護士の仕事ってきつい?やりがいや大変なポイントを解説!
介護士の夜勤中の仕事は?勤務形態や業務内容について