認知症介護基礎研修は、2021年4月から介護職などで取得を義務化された認知症ケアに関する資格です。現在は経過措置期間のため、「取得していなければ介護職に就けない」というわけではありませんが、取得することで多くのメリットが得られるため、早めに取得しておきたい資格ともいえます。
ここでは、認知症介護基礎研修の内容や受験資格、受講するメリットや、取得後にどのような施設で活躍できるかなどについて説明します。
認知症介護基礎研修とはどんな資格?
介護に関する職業に就いている方や、将来介護職を目指している方であれば、認知症介護基礎研修が義務化されたことはすでにご存じかもしれません。しかし、認知症介護基礎研修がどのような内容で、どういった背景から義務化された資格なのか、わからない方も多いでしょう。
ここからは、まず認知症介護基礎研修とはどのような資格なのかを解説します。
認知症への理解や基礎知識・技術を習得する研修
認知症介護基礎研修とは、認知症の方に対するケアにおいて必須である認知症の理解をはじめ、ケアに必要な基礎知識や技術などを習得するために受講する研修です。
厚生労働省が公表した「認知症施策の総合的な推進について」によると、2025年には65歳以上の5人に1人は認知症になると予測されています。こうした将来に備え、認知症介護基礎研修の義務化を通して、介護を行う職員が認知症に対する知識・技術を向上させることで、より良いケアができると期待されているのです。
2021年4月から義務化
認知症介護基礎研修は、2021年度介護報酬改定にて受講が義務付けられた資格です。この資格は、介護や看護に携わる職員全員が受講するものではなく、現場で認知症の方の介護を行う職員の中でも、無資格の方や未経験の方を対象としています。
また、2021年4月から義務化された資格ですが、認知症介護基礎研修を受講していなければすぐに仕事ができなくなるというものではありません。実際は、3年の経過措置があるため、経過措置期間内に受講していれば問題なく仕事を続けられます。ただし、施設によっては経過措置期間を前倒しして対応するケースも考えられるため、早めに受講しておきましょう。
認知症介護基礎研修の資格を取得するメリット
では、認知症介護基礎研修の資格を取得しておくメリットは、何なのでしょうか。具体的なメリットとしては、3つ挙げられます。
メリット1:認知症ケアに対する基本的な知識・技術を身につけられる
上述したとおり、認知症介護基礎研修を取得することで、認知症ケアの基本的な知識・技術を身につけられます。これは、これまでのように勘や経験による不確かなケアではなく、専門的な裏付けによって適切なケアを行えることを意味します。そのため、介護職として活躍を始めた際、利用者の安心感につながるでしょう。
メリット2:キャリアアップにつながる
認知症ケアに関する資格は、認知症介護基礎研修の上位資格にあたる「認知症介護実践者研修」をはじめ、多くの高度専門資格があります。
認知症患者は今後も増え続けると想定されているため、関連する知識・技術を持ち、その証明となる資格を持っていれば多くの施設で求められる人材となり、キャリアアップにもつながります。そのため、認知症介護基礎研修で認知症ケアにおける知識・技術の土台ができたら、キャリアアップを目指して上位資格の取得にも挑戦してみましょう。
メリット3:給与アップにつながる可能性もある
認知症介護基礎研修は義務化したため、今後は介護職に従事する方であれば多くの方が取得する資格ではありますが、現在はまだ経過措置期間中のため、取得していない方も少なくないでしょう。しかし、認知症介護基礎研修を取得しておけば、資格手当が加算される可能性があり、給与アップにつながる可能性もあります。
認知症介護基礎研修の資格の取り方
現在介護職に就いている方や、将来介護職に従事したい方にとっては必須の資格となる認知症介護基礎研修ですが、資格を取得するにはどのような条件があるのでしょうか。
ここからは、認知症介護基礎研修の資格を取得する条件やカリキュラム内容、資格の取得難易度について説明します。
受験資格
受験資格は下記の資格を所持していない「無資格者」、および、下記に記載する条件を満たしていない方が対象です。
下記資格を保有していない方
看護師、准看護師、介護福祉士、介護支援専門員、実務者研修修了者、介護職員初任者研修修了者、生活援助従事者研修修了者に加え、介護職員基礎研修課程又は訪問介護員養成研修一級課程・二級課程修了者、社会福祉士、医師、歯科医師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、精神保健福祉士、管理栄養士、栄養士、あん摩マッサージ師、はり師、きゅう師、柔道整復師等
引用:大阪府「認知症介護基礎研修」
下記条件に該当しない方
- 認知症介護実践者研修、認知症介護実践リーダー研修、認知症介護指導者研修などを修了している
- 養成施設や福祉系高校で認知症に関する科目を受講している
(いずれも卒業証明書や履修科目証明書による履修証明があること) - 直接介護に携わる可能性がない
取得に必要なカリキュラム
認知症介護基礎研修に必要なカリキュラムは、講義・演習となっています。
講義内容
- 「認知症の人を取巻く現状」
- 「認知症の定義と原因疾患」
- 「認知症の中核症状と行動・心理症状の理解」
- 「認知症ケアにおいて基礎となる理念や考え方」
- 「認知症ケアの基礎技術」
演習内容
- 「認知症の人とのコミュニケーション」
- 「行動の背景を理解したケアの工夫」
講義と演習を合わせても6時間程度であるほか、eラーニングでの受講も可能など、受講しやすい環境が整っています。ただし、受講する地域の自治体によって受講方法が異なるため、受講前には必ず受講方法を確認しておきましょう。
取得の難易度
修了試験などはなく、受講することで得られる資格のため難易度は低いです。研修を受講することで、受講証明書が発行されます。
受講にかかる費用
認知症介護基礎研修の受講にかかる費用は、自治体によって異なります。大阪府であれば3,000円で、中には無料で受講可能な自治体もあります。受講費用については、お住まいの自治体に確認しておきましょう。
認知症介護基礎研修の資格を取得後の活躍の場
認知症介護基礎研修を取得することで、無資格の方と比較して活躍できる施設などが広がる可能性も大いにあります。
ここからは、認知症介護基礎研修を取得後、どのような施設で活躍できるかについて紹介します。
養護老人ホーム
養護老人ホームで携わる高齢者の中には、認知症を発症している方も多くいるため、認知症ケアの知識や技術を身につけている職員は大きな戦力となります。
養護老人ホームでは、認知症ケアを行える職員の確保が急務となっているほか、2021年4月から資格取得が義務化したという背景もあり、認知症介護基礎研修を早めに受講していれば、就職や転職に役立つでしょう。
訪問介護サービス
養護老人ホームと同様に、訪問介護サービスの利用者も認知症を発症している方が少なくありません。そのため、認知症ケアの知識・技術を持っている方であれば、訪問介護サービスの職員としても活躍できます。
認知症ケアを行っている病院など
認知症ケアを行っている病院などの施設では、入院設備がある場合、介護職員も常駐することになります。認知症による入院患者をケアする介護職員として、認知症介護基礎研修を取得している方は活躍できるでしょう。
まとめ
認知症介護基礎研修は、将来さらに増加する認知症患者に対して専門的なケアを行える人材を養成するため、2021年4月より取得が義務化された資格です。
取得が義務付けられている対象は、介護福祉士や看護師といった資格を有していない無資格者で、受講時間は6時間程度と手軽に受けられるうえ、修了試験などもないため、介護に関する職を目指す方であればぜひ取得しておきましょう。
認知症介護基礎研修を取得しておけば、キャリアアップや給与アップにつながる可能性があるなど、多くのメリットがあります。また、養護老人ホームをはじめ、認知症患者が利用する施設などで広く活躍できるため、就職や転職に役立つともいえるでしょう。
2021年から3年間は経過措置期間となっていますが、メリットの多い資格なので、早めに受講しておくことをおすすめします。
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