すでに介護福祉士として働いている人なら、認定介護福祉士という資格を耳にしたことがあるかもしれません。少子高齢化にともない高齢者が増加していくなか、これまで以上に専門的な知識や実践的な技術が必要だとされています。
その社会的需要に応える形で、介護福祉士よりも実践力のある上位資格として制定されたのが認定介護福祉士です。
この記事では、認定介護福祉士の資格の取得方法、取得後の仕事内容などについて解説します。介護福祉士として働いていて、さらなるキャリアアップを目指したいと考えている場合は、ぜひ参考にしてください。
認定介護福祉士とはどんな資格?
一般社団法人認定介護福祉士認証・認定機構が2015年に新しく作った資格で、介護福祉士の上位資格にあたります。
国家資格である介護福祉士とは異なる民間資格で、歴史はまだ浅いものの、登録者数は徐々に増えつつあります(2021年6月の時点で登録者数は58名)。
2015年以前は、介護福祉士の上位にあたる資格がありませんでした。そのため、介護福祉士を取得したあとにキャリアアップとして目指せる先がなく、仕事へのモチベーションの低下が懸念されていたのです。
しかし、認定介護福祉士の資格ができたことにより、介護福祉士として働く人たちのキャリアパス形成に役立ち、意欲向上にもつながっています。
また、資格の取得後には、実践的な介護技術だけでなく、介護福祉士のリーダー的存在としての幅広い能力の発揮が期待されています。具体的には、介護サービスの質向上、医師・看護師・理学療法士といった他職種や関係機関との連携、地域の介護施設やボランティアの介護力向上への貢献といった役割です。
認定介護福祉士の資格を取得するメリット
資格を取得することで得られるメリットについて、具体的に見ていきましょう。資格取得を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
メリット1:今後の待遇に期待できる
認定介護福祉士は誕生してからまだ間もなく、取得のハードルが高いこともあり、まだ登録者数が少ないのが現状です。そのため、給与など待遇面のメリットについては確認できていません。現時点では、介護福祉士と同じくらいの給与だと思っていたほうがよいでしょう。
しかし今後、認定介護福祉士としての活躍が認められることで、待遇面も良くなる可能性があります。
例えば、2019年に制定された「特定処遇改善加算」は介護職員全般を対象とした「介護職員処遇改善加算」とは異なり、勤続10年以上のベテラン介護福祉士などが対象です。介護職員の労働環境改善や給与アップにより離職を防ぐことを目的としているため、将来的には認定介護福祉士の待遇も良くなると期待できるでしょう。
メリット2:介護業界のレベルアップに貢献できる
認定介護福祉士は、介護の人材育成の役割も担っています。指導面で活躍することで自分自身も成長でき、また職場全体のサービス向上や、介護業界全体のレベルアップにも貢献できるでしょう。
メリット3:就職や転職に役立つ
介護職の最上位の資格であるため、介護福祉士よりも高度な知識や技術を持った介護のスペシャリストであるという証明になります。そのため、就職や転職の際にはかなり役に立つといえるでしょう。
今後、施設長や管理職へのキャリアアップを目指している方や、幹部候補としての転職を考えている方は取得しておくことをおすすめします。
認定介護福祉士の資格の取り方
ここでは、受験資格や取得に必要なカリキュラム、そして難易度について解説します。
受験資格
資格を取得するためには、一般社団法人認定介護福祉士認証・認定機構で実施している「認定介護福祉士養成研修」を受講する必要があります。
この研修は、「認定介護福祉士養成研修Ⅰ類」、「認定介護福祉士養成研修Ⅱ類」で構成されています。
Ⅰ類の受講条件
- 介護福祉士として実務経験が5年以上あること
- 100時間以上の現任研修受講歴、およびレポート提出または試験
Ⅱ類の受講条件
- Ⅰ類の修了
- 現場のユニットなどでリーダーとしての経験があること
- 居宅・居住サービスのいずれにおいても、生活支援の経験があることが望ましい(必須ではない)
受講の条件は各自治団体によって異なる場合があるので、事前に確認しましょう。
取得に必要なカリキュラム
Ⅰ類では、介護福祉士の養成課程にはなかった新たな知識の獲得や他職種との連携といった、介護実践力についてしっかり学びます。さらに、ユニットなどの小チームのリーダーを指導するための知識の修得も必要です。
また、Ⅱ類では、介護を実践的に指導する力や、基本的知識に基づく応用力の養成、地域の介護力アップを図るための力などを得られます。
なお、上記の研修修了後には、認定申請をして審査に通過することが必要です。
取得の難易度
認定介護福祉士養成研修は講義時間が600時間あります。すべての講義を修了するのに週に約8時間受講したと仮定すると、約1年半かかる計算です。介護職員として働きながら、これだけのまとまった時間を捻出するにはかなりハードで、スケジュール管理の面でも難易度は高めだといえるでしょう。
受講費用は目安として60万円ほどかかります。他の介護資格と比べても高額ですが、都道府県によっては補助金制度が利用できる場合もあるので、各都道府県の公式ホームページでチェックすることをおすすめします。
これらのことから、資格取得のハードルは高いと感じるかもしれませんが、そこで得た知識やスキルは必ず今後の介護の現場で活かせるはずです。介護のプロフェッショナルを目指したい方は、ぜひ挑戦してみてください。
認定介護福祉士の資格を取得後の働き方
認定介護福祉士の資格の取得後は、以下のような職場で活躍できます。それぞれ解説するので、取得後に転職を考えている方は参考にしてください。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームは、原則65歳以上で自宅での介護が困難な高齢者を入居対象とした施設です。自力で立ち上がれない要介護3以上の人や、寝たきり・重度の認知症の人が利用し、他の施設に比べて要介護度が高いことが特徴で、高い介護能力が求められます。
小規模多機能型居宅介護
高齢者が住み慣れた地域で快適に暮らせるよう、支援するために作られた施設で、通所・宿泊・訪問の3つのサービスを1つの施設で提供しています。認定介護福祉士として、将来的には他のスタッフへの指導や助言、現場リーダーや統括といった業務を任され、介護のスペシャリストとして貢献できるでしょう。
まとめ
ここまで、認定介護福祉士の概要と、資格取得の方法・メリット・取得後の仕事内容などについて解説してきました。認定介護福祉士は介護福祉士より上位に位置し、より専門的な知識とスキルを身につけた介護のプロフェッショナルともいえる資格です。
まだ誕生してから新しいため、登録者数も少なく、待遇面での確実なメリットは確認できませんが、今後の改善に期待できる将来性のある職業だといえます。他の介護士の資格と比べて取得のハードルは高めですが、介護のプロフェッショナルを目指してぜひ挑戦してみてください。
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