「いつか保育園の園長になりたい」「保育士のキャリアアップとして園長を目指している」という方にとって、園長に必要な資格や条件はどのようなものがあるのか気になるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、園長になるために必要な要件を詳しく紹介していきます。
園長を目指す際のおすすめの研修や保育士からのステップアップ方法なども説明するので、是非参考にしてみてください。
保育園の園長になるには?
まずは、保育園の園長になるために必要な資格や条件をご紹介していきます。
園長になるための資格は不要
保育士・幼稚園教諭といった教育系の資格がないと保育園の園長になることができないのでは?と心配に思う方もいるかと思いますが、そんなことはありません。
資格がなくても保育園の園長になる方法はあります。
しかし、公立保育園と私立保育園よって園長になるための道のりが違います。
公立保育園の場合は園長になるには保育士資格が必要ですが私立保育園は保育士資格が必須ではないので、誰にでも保育園の園長になれるチャンスがあります。
もちろん保育士以外の特別な資格がなくても、保育園の園長になることは可能です。
園長になるための条件とは
保育園の園長になるための条件は、公立保育園と私立保育園で異なります。
公立保育園
公立保育園の園長になるためには以下2つの条件が必須です。
- 地方公務員の保育士であること
- 昇格試験に合格すること
公立保育園の保育士になるには、保育士資格の取得に加えて、公務員試験に合格することが必要です。
既に公立保育園の保育士の方であれば、②の自治体で定められている昇格試験のみ必要となります。
公務員保育士と私立保育士の違いを詳しく知りたい場合は、以下の記事を参考にしてみてください。
【関連記事】
公務員保育士は私立保育士とどう違う?給与や待遇など解説
私立保育園
私立保育園の園長になるための条件は、園によって異なります。
私立は公立と違って、保育士の資格が必須ではないです。
保育士資格や現場経験がない方でも挑戦することができるので、公立保育園の条件が難しい場合は、私立保育園の園長を目指すことをおすすめします。
園長を目指すためのルート
保育園の園長を目指すためのルートは大きく分けて4つあります。
経験を積んでキャリアアップ
保育士として経験・勤務年数を重ね、キャリアアップしていく方法は一般的です。みなさんも想像がつきやすいルートではないでしょうか。
着実にステップアップしていきたい方はこのルートが向いているでしょう。
家族経営を引き継ぐ
私立保育園の中には、家族経営を行っていることもあります。その場合は、家族や親族に後継ぎとして園長を引き継ぐ可能性が高いです。
自分の家族や親族、知人に保育園の経営を行っている方がいないか、確認してみるのも良いでしょう。
求人で募集を探す
新規開園の際に、保育園の園長や園長候補として求人が出されることもあります。
新規開園のタイミングで応募可能な求人を見つけることができれば、早いタイミングで園長になれるチャンスとなるでしょう。
自分で開園する
自分で保育園を開園すれば、必ず園長になることができます。
許可保育園を開設する場合には、自己資金で整備する方法もあれば、自治体から補助金を受けて整備する方法もあります。
許可保育園を開設する方法は人によって異なるので、一度検討してみると良いでしょう。
もちろん個人で開園することは簡単ではないものの、それだけの思いがある方であれば、向いているルートだと言えます。
上記のように、園長になるには様々なルートがあります。
自分に一番合う方法を検討してみてください。
保育園の園長の仕事内容
保育士の仕事はイメージが付く方が多いと思いますが、園長が何をしているか想像が付かない方もいるのではないでしょうか?
園長はいったいどんな仕事をしているのか、保育士との違いも含めて紹介していきます。
園長の役割
園長とは、園全体を守る責任者です。
保護者や保育士など、誰もが安心できるような保育園を運営していくことが役割です。保育園を自ら経営している園長の場合は、自分の経営方針で全て左右することになります。
園長の仕事内容
園長の仕事内容は園内での対応に加えて、外部との連携もあるため業務内容は多岐にわたります。
具体的には以下のような仕事があげられるでしょう。
- 子どもたちの生活全般のお世話・保育計画
- 事務作業や書類のチェック
- 予算計画や資金管理
- 施設・設備の安全確認
- 行政や地域との交流
- 給食の衛生確認
- 保育士の指導・管理
- 保護者の相談やクレーム対応
園長と保育士の違い
保育士と園長の違いですが、保育士は現場で園児のお世話をする業務がメインです。
一方で園長は保育士たちの業務調整をしたり、保育園の運営方針などの最終確認を行うことが仕事です。
業務の種類は異なりますが、保育士と園長の仕事は繋がっているため、双方の連携が大切になります。
保育士と園長では給与の違いもあります。
給与月額平均
保育士 | 園長 | |
---|---|---|
公立常勤 | 303,113円 | 632,982円 |
私立常勤 | 301,823円 | 565,895円 |
保育士の公立常勤の場合、給与月額の平均は303,113円となっています。
園長(注)の公立常勤の場合、給与月額の平均は632,982円なので、保育士より2倍以上高いです。
保育士の私立常勤の場合、給与月額の平均は301,823円となっています。
園長(注)の私立常勤の場合、給与月額の平均は565,895円なので、こちらも保育士と2倍近く高いです。
参考:令和元年度幼稚園・保育所・認定こども園等の 経営実態調査集計結果<速報値>【修正版】
(注)園長のデータは「職種別職員1人当たり給与月額」の施設長のデータを参照
園長は、その園において1人しかおらず、自分の意思決定によって保育園の運営が左右されます。そのような責任が伴う立場であるため、給与が高い傾向にあるのではないでしょうか。
園長に必要な要素
園長に必要な経験、園長に向いている人の特徴をご紹介していきます。
園長に必要な経験とは
園長になるためには、やはり経験がカギを握ります。
園全体を運営するのが園長の仕事なので、保育士からの抜擢であっても、求人の募集であっても、経験豊富な保育士に園を任せたいと思うはずです。
そのため、保育園での現場経験やマネジメントスキルなどを積み重ねていくことが必要です。
保育園の中には、10年ほどの経験がないと園長にはなれないという施設もよくあります。
しかし、ただ勤務年数を重ねれば良いというわけではありません。
園長になった際に活かせるであろう視点や行動を積み重ねることが重要です。
保育士・園長・保護者など様々な人の視点を持てるようにすることが大事な観点になるでしょう。
コミュニケーションを通して周囲の理解に努めること、幅広い業務を通して経験値を増やすことが園長になるために必要だと言えます。
園長に向いている人とは
これまで紹介したように、園長は数多くの仕事をこなしていきます。それに伴い、関わる人の数も多いので、信頼のおける人柄かどうかは重要となるでしょう。
他にも、園長に向いている人の特徴は以下のようなものがあります。
- 予想外なことが起きても、冷静に判断する力
- 周囲の意見を踏まえたうえで、強い決断ができるリーダーシップ
- 様々な立場の方と建設的に話すコミュニケーション能力
- 子どもや保護者のことを第一に考えられる思いやり
- 保育士1人1人の良さを伸ばしていけるマネジメント力
- 現実的な計画力を備えた経営スキル
保育士から園長にキャリアップ
今からできるステップアップ
保育園にはいくつかの役職があります。もちろん園の規模にもよりますが、大きくは園長・主任・保育士の3つです。
保育士の中には、クラスリーダー、乳児リーダー、幼児リーダーとポジションが細かく分かれていることもあります。
上記の役職に加えて、2017年に保育士の処遇改善施策の一環として新しい役職制度が導入され、「副主任保育士」「専門リーダー」「職務分野別リーダー」の3つ役職が追加されました。
これらの役職は経験年数を重ねて、研修を受けることで就くことが可能になります。
参考:保育士のキャリアアップの仕組みの構築と処遇改善について
キャリアや経験を積んでいくことが今できる最大限の準備だと考えられます。いつでも園長になれるチャンスが来て良いように、ステップアップを着実に進めていきましょう。
キャリアアップしていくことで、仕事の幅も広がります。できることが増えていくとやりがいを感じることも増えていくのではないでしょうか。
まずはどの役職になりたいのか、目標を定めてみることをお勧めします。
おすすめの研修・資格
最後に、キャリアアップを目指す方に向けて、おすすめの資格・研修について紹介します。
研修
厚生労働省が2017年に保育士等キャリアアップ研修ガイドラインを定めました。
そこでは「専門分野別研修」「マネジメント研修」「保育実践研修」の3つの研修が紹介されています。具体的な研修内容としては以下があげられます。
- 専門分野別研修:乳児保育・幼児教育・障害児保育に関する理解、食育や安全対策・保護者支援など
- マネジメント研修:組織マネジメントやリーダーシップの理解、組織目標の設定や人材育成など
- 保育実践研修:保育における環境構成や子どもとの関わり方、遊びに関する実践方法など
これらは保育士の専門性を高めるための研修なので、職場内でこうした研修があれば積極的に参加すると良いでしょう。
資格
おすすめの資格として、以下4つご紹介します。
1つ目は社会福祉士です。
社会福祉士は、課題を抱える人の相談に乗り、援助することができます。
社会福祉業務に携わるための国家資格です。身体的・精神的・経済的なハンディキャップのある人から相談を受けた際に、困りごとを解決するための的確なアドバイスができるでしょう。
参考:社会福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)
2つ目は絵本専門士です。
絵本専門士は、絵本に関する専門的知識や技術を持つことで子どもの読書活動を推進できます。
国立青少年教育振興機構が認める民間資格です。ハードルはあまり高くなく、すぐに実践で活かせる資格だといえます。
3つ目はチャイルドマインダーです。
チャイルドマインダーは、家庭・少人数保育のプロとして家庭的な保育サービスを行うことができます。
通学や通信で取得できる民間資格です。企業内保育や開業を視野に入れている方にも有効的な資格だといえます。
参考:【認定チャイルドマインダー】認定資格(特定非営利活動法人(NPO)新保育学会)
4つ目は簿記です。
簿記は、企業の経営活動や財務状況を帳簿に記録することができます。
事業の開業や経営において重要な役目を担う資格です。簿記3級であれば比較的取得しやすいです。簿記はお金の流れや管理をするのに非常に役立つため、園の経営方針や資金管理をする際に活かせるでしょう。
今後なりたい姿を踏まえて、ステップアップに活かせる資格や研修を活用していくことをおすすめします。
まとめ
保育園の園長になるために、必要な資格や条件は園によって異なります。
資格がなくても挑戦できる環境もありますが、信頼のおける園長になるために経験を積み重ねておくと良いでしょう。
現在保育士として働いている方は、キャリアアップを目指して資格勉強や研修参加など今できる行動をしておきましょう。
いつか園長になるチャンスが来た時に、今の頑張りが活かせるはずです。
園長は幅広い業務をこなし、多くの関係者と常に関わることになります。
自分の意思や方針で保育園を作り上げていくことが可能なので、大きなやりがいがあります。今後、ますます保育園需要が増加していく中で、園長として保育園を経営していくことは大きな役割を果たすことになります。
園を運営することで、子どもたちの健康・安全な生活環境を担保することができ、生涯にわたる生きる力の基礎を支えることができます。
園と子どもの未来を担っていきたい方は、ぜひ園長を目指して頑張りましょう!
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